「大阪府独自のプログラム」といっても、内容は非開示とされていて、結局同じだと思います。
刑のかたち<4>特別改善指導 自分を見つめるとき−連載
2012.10.22 西日本新聞
■罪と更生 第5部■
奈良少年刑務所は、性犯罪防止教育の推進基幹施設でもある。西日本の受刑者が集められ、グループワークを中心に罪にいたる原点を探る。手がかりは「自分史」だ。
《小学生のとき授業を妨害して迷惑をかけた。自分はいない方がいい…》。九州から移送された30代のツムラは、学校になじめなかった幼少時から記した。同年代の友だちができず、年下の男児と遊ぶうちに性加害につながった経緯が浮かぶ。
教育の過程で、いらだってノートを赤ペンで塗りつぶした。ひと言も口をきかない日も。ようやく「同年代の男友達をつくることも必要だ」と言い始めた。「何とかしたいという彼の思いは真剣だ」。担当の教育専門官、犬塚貴浩(39)はツムラの変化を感じている。
心配は出所後だ。家族は引き取りを拒否。仮釈放なら保護観察所で受けられる性犯罪者処遇プログラムも、満期出所者は対象ではない。社会で疎外感を味わったら、再び道を外れないだろうか。
子どもへの性犯罪の前科があれば、住所の届け出を義務付ける大阪府の条例が1日、施行された。大阪市長橋下徹が府知事時代「日本は生ぬるい」と提案した。前科があるというだけで監視の目にさらすことに、人権上の批判は根強い。
犬塚が注目するのは、届け出者は府独自の支援プログラムを受講できる点だ。「彼のような人にとっては意味がある」
塀の中と社会をどうつなぐか。模索は続く。 (敬称略、受刑者は仮名)
▼再発防止の教育 再発防止教育の一環である特別改善指導には、薬物、性犯罪のほか、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全指導などのメニューがある。諸外国の実施例を参考に、認知行動療法などに基づくプログラムを法務省が作成。奈良少年刑務所の性犯罪者処遇プログラムの場合、受刑者の犯罪傾向や能力に応じて7〜9人の班に分け、6〜10カ月間、90分の授業を週2回行う。グループワークは刑務所の教育専門官のほか、非常勤の臨床心理士などが協力してリーダー役を務める。