児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「18歳未満であることを知りながら自己に姦淫させた事実を認めており,一審判決もその理由中で,被告人がMに事実上の影響力を及ぼしている状況下で,各姦淫行為に及んだ事実を認定しているのであるから,証拠上,被告人が上記各日時場所において,Mに対し,「児童に淫行をさせる行為」(児童福祉法34条1項6号,60条1項。以下「児童淫行罪」という。)をした事実は明らかである。したがって,一審裁判所としては,児童淫行罪が10年以下の懲役刑が法定された重大犯罪であり,検察官が本件各公訴事実記載の強姦の訴因に拘泥する態度を示し

 主   文

 一審判決を破棄する。
 被告人を懲役10年に処する。
 一審における未決勾留日数中320日を上記の刑に算入する。

       理   由

第1 検察官の控訴の理由及び弁護人の答弁(以下,「M」につき「M」と,その母である「A」につき「Mの母」ないしは単に「母」と呼称する。)
 1 検察官の控訴の理由
 (1) 事実誤認
 本件公訴事実は,
 「被告人は,内妻及びその長女M(平成元年○月○○日生)らと同居していたところ,Mが長期間にわたり被告人から虐待を受けたために被告人を極度に畏怖していることに乗じ,同女を強姦しようと企て
 1 平成17年11月26日午後4時12分ころ,神戸市西区(以下略)所在の□□201号室の当時の被告人方において,M(当時16歳)に対し,自己との性交に応じなければ更なる暴行を加えかねない態度を示して脅迫し,着衣を脱いで口淫するよう要求し,これに畏怖した同女の反抗を抑圧した上,同女をして全裸にならせて口淫させ,強いて同女を姦淫した(平成21年10月2日付け起訴状記載の公訴事実。以下「公訴事実1」という。)
 2 平成17年12月15日ころ,前記被告人方において,M(当時16歳)に対し,自己との性交に応じなければ更なる暴行を加えかねない態度を示して脅迫し,着衣を脱いで口淫するよう要求し,これに畏怖した同女の反抗を抑圧した上,同女をして全裸にならせて口淫させ,強いて同女を姦淫した(平成21年10月23日付け起訴状記載の公訴事実。以下「公訴事実2」という。)
 3 平成17年12月26日午前10時17分ころ,前記被告人方において,M(当時16歳)に対し,自己との性交に応じなければ更なる暴行を加えかねない態度を示して脅迫し,これに畏怖した同女の反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫した(平成21年12月9日付け起訴状記載の公訴事実。以下「公訴事実3」という。)
 4 平成19年2月上旬ころ,神戸市西区(以下略)所在の当時の被告人方又はその周辺において,M(当時17歳)に対し,自己との性交に応じなければ更なる暴行を加えかねない態度を示して脅迫し,これに畏怖した同女の反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫した(平成22年1月27日付け起訴状記載の公訴事実。以下「公訴事実4」という。)」というものであるところ,関係証拠によれば,Mが長期間にわたり被告人から虐待を受けたため被告人を極度に畏怖していた事実を優に認めることができ,この事実を前提とすれば,被告人による各姦淫行為時の脅迫がMの反抗を抑圧する程度のものであったことは明らかであるのに,これらを否定して被告人を無罪とした一審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある。
 (2) 訴訟手続の法令違反
 一審裁判所の訴訟手続には,次のとおり,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。
 ア 検察官は,Mが,長期間にわたり被告人から虐待を受けていた事実及び被告人から意に反して姦淫された事実に関するMの一審証言の信用性を補強するとともに,M以外の者の証言によってもこれらの事実を立証するために,Mの友人であるB及びMと交際していたCを証人尋問請求したにもかかわらず,一審裁判所は,これらの証人の重要性を理解せず,その訴訟指揮権を逸脱して,採用すべきこれらの証人を採用しなかった結果,上記の点に関するMの一審証言が信用できないとして無罪を言い渡した。
 イ 被告人は,本件各公訴事実記載の日時場所において,Mが18歳未満であることを知りながら自己に姦淫させた事実を認めており,一審判決もその理由中で,被告人がMに事実上の影響力を及ぼしている状況下で,各姦淫行為に及んだ事実を認定しているのであるから,証拠上,被告人が上記各日時場所において,Mに対し,「児童に淫行をさせる行為」(児童福祉法34条1項6号,60条1項。以下「児童淫行罪」という。)をした事実は明らかである。したがって,一審裁判所としては,児童淫行罪が10年以下の懲役刑が法定された重大犯罪であり,検察官が本件各公訴事実記載の強姦の訴因に拘泥する態度を示していないという審理経緯にかんがみれば,仮に強姦の訴因を認定できなかったとしても,事実審の職責として,検察官に対し,児童淫行罪の訴因を強姦の訴因に付加する訴因変更請求について検討を促し,あるいはその勧告をするなど,訴因に関する求釈明権の行使等の措置を講ずべき義務があったにもかかわらず,これを怠り無罪を言い渡した。