児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ被害者の最年少は何歳か?

 強制わいせつ罪の保護法益を「被害者の性的自由」と理解すれば、性的意図は不要となる(傾向犯ではなく無くなる)点で成立範囲が広がりますが、0歳とかだと、性的自由が観念できないことになって、成立範囲が狭まるのではないかと考えます。

 監禁罪の場合にこういう議論があるので

条解刑法P601
2) 客体
本罪の客体は,人すなわち自然人に限られるが,更に行動の意思ないし行動の能力を有する者に限られるかどうかについては,本罪の保護法益との関係で争いがある。行動の自由は行動の意思及び能力を前提とするとして,意思能力ないし行動能力がない者(泥酔者.熟睡者等)は本罪の客体となり得ないとする説がある。これに対し通説は全く任意の行動をなし得ない者(生後間もない嬰児等)に対しては本罪は成立しないが自然的事実的意味において行動し得る者であれば.法的意味での責任能力,行為能力.更に意思能力を欠く者(幼児.精神病者等)も本罪の客体となり得るとしまた,行動の自由は必ずしも現実に存在する必要はなく,その可能性があれば足り.一時的に行動の自由を失っている者(泥酔者,熟睡者等)も本罪の客体となり得るとする(注釈(5)228)

強制わいせつ罪の場合にこういう見解が出てきます。

条解刑法P466
乳房が未発達な女児に対する場合であっても,社会通念上,性的感情の侵害があるといえるからわいせつ性は肯定されるが,全く発達していない幼児や男性の場合には否定されよう(大コンメ2版(9)P63

 公開されてる裁判例で見る限り、3歳が最年少でしょうか。
3歳

仙台地裁平成14年 3月29日
(事案の要旨)
 被告人が,平成11年3月10日から平成12年8月1日までの約1年5か月の間に犯行当時3歳から10歳であった合計11名の幼女に対しなした4件の強姦未遂,5件の強制わいせつ及び2件の強姦致傷の事案。

4歳

神戸地裁姫路支部平成 8年10月22日
 (罪となるべき事実)
 被告人は、平成八年四月五日午後四時二五分ころ、肩書住居地のパチンコ甲野従業員寮一階被告人宅において、当時同棲していた内妻A子の子供であるB子(当時四歳)に対し、同人が一三歳未満の者であることを知りながら、同人の陰部を舐めたり、同人に自己の陰茎を舐めさせるなどし、もって、一三歳未満の女子に対してわいせつな行為をしたものである


7歳

新潟地裁昭和63年 8月26日
(罪となるべき事実)
 被告人は、昭和六三年五月三一日午後三時ころ、新潟県墓地内において、A子(昭和五六年五月四日生)を籾穀袋の上に座らせ、同女のポロシャツの前ボタン三つを全部外した上、そこから手を差し入れて、同女の右乳部を多数回撫でまわし、更に、スカートの中に手を差し入れてパンツの上から同女の臀部を撫で、もって、一三歳未満の女子に対しわいせつの行為をしたものである

 7歳

札幌高裁昭和59年 8月23日 
(罪となるべき事実)
 被告人は、わいせつな行為をしようと企て、昭和五七年一二月二八日午前九時三〇分ころ、当時の被告人の住居であつた札幌市○区○○○○××番地市営住宅F○○棟○号○階六畳の居間において、いずれも一三歳に満たない者であることを知りながら、
第一 A子(昭和四七年一一月八日生)に対し、同女のズボン、パソティーを脱がせて床の上に仰向けに寝かせ、同女の陰部を手指でなで回すなどして、もてあそび、
第二 引き続き、B子(昭和五〇年六月一七日生)に対し、同女のズボソ、パンティーを脱がせて床の上に仰向けに寝かせ、同女の陰部を舌でなめるなどして、もてあそび、
もつて、いずれも一三歳未満の婦女に対し、わいせつの行為をしたものである。

4歳

 大阪地裁昭和52年10月14日
(罪となるべき事実)
 被告人は、昭和五一年八月一六日、同日が日躍日で、勤務先の木島資源が休みであったことから、朝方から近所の酒屋を飲み歩き、昼頃、一旦大阪府○○市○○○町×丁目××番地の自宅に戻り、さらに飲酒した後、自転車で散歩に出たが、同日午後一時三〇分ころ、同市同町×丁目×××番地通称△△公園にさしかかった際、飲酒していたためバランスを失い、転倒し、その場に座り込んでいたところ、同所で遊んでいた甲野月子(当六年)及び乙山星子(当時四年)の両名がこれを認め、被告人に近づき話しかけてきたので、しばらく相手をしていたが、その後、自宅に戻ろうと歩き始めたところ、右両名が被告人方までついてきたことから、これを奇貨とし、右両名に対し強いてわいせつの行為をしようと企て、
 第一 同日午後二時頃右被告人方において右甲野が、一三才未満であることを知りながら、同女を抱きかかえ、着用していたパンツのすき間から手を差し入れてその陰部を手指で弄び
 第二 前同時日ころ、前同所において、右乙山が一三才未満であることを知りながら前同様の方法でその陰部を手指で弄び、
 もってそれぞれ一三才未満の婦女に対し、わいせつの行為をなしたものである。

6歳5か月

山口地方裁判所支部判決昭和41年10月19日
下級裁判所刑事裁判例集8巻10号1368頁
判例タイムズ199号201頁
判例時報474号63頁
研修227号69頁
主  文
 一、被告人を懲役月に処する。
 二、未決勾留日数中六〇日を右刑に算入する。
 三、押収中の連続テレビドラマ「源義経」第四回、第五回台本を日本放送協会に還付する。
 四、訴訟費用は被告人の負担とする。
 一、罪となる認定事実
 被告人は昭和四一年二月五日午後三時頃、神社下西麓道路を、獣医方からひきとつてきた自家の飼犬(秋田犬当才)をつないでつれながら、高校方面から北方の自宅に向つて通行中、A子(6歳)がその保育所の友だちBと右登り口附近で遊んでいるのを認めるや、右Aが一三才未満であることは十分認識の上、甘言をもつて同女を拝殿横東方の山林中に連れて行き、被告人の手でズロースを両膝の辺りまで脱がせ、その際、手指で同女の股間附近に触れたものである。