児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

犯罪収益の罪との関係

 前金で児童ポルノを売った場合、児童ポルノ提供罪の既遂が犯罪収益仮装罪の要件になるかという問題。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第2条(定義)
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産

 前後関係は別としても、「犯した」という構成要件である以上は、前提犯罪が成立しないと、犯罪収益の罪も既遂にならない。
 
 たとえば、

公訴事実
第1
1月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月10日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月20日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
2月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴

第2
1/1~2/1(1/1、1/10、1/20、2/1)に各提供代金を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 合計20000円 

↑なら、各提供罪の既遂は主張・立証されてますよね。

 しかし、↓のような公訴事実だと、3/1~5/1の提供行為の既遂は不明ですよね。3/1~5/1(3/1、4/1、5/1、6/1)にお金がきてても児童ポルノが提供されたのかがわからない。

公訴事実
第1
1月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月10日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月20日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
2月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴

第2
3/1~5/1(3/1、4/1、5/1、6/1)に各提供代金を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 合計20000円

 仮装罪の関係で児童ポルノ提供罪の既遂を主張立証するとなると、それは児童ポルノ提供罪の立証と変わらないわけで、↓のような主張立証になるでしょう。

第1
1月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月10日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
1月20日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴
2月1日 児童ポルノ提供 代金5000円 →提供罪で起訴

第2
3/1 児童ポルノ提供 代金5000円 
4/1 児童ポルノ提供 代金5000円 
5/1 児童ポルノ提供 代金5000円 
6/1 児童ポルノ提供 代金5000円 
3/1に提供代金5000円を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 
4/1に提供代金5000円を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 
5/1に提供代金5000円を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 
5/1に提供代金5000円を仮名口座に振り込ませた 犯罪収益仮装罪 

 こうなると、当初訴因は提供行為の部分について訴因不特定だったんじゃないかということになりますよね。
 提供罪と仮装罪は併合罪だというのも怪しいですよね。結果的加重犯一罪か科刑上一罪
 ついでに言えば、第1の提供罪と第2の提供罪は包括一罪(高裁那覇支部)になるんだから、かすがいにして第1と第2は結局1罪。