児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

佐久間修「実践講座刑法各論」

 児童ポルノなんて撮影されても、強制がない限り、個人的法益の侵害なんてないとおっしゃっています。
 次の事件で使ってみます。
 個人的法益のみか、個人的法益+αかということですから、保護法益論はあまり意味がないような気がしています。

、同法の規制対象がわいせつ性の低い表現にも及ぶとすれば、当該児童が性的な意味を自覚しなかった場合も含めて、もっぱら個人的法益の侵害と解することの困難さを示唆している。
7 かようにして、児童ポルノ禁止の保護法益をめぐっては、もっぱら被害児童の個人的法益とみる見解(個人的法益一元説)と、社会的法益を考慮するという見解(個人的。社会的法益説)が対立してきた。しかし、被写体となった児童の保護を徹底するならば、児童ポルノの製造一般を禁止するべきであるが、他者に提供する目的が要求されたり(7条2項。3項)、不特定多数の公衆に提供した場合が加重処罰される一方(7条4項)、これを目的とする製造。輸入などの行為についても、法定刑が加重されたのは(7条5項。6項)、その伝播。流布に伴う社会的影響を考慮したからであろう。
なるほど、当該ポルノ画像が販売されることによって、被写体となった児童の利益を損なう度合いも高まるが、それと同時に、児童ポルノの流通が、他の児童一般に対する性的侵害の危険性を増大させるからである。他方、学説中には、客体となる児童の姿態が視覚により認識できること、法文上被写体が実在する児童に限られること、被害児童の保護規定もあることなどから、もっぱら当該児童の精神的健全性が、本罪の保護法益になるという見解が有力である23)
8 法文上、児童買春等処罰法1条では、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、--児童買春、児童ポルノに係る行為等--により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする」と明記されている24)。しかし、本条は、児童ポルノの頒布だけでなく、児童買春罪における保護法益も記述したものである。そもそも児童ポルノの規制が、その規定ぶりから、刑法175条と同じぐ性的風俗に対する罪と推測される以上、もっぱら個人的法益に対する罪とみるならば、そのための積極的な論拠が必要であろう。しかし、暴力などの強制的手段を用いてポルノ製造に協力させた場合は格別、被写体となった児童の姿態が視覚的に認識されたことが、ただちに当該児童の個人的利益を侵害するわけではない25)。また、実在する児童を被写体とした画像も、容貌をぼかす等して特定の人間と判別できなくする場合が考えられる26)。さらに、被写体となった児童を保護する条項があるとはいえ(15条。16条)、売春防止法の補導処分(同法17条)のように、売春婦の保護を念頭に置きつつ、人間の尊厳と善良な風俗の保護を目指した法律も存在する27)。かようにして、児童買春等処罰法が児童ポルノを禁止する根拠も、個々の被害児童だけにとどまらず、児童一般を保護する趣旨を含めることで、上述した処罰規定の構造を的確に把握できるであろう