児童ポルノ提供罪や目的所持罪の解釈においては、包括一罪評価する裁判例もたくさんあって、司法では児童ポルノの存在や流通自体が虐待だという発想(立法者意思)なんてほとんど忘れられていますけどね。
「個人的法益だとすると、被撮影者をいちいち特定せなあかんようになって困るがな」という高裁判決も出た。
単純製造罪(3項製造罪(姿態とらせて製造))について「個人的法益ではない」と明言する地裁判決もあります。
ここに至ってていきなり、単純所持で「虐待だ!」と言われても、唐突な感じがします。
奥村弁護士はどの事件でも個人的法益説を貫いているんだけど、裁判所は反対。法解釈ですから、たとえ奥村弁護士(個人的法益論者)が嫌いであっても、理屈は間違わないで欲しいところです。
単純所持規制に進む前に、ちょっと振り返って、各構成要件の保護法益を整理して欲しいところです。
特集:ネット君臨・識者座談会(その2止) 情報倫理の確立急げ
◆児童ポルノ
◇持つこと自体が虐待−−柳田氏/マンガの拡散も問題−−別所氏
司会 児童ポルノの弊害は、インターネットが普及する前から指摘されていましたが、連載でも取り上げたようにネットを通じて児童ポルノの画像や動画が拡散しています。児童ポルノは単なるわいせつという次元ではなく、深刻な児童虐待です。ところが日本の現行法で処罰されるのは提供した側だけで、所持しただけでは処罰されません。日本以外の先進国ではおおむね所持も処罰の対象です。
柳田氏 児童虐待は社会の深刻な負の文化であって、子供の精神形成にまで影響を与える虐待は何としても防がなければならない。児童ポルノには必ず被写体となる子供がいるわけで、持つこと自体が既に虐待に加担していると考えるべきだ。しかも被写体になる子供は幼児期から一生を台無しにしかねないほどの心の傷を背負って生きていかなければならない。これは性の自由などという問題ではなく、可能な限り撲滅する方法を皆で考えていかなければならないと思う。
司会 警察では所持についてどう考えていますか。
竹花氏 昨年6月に活動を始めたインターネット・ホットラインセンター(注8)で、半年間に違法情報と判断した約2200件の通報のうち、500件超が児童ポルノの公然陳列だった。所持だけで罪を問う必要はないという議論もあるが、周りの人たちにもさまざまな影響を与える。マリフアナの所持を罰するのと同じことが言えるのではないか。私は警察を離れた身だが、国として許せないという明確な態度を示すべきだ。児童ポルノを持つというような権利が声高に主張されて保護されるべきものだとは思えない。
別所氏 児童ポルノに関して世界的に処罰が厳しくなっている中で、刑罰が甘いと日本に集まってしまうという現実がある。世界水準で対応すべきだ。日本は今の単純所持の件で遅れているうえ、もう一つの論点としてアニメやマンガの問題がある。マンガは児童ポルノ禁止法の対象になっていない。写真と違って被害児童の存在を想定できないというのが立法時の議論だったが、ネット上での拡散の状況を見ると、単純所持やマンガも含めてあらゆる児童ポルノを禁止する時期に来ている。プロバイダーとして違法画像の削除を繰り返している立場からもそう考えざるを得ない。
プロバイダは、現時点では、サーバー上に単純所持の事実があって、サーバーのどこかに違法画像があるといううすうすの認識(認識ある過失〜場合によっては未必の故意)があって、陳列もされているわけだから、刑法総則を形式的に適用すれば陳列罪の正犯ないしは幇助になる可能性がある。かろうじて故意を逃れることはできても少なくても過失と違法性は否定できない。
だから、今ごろ必死になってるのよ。
開き直って規制側に立ってしまうという方法と、免責する立法をするという方法があるでしょうね。