児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

国外犯の場合は法10条を適示しよう

 書いていない裁判例が見受けられますが、東京高裁は「書かなくていいよ」というのではなく「実行行為が日本にかかっているから国内犯だ。」と判示しました。
 書けばいいだけです。

1 国外犯
 原判決が被告人のA國における行為を児童ポルノ罪と評価しているのであれば、それは国外犯である。
 刑訴法335条1項により「法令の適用」として児童ポルノ法10条を適示しなければならない。
 判例によれば335条の趣旨は「主文のよつて生ずる法令を明らかにする意味であつて、主文において言い渡した事項に照し合せてどの事項にどの法令を適用したか、換言すれば主文の刑が如何なる法令の根拠によつて抽出され科刑されたかを一目して明瞭に知り得れば足りる」という。

【事件番号】東京高等裁判所判決/昭和28年(う)第2020号
【判決日付】昭和28年9月14日
【判示事項】刑訴法第三三五條第一項の要求する有罪判決に示すべき法令の適用として適法なりと認めた事例
【参照条文】刑事訴訟法335−1
【参考文献】判例タイムズ34号54頁
(判旨)刑訴法第三三五条一項において罪の言渡をするについて示さなければならない法令の適用とは主文のよつて生ずる法令を明らかにする意味であつて、主文において言い渡した事項に照し合せてどの事項にどの法令を適用したか、換言すれば主文の刑が如何なる法令の根拠によつて抽出され科刑されたかを一目して明瞭に知り得れば足りるものである。

2 児童ポルノ・児童買春国外犯の場合の適示
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に関する罪については10条により国外犯が処罰されることがあるが、原則として刑罰法規の適用範囲は日本国内であることは当然の前提であって、10条がなければ、国外における行為について本法を適用できず、処罰できないのであるから、10条を適示しなければならない。

(国民の国外犯)
第十条  第四条から第六条まで、第七条第一項及び第二項並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 実際、国外犯については10条が適示されている。

  • 児童ポルノ製造罪国外犯大阪地裁H14.4.26
  • 公然陳列罪名古屋簡裁H13.8.17

 しかるに、原判決は刑訴法335条1項により必須である法10条の適示を書いているのであるから、訴訟手続の法令違反による、原判決は破棄を免れない。