児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

懲役2年6月執行猶予5年保護観察(東京地裁H19.7.5)

 最初から、遺族が怒っているところと、各罪名の保護法益とがマッチしてません。
 著作権侵害罪で初犯実刑というのはないので、こんなところでしょうね。
 「精神科医のカウンセリング」という情状は有効。
 保護観察は相当の負担なので、奥村が私選弁護人なら、一審の執行猶予判決を受けて、被害者に謝罪や弁償をして、「保護観察取ってくれませんか?」と控訴します。
 保護観察にしても施設内にしても再犯防止プログラムの効果は???です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000036-mai-soci
<事故死児童写真>無断掲載の元教諭に有罪判決 東京地裁
 交通事故死した子供の生前の写真を自分のホームページ(HP)に無断掲載したとして著作権法違反などに問われた東京都あきる野市の元小学校教諭(34)に対し、東京地裁は5日、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。井口修裁判長は「遺族の心情を踏みにじる卑劣な行為だ」と強く非難した。
 判決は、被告が起訴事実のほかにも多数の遺体写真をHPに掲載して性的好奇心をあおるようなコメントを付けたり、HPの閉鎖要求に応じなかった点を挙げ、「自らの性的嗜好(しこう)や関心を満足させるためには手段を選ばない態度で、動機に酌量の余地はない」と厳しく断罪。また当時、小学校教諭だったことから「職責に全く反する言語道断の振る舞い。教育者に対する信頼が損なわれた」と述べた。
 一方で、被告が起訴事実を認めて反省の態度を示していることや精神科医のカウンセリングを受診している点などを考慮し、刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるべきだと判断した。ただ「性癖を制御するのは容易ではなく、保護観察所で再発防止のための処遇プログラムを受ける必要がある」として保護観察を付けた。
 判決によると、被告は05年9〜10月、東京都内で交通事故死した片山隼(しゅん)君(当時8歳)ら5人の子供の写真16枚を遺族のHPから無断転載した(著作権法違反)。05年8月にはHPを見た男性2人に子供の裸を撮影した画像2枚を電子メールで送信した(児童買春・児童ポルノ処罰法違反)。
 被告は自分のパソコンに児童や死体の写真約80万枚を保存し、00年ごろから「クラブきっず」と題したHPを開設した。HPには7年間で約20万件のアクセスがあったことが判明している。【銭場裕司】
 ◇執行猶予判決への不満も 遺族会見で
 我が子を思い、命の大切さを訴えようと作成したHPの写真を無断で悪用された遺族の怒りは強い。判決後に会見した隼君の父片山徒有(ただあり)さん(50)は「保護観察が付いたのは良かったが、社会内処遇では限界があるのでは」と話し、執行猶予判決への不満もにじませた。また「児童ポルノの単純所持やプロバイダーに対する規制を強め、子供から犯罪を遠ざけることが必要」と訴えた。
 名古屋市で02年、屋上駐車場から落下した車の巻き添えになった片岡樹里ちゃん(当時3歳)の母朋美さん(43)は「樹里の生きた証しを残したいと、増えることがない写真を1枚1枚使って、涙でHPを作り上げた」。無断転載を見た時には「暗闇に落とされた。2度、3度樹里を殺された」という。
 「きちっとした形で罪をつぐなうことが子供たちの供養になる」と法廷の意見陳述で訴えていた朋美さん。会見では「人間らしい心を取り戻して、謝罪してもらいたい。こういったことが容認されない、安心して暮らせる社会であってほしい」と述べた。

追記
 法令適用としては、判決を見たいと思っています。
 提供罪2回の罪数処理はどうか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000904-san-soci
被告は平成17年8月、マレーシアや国内で撮影した、男の子が服を脱いでいる写真を2人に電子メールで送信。また、同年10月、交通事故で死亡した子供の遺族が開設したHPに掲載した子供の写真を、自分が開設したHP「交通事故きっず」に無断掲載した。

 刑法的には遺族の感情は保護対象ではないのに、著作権者の被害感情や精神的苦痛にどこまで踏み込めるか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000103-yom-soci
井口修裁判長は「亡くなったわが子の思い出を記録にとどめ、交通事故の被害の深刻さを広く社会に訴えて根絶を目指す遺族らの痛切な思いを踏みにじった卑劣な犯行」と述べ、被告に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)の有罪判決を言い渡した。
 判決は、被告に小児性愛や死体を愛好する傾向があり、同じ性癖を持つ人間とインターネットを通じて接触するためにHPを開設したと指摘。「交通事故で死亡した子供の目を覆うばかりの無残な遺体の写真を掲載し、ゆがんだ性的好奇心をあおるようなコメントを付けた」とし、その結果、「遺族らは不眠状態に陥り、休職を余儀なくされるなどの深刻な被害を受けた」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000060-jij-soci
井口修裁判長は「遺族の心情を踏みにじる卑劣な行為」として、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役2年6月)を言い渡した。
 井口裁判長は「写真にどぎつい表現で好奇心をあおるようなコメントを付けており、交通事故の根絶を願う遺族の痛切な思いを踏みにじった」と非難。「遺族はHPを閲覧して衝撃を受け、不眠状態に陥るなど深刻な被害を受けた」とした。

 怒る被害者なのでしようがないことですが、謝罪しても糾弾され、謝罪しなくても糾弾されるわけです。
 それにしても、被害者多数の場合の被告人の謝罪文ってほぼ同一ですね。これからは、変えて書かせます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000025-san-soci
「社会内で更生できるのか疑問」。事故死した子供の写真を無断掲載された遺族らは東京都内で会見を開き、執行猶予を付けた被告への判決に疑問を呈した。
 被告は事故死した子供を性的興味の対象にしていた。交通事故で亡くした二男=当時(8)=の写真を無断で使用された片山徒有さん(50)は「死体に興味を持つのは普通ではなく、強制的に治療させる必要があるのではないか」と強調。「児童ポルノの単純所持だけで規制の対象にできるようにしてほしい」と、規制強化の必要性を訴えた。
 さらに、片山さんは、被告に改めて謝罪を求める手紙を送ったことを明かした。
 被告は5月の初公判後、写真を無断掲載したことを謝罪する手紙を親に送ったが、手紙の文面は一緒だった。
 交通事故死した二男=同(6)=の写真を無断で使われた垣内奈穂子さん(45)には、裁判を有利に運ぶための戦術にしか映らなかったという。
 「謝罪する機会はいくらでもあったのに、この時期に手紙を書くなんて…」。垣内さんは手紙を開封しなかった。
 被告は法廷で「個別具体的なことを書いて、悲しい記憶を呼び起こしてはいけないと思った」と供述し、同一文面の謝罪文を送った理由を説明。しかし井口裁判長に「それで済むことなのか」と詰問された。
 垣内さんは判決後、「その後、謝罪の手紙は来ていない」と、改めて被告の非常識な行為を厳しく糾弾した。

京都弁護士会の報酬規定?

 弁護士会の報酬規定はないはずですが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000010-kyt-l26
 原告住民側は返還された24億円を利益とし、京都弁護士会の報酬規定に基づき1億9300万円の報酬を算出し、市に支払いを求めた。
 しかし、市総務局は報酬算出の基準となる利益は、住民訴訟の場合、「利益算定不能」のケースの800万円を適用するという判例もあることから、「適切な額なら支払う用意があるが、あまりにも常識外れの請求だ」として支払いを拒否した。
 住民側は「本来なら市がすべき裁判を住民が代わりに行った。請求も正当で、認められない場合は提訴も検討する」と主張している。

 弁護士がたくさんいて、手間がすごいというのであれば、2億でも高くないと思います。
 24億受け取っておいて、800万円を基準にするというのもなんだか。

地方自治法
第242条の2(住民訴訟
12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士又は弁護士法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

弁護士再登録、申請取り下げ=「迷惑掛けたくない」−05年に廃業・中坊氏

 奥村は接点がないので、わかりません。

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070705k0000e040048000c.html
しかし、同弁護士会の会員の間には「復帰は納得がいかない」との意見が多い半面、功績を評価すべきだとの声もあり、再登録申請の調査は結論が出ていなかった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000061-jij-soci
 中坊氏は「この件が大阪弁護士会にとって厄介な問題とされていることが分かった。会に迷惑を掛けることは本意ではなく断念した」とコメントした。 

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200707050050.html
中坊氏はコメントで「この件の取り扱いが大阪弁護士会にとって、厄介な問題とされている」とし、混乱を避けるために再登録請求を取り下げたと主張した。「再び使い慣れた(弁護士)事務所の机に座ることが夢でしたが断念しました」「今はとても淋(さみ)しい気持ちですが、しばらくそっとしておいて下さい」と結んでいる。

 どうしても弁護士がやりたいのなら、自宅を事務所にして、京都弁護士会でもいいんじゃないですか?

 こういうニュースがあったようです。

中坊公平氏:再登録請求 超大物、扱い困った−−大阪弁護士会、審査3カ月(1106文字)(毎日新聞) - 2007年6月27日(水)
 ◇賛否入り乱れ結論出ず
 住宅金融債権管理機構(現整理回収機構)社長当時の詐欺的な債権回収の責任を取って弁護士を廃業した中坊公平氏(77)の再登録請求に、大阪弁護士会(大弁)が頭を痛めている。廃業が刑事訴追を免れた大きな理由の一つとされるだけに、関係者の間には「なんで今更」との思いも強いが、相手は日弁連会長を務め「平成の鬼平」と呼ばれた超大物。異例の大規模チームによる調査は期限の目安の3カ月を超えた。渦中の中坊氏は「弁護士として人生を終えたい」という趣旨の説明をしているという。【川辺康広、遠藤孝康】
 住管機構は98年、多額の負債を抱えた大阪市の不動産会社の土地を巡り、抵当権を設定していた金融機関にこの土地の売買価格を低く伝え、自社の回収額を膨らませようとした。中坊氏は経緯を了承していたとされ、03年10月、東京地検特捜部の詐欺容疑での事情聴取を契機に引退を表明、起訴猶予となった。大弁は懲戒審査を経て05年11月、退会届を受理し、弁護士登録を抹消した。
 中坊氏が改めて入会申請と弁護士登録請求書を提出したのは今年3月22日。通常ならベテランと若手の計3人程度の調査チームを作る大弁はベテランばかり7人でチームを編成。東京地検による起訴猶予の判断と弁護士廃業の関連性などを中心に調査を進めているとみられる。
 弁護士法は、弁護士会が3カ月以内に結論を出さない場合は「拒絶されたとみなすことができる」と“努力目標”を定めているが、今回は「最短でも8月ごろまで調査が続く」(関係者)見通し。今後、請求を認めれば日弁連に上申し、認めないなら大弁の資格審査会でさらに検討するため、いずれにしても結論はかなり先になりそうだ。
 中坊氏は刑事罰を受けて弁護士資格をはく奪された可能性もあっただけに、大弁会員の間では「復帰は納得がいかない」との意見が多い半面、大きな功績を評価すべきだとの声もあるという。ある役員経験者は「日弁連に覆されたりしたら、こちらのメンツが立たない。正直言って厄介な話だ」と話している。
 中坊氏は家族を通じ「弁護士会で調査中なので何も答えられない」としている。
[毎日新聞 ]

大阪府青少年健全育成条例違反罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は併合罪(大阪地裁H19.7.5)

 条例28条2項の青少年条例違反は、「青少年を威迫し、欺き、又は困惑させ」「性行為」ということで、実行行為が限定されておって、「姿態とらせて」「撮影」とは社会見解上、一個の行為ではないとのことでした。
 児童淫行罪とは観念的競合であっても、児童淫行罪と青少年条例違反とは違うんだそうです。

大阪府青少年健全育成条例
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第二十八条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

3項製造罪(姿態とらせて製造)の「姿態をとらせる」と性犯罪・福祉犯の「性行為」がだぶるから、あるいは3項製造罪(姿態とらせて製造)の「撮影」と性犯罪・福祉犯の「性行為」がだぶるから、観念的競合と評価されているんですが、大阪地裁では、性犯罪・福祉犯の「手段・前提行為」と「姿態をとらせる」とを比較している点で失当です。

大阪地裁H19.7.5
(罪数関係)
弁護人は,の大阪府青少年健全育成条例違反の罪と3項製造罪とは観念的競合の関係に立っと解すべきであると主張する。
しかしながら,大阪府青少年健全育成条例号は,「専ら性的欲望を満足させる目的で,青少年を威迫し,欺き,又は困惑させて,当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行う」ことを処罰することとして,「威迫し,欺き,又は困惑させ」ることを実行行為の一部として掲げているところ,このような上記条例違反の実行行為と性行為等を撮影する行為とは,自然的観察の下で社会見解上一個のものとみることはできない。
弁護人は,児童福祉法上の児童淫行罪と児童ポルノ製造罪とが観念的競合の関係に立つと解した裁判例を論拠に上記のとおり主張するものであるが,児童淫行罪 (児童福祉法 34条 1項 6号)にいう児童に「淫行をさせる行為」は,行為者が児童に対し事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をして,その結果児童をして淫行をするに至らせることをいい,これと構成要件を明確に異にする上記大阪府青少年健全育成条例違反の罪について,同様に論ずることはできないというべきである。

なお、川崎支部では、提供目的製造罪と条例違反が観念的競合。

横浜地裁川崎支部
第1 青少年であることを知りながら結婚前提とせず 自己の性的好奇心を満たす目的で 性交した (神奈川県青少年条例違反)
第2 前記日時場所 児童ポルノを不特定又は多数の者に提供する目的で性交場面をデジタルビデオで撮影し その画像を保存した上児童ポルノ製造

「ネットの法規制を」片山隼君の父…写真掲載の元教諭判決

 実は、ネット特有の問題ではなく、死体写真を掲載するとか写真死者の肖像を無断掲載する行為については、刑法が無視しているのが問題ですね。プライバシーとかも。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070705i307.htm
「ネットの法規制を」片山隼君の父…写真掲載の元教諭判決
また、「児童ポルノの氾濫(はんらん)を防ぐためにもインターネット上の法規制が必要」と述べた。
(2007年7月5日15時27分 読売新聞)

 児童ポルノについては、いろいろやっていて、プロバイダも処罰する方向ですけどね。

携帯電話で撮影→送信メールサーバ→受信メールサーバという構成の3項製造罪(姿態とらせて製造)について、そういうミクロ的観察は失当である。 端的に、受信メールサーバのみの製造罪を論じれば足りる。(大阪地裁H19.7.5)


 弁護人の主張。

 公訴事実は「受信メールサーバのみを製造した」と記載されている。

公訴事実
被告人所有に係る携帯電話機内蔵のカメラを使用して姿態を撮影記録し,同撮影に係る画を,電子メールで送信し,上記画像データを被告人が登録したlDとパスワードにより独占的に使用することのできるいわゆるメールボックスと呼ばれるメールサーバーコンピュータの記憶装置であるハードディスク内の被告人に割り当てられた領域に記憶,蔵置させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することが出来る方法により描写した児童ポルノである電磁的記録媒体を製造したものである。

 しかし、常識で考えれば、
  被害児童の姿態
  ↓ ①
  携帯電話
  ↓ ②
  携帯電話会社の送信メールサーバ
  ↓ ③
  受信メールサーバ
という3回の製造過程があって、
  携帯電話
  携帯電話会社の送信メールサーバ
  受信メールサーバ
の3個が児童ポルノと化したと思われるが(各製造罪は包括一罪)、その各過程に「姿態をとらせて」など3項製造罪(姿態とらせて製造)の要件を具備しなければならないのであるから、そのように記載しなければならない。
 このような中間省略記載は、
  被害児童の姿態
  ↓ ①
  携帯電話
  ↓ ②
  携帯電話会社の送信メールサーバ
  ↓ ③
  受信メールサーバ
という製造過程において途中で技術的支障が生じた場合に少なくとも被害児童の携帯電話という児童ポルノが製造されているのに製造罪が未遂となったり、犯人が自発的に途中でやめたときに中止未遂となることになり、法益保護に欠ける。東京高裁h15.6.4*1大阪高裁H14.9.10*2も同旨である。

 さらに、最近の裁判例では「姿態をとらせて」は実行行為であるから(東京高裁H17.12.26*3、札幌高裁H19.3.8*4)、ダビングの際にも「姿態をとらせて」が満たされなければならない。携帯電話→サーバの複製過程には「姿態をとらせて」がない。

 判例タイムズの解説でも、「従来はこのような行為の理解が曖昧なまま刑事手続が進められる例も散見されたように思われる。」として注意喚起されているところですが、大阪地裁はそれには従わないようです。

わいせつ図画販売、同販売目的所持、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】平成17年(あ)第1342号
【判決日付】平成18年2月20日
【出  典】判例タイムズ1206号93頁
。このように,児童ポルノの製造においては,「撮影して写真を製造する」といった,社会通念的にはーつの固まりと見られそうな行為であっても,その過程で児童ポルノに当たる物が順次製造されるごとに製造行為が観念でき,当初から意図されていた物(上記例では,焼き付けられた写真)が製造されるまでに複数の製造行為が連なっていると理解されることが少なくないことに注意すべきであると思われる(このように複数が連なっている製造のそれぞれを,以下では便宜,第1次製造,第2次製造,第3次製造などという。もっとも,同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合にはその全体が包括一罪となると考えられるが,そのような場合には,必ずしも常に個々の行為を各別に特定して訴追しなければならないわけではないといえよう。この点については,近時の最一小決平17.10.12刑集59巻8号1425頁,判タ1197号145頁等を参照されたい。従来はこのような行為の理解が曖昧なまま刑事手続が進められる例も散見されたように思われる。)。そこで,本件においても,画像データをメモリースティックに記憶させた行為のみならずそれをハードディスクにコピーした本件行為も,「児童ポルノの製造」自体には当たるといえそうに思われるものの,ハードディスクの製造行為の際には「児童に姿態をとらせ」てはいないことから,このような場合には本罪は成立しないとの主張がされたものである。

巡査長がわいせつDVD複写=同僚に頼まれ渡す−書類送検、10人処分・埼玉県警

 「わいせつDVD製造工場摘発」とかいうニュースもありますけど、押収して、警察で再生産していたわけですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000180-jij-soci
調べによると、巡査長は2月、別の同署警部補(36)=停職処分=に頼まれ、事件の証拠品として押収したわいせつDVD1枚をパソコンに取り込んだほか、3月には、警部補と巡査部長(49)=減給処分=に計14枚を複製して渡すなどした疑い。 

 刑法175条には、製造罪がないので、頒布罪しかないですね。

追記
 児童ポルノもあったようです。
 児童ポルノの頒布目的製造罪というのもありますけどね。

http://www.asahi.com/national/update/0705/TKY200707050336.html?ref=goo
調べでは、巡査長は2月下旬〜3月上旬、証拠品として押収したわいせつDVDを勤務時間中に署内でコピー、課長と別の課の巡査部長(49)に計14枚を配り、別の警部補(36)にもパソコンに取り込むかたちで画像を提供した疑い。課長に配ったとされる9枚のうち1枚が児童ポルノだった。
 DVDは、同署が2月に群馬県内のわいせつDVD卸業者を、わいせつ図画頒布容疑で家宅捜索した際に押収。巡査長と巡査部長はDVDの検分を担当していた。
 コピーに使ったとされる複製機も押収品で、巡査長は自分用にも20枚ほどコピーしたという。警部補への提供が最初だが、それを知った課長らが「自分もほしい」などと言って依頼したという。
 巡査長を最も重い処分としたことについて、県警は「断ることも可能で、厳重に証拠品を管理していた部屋に入った責任は重い」とした。階級を利用した強制や金銭の授受はなかったという。
 高橋克郎・監察官室長は「職員がこのような恥ずべき犯罪行為を発生させたことは誠に遺憾。職員への職務倫理教養と証拠品のより厳格な管理を徹底し、県民の信頼回復に努めたい」などとコメントした。

 2人以上に提供する予定があれば、多数(7条4項)ですよね。

第7条(児童ポルノ提供等)
児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 4項提供罪と5項製造罪とが併合罪なら、懲役7年6月ですな。

保護観察

 奥村も今日、保護観察付きの判決をもらいました。被告人が保護観察付きの執行猶予判決を受けたということです。
 裁判所も問題点を抱える被告人に対して、保護観察の再犯防止プログラム(対象罪名が刑務所より広いようです)に期待して、積極的に活用しようとしているようです。
 厳罰化傾向に、再犯防止も加味した感じですね。

保護観察用類型別処遇マニュアル
対象
1 本件処分の罪名又は非行名に,相手方の意思を無視して行う性的行為が含まれる者
2 本件処分の罪名又は非行名のいかんにかかわらず,犯罪・非行の原因・動機が性的欲求に基づく者(下着盗.住居侵入等のほか、性的欲求に起因するストーカーを含む)

http://hakusyo1.moj.go.jp/nss/list_body?NSS_BKID=43&HLANG=&NSS_POS=80
平成13年における執行猶予取消人員は,前年より240人(3.8%)増加して6,541人となっており,取消事由は,再犯により禁錮以上の刑に処されたことによるものが94.2%と圧倒的に多数を占めている。
 なお,ある年次における執行猶予確定人員と,その年次における執行猶予取消人員とでは,その対象が異なるので,前者に対する後者の比率は,厳密な意味での執行猶予取消率とは言えないが,執行猶予取消しのおおよその傾向を知るため,この比率を算出すると,執行猶予取消率及び保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率は,それぞれ13.3%,27.7%となっている。これを罪名別(執行猶予確定人員総数及び保護観察付き執行猶予確定人員がいずれも100人以上のものに限る。)に見ると,執行猶予取消率は,覚せい剤取締法違反で25.4%,窃盗で22.3%の順で高く,保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率は,覚せい剤取締法違反で37.5%,窃盗で33.0%の順で高くなっている(検察統計年報による。)。なお,執行猶予取消人員は,同一人に対し1つの裁判で2個以上の刑の執行猶予の言渡しが同時に取り消された場合もこれを1人として計算した。また,保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率の算出に当たっては,再犯について禁錮以上の刑に処せられて執行猶予が取り消された場合のみを再犯による執行猶予の取消としており,再犯について罰金刑に処せられて執行猶予が取り消された場合を含まない。

ということで、取消率が高いので、油断できません。
 仮解除を目指すくらいでがんばってほしいところです。

第25条の2(保護観察)
前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2 保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3 保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。