児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2/27家宅捜索で児童ポルノDVD1所持現認→5月罰金20万円→6/29停職1ヶ月・依願退職

 アリスクラブのDVD。
 元日以来度々の報道で購入者がパニック状態になったにもかかわらず所持し続けたんだ。
 1枚でも罰金20万円。起訴猶予率は低い。

児童ポルノ7200人購入名簿 検事、警官ら 200人まず摘発 2018.01.01 読売新聞
児童ポルノDVD、警察官に所持容疑 県警、書類送検 /和歌山県 2018.01.06 朝日新聞
県立高職員を減給処分 県教委 児童ポルノ所持で=岩手 2018.01.23 読売新聞

http://www.sanspo.com/geino/news/20180629/tro18062919170009-n1.html
018.6.29 19:17
「外国人の子どもに興味あった」児童ポルノ所持で50歳小学校教諭停職
 宮崎県教育委員会は29日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪で略式命令を受けた小学校の男性教諭(50)を停職1カ月の懲戒処分にした。教諭は同日付で依願退職した。
 県教委によると、2月27日、摘発された業者の顧客リストに基づく警察による自宅の捜索で、児童ポルノのDVD1枚を所持していたことが発覚。教諭は同法違反罪で略式起訴され、5月に罰金20万円の略式命令を受けた。既に全額を納付した。「外国人の子どもに興味があった」と説明したという。

児童ポルノ製造罪の媒体は、3号物件として没収される

児童ポルノ製造罪の媒体は、3号物件として没収される
 間違えている判決がよくあるので
 こういうとこもチェックしています。

控訴理由~没収について
 1審判決は、刑法19条1項1号物件(組成物件)として、「 HDD、マイクロSDカード1枚」を没収した。

第19条(没収)
次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

 しかし、児童ポルノを記録した媒体は「犯罪行為によって生じた物(19条1項3号)であるから、1号で没収を認めた原判決には、法令違反がある。
 さらには、判例にも違反する。最高裁判所判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所判例と相反する判断をしたことに他ならないから原判決は破棄を免れない(405条3号

(1)文献
 本件のHDDは、児童ポルノ製造罪という犯罪行為により存在するに至ったものであるから、同項3号で没収すべきである。
条解刑法

(2)判例
 3号説が主流である。

①東京高裁H23.10.18
原判決は法令適用の項において 3項製造罪によって生じたsdカード2枚を没収する際の根拠条文として刑法19条1項1号 2項本文を摘示しているところ このような場合には19条1項3号 2項本文を適用すべきである
2刑 小西部長
・・・
②東京高裁H23.11.30
原判決は犯罪組成物としてsd2 マイクロsdの没収しているが、本件各カードは児童ポルノの製造という本件各犯行によって初めて作られたものであるから 犯罪行為により生じたものとして 19条1項3号 2項本文を適用して没収すべきであり 原判決の没収の法令適用には誤りがある
9部 小倉部長
・・・
③仙台高裁秋田支部H27.6.30*1
第1 法令適用の誤りの主張(控訴理由第1)について
 論旨は,要するに,本件3項製造罪に係る外付けハードディスク(秋田地方検察庁本荘支部平成27年領第2号符号4。以下「本件ハードディスク」という。)は,本件3項製造罪の犯罪行為により生じた物(産出物件)であるから,刑法19条1項3号2項本文を適用して没収するべきであるのに,これを本件3項製造罪の犯罪行為を組成した物(組成物件)として同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで検討すると,弁護人指摘のとおり,記録によれば,本件ハードディスクは,原判示第1のとおり,本件3項製造罪の犯罪行為の不可欠な要素をなす物ではなく,その犯罪行為によって作り出された物と認められるから,刑法19条1項3号にいう「犯罪行為により生じた物」に当たるというべきである。したがって,これを本件3項製造罪の「犯罪行為を組成した物」として,同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には法令適用の誤りがある。

追記2021/02/07
1号説の高裁判例も結構あるようだ。

児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
札幌高等裁判所
平成19年3月8日刑事部判決
しかし,本件各ビデオカセットに本件児童ポルノ製造罪に係るもの以外の画像が含まれていたとしても,本件児童ポルノ製造罪に係る画像も含まれており,両者が物理的に一体となっている以上,それらはそれぞれ本件児童ポルノ製造行為の犯罪組成物件(刑法19条1項1号)であり,かつ,被告人以外の者に属しない(同法2項)のであるから,いずれも刑法19条の任意的没収の対象となることは明らかである。また,没収は刑罰の一つであり,その対象物は被告人以外の者に属しないことが要件とされているから,憲法21条,29条に違反するとの所論は採用できない。論旨は理由がない。

強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
広島高等裁判所
平成22年1月26日第1部判決
 よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書により更に判決することとし,原判決が認定した罪となるべき事実に原判決挙示の法条(併合罪の処理を含む。)を適用し,その刑期の範囲内で,上記の諸事情を考慮し,被告人を懲役2年6月に処することとし,刑法21条を適用し,原審における未決勾留日数中20日をその刑に算入し,同法25条1項を適用し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,同法19条1項1号,2項本文を適用し,主文掲記のハードディスク1台を没収することとし,主文のとおり判決する。
平成22年1月29日

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
名古屋高等裁判所
平成23年5月11日刑事第1部判決
(法令の適用)
 判示の各事実について,原判決と同一の法令(併合罪の処理まで)を適用し,その処断刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,津地方検察庁四日市支部で保管中のMiniDV1本及びマイクロSDカード1枚は,判示第2の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収し,原審における訴訟費用は,刑訴法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

児童ポルノ単純所持で捜索→罰金→自衛官は停職1日、海上保安官は停職1月

 単純所持の懲戒処分は、他の児童ポルノ罪よりも軽いですよね。
 奥村が相談受けた事案では、捜索も罰金も懲戒処分もありませんでした。

児童ポルノDVDを所持した陸自隊員を停職処分 /京都府
2018.06.23 朝日新聞
 陸上自衛隊桂駐屯地(西京区)は22日、わいせつDVDを保管していたとして、中部方面後方支援隊の20代の男性陸士長を停職1日の懲戒処分とし、発表した。桂駐屯地司令業務室によると、陸士長は昨年5月以降、実家で児童買春・児童ポルノ禁止法に違反するDVDを約20枚所持。罰金刑を受けたという。

児童ポルノを所持 4管職員停職処分=愛知
2018.06.23 読売新聞
 第4管区海上保安本部は22日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で摘発された1等海上保安士の男性職員(31)を停職1か月の懲戒処分にした。
 発表によると、男性職員は2017年12月14日、児童ポルノの画像や動画計14点を保存したハードディスク1台を所持していたという。男性職員は5月22日に罰金30万円の略式命令を受け、即日納付した。4管の鹿庭義久本部長は「あるまじき行為であり、大変申し訳ない」とコメントした。

姿態をとらせて製造罪で逮捕して、単純所持罪で罰金30万円(千葉簡裁h30.6.20)

 製造したら、所持に至るわけなので、製造罪でカバーされている部分もあると思います。

栃木の中学講師逮捕 少年に裸画像送らせた疑い 千葉県警
2018.06.01 千葉日報 
 千葉県内に住む10代の男子中学生に裸の画像を送らせたとして、県警少年課は31日、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、講師、容疑者(26)を逮捕した。
 逮捕容疑は、昨年7月23日、ツイッターで知り合った男子中学生=当時=が18歳未満と知りながら、裸の写真を撮らせ、無料通信アプリ「LINE」(ライン)で自身のスマートフォンに送らせた疑い。
 同課によると、容疑者は「男性に興味があった」と容疑を認めている。2人は実際に会ったことはなく、金銭のやり取りはなかった。昨年8月、男子中学生の母親がスマートフォンを見て県警に相談した。
 千葉日報社の取材に同校教頭は「大変申し訳ない。勤務態度に問題はなかった」と話している。
千葉日報社

児童ポルノ所持で講師に罰金30万円 
2018.06.21 千葉日報  
 児童ポルノ画像3点をスマートフォンに保存したとして千葉区検は20日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪で、講師(26)を略式起訴した。千葉簡裁は罰金30万円の略式命令を出し、講師は即日納付した。
 講師は昨年7月、千葉県内に住む当時中学生だった少年が18歳未満と知りながら裸の画像をスマホに送らせ、児童ポルノを製造した容疑で今年5月、県警に逮捕・送検されたが、地検は20日、不起訴処分とした。今回略式起訴された事件の被害児童とは別の人物。
千葉日報社

盗撮製造罪で執行猶予(函館地裁H30.4.17)

盗撮製造罪で執行猶予(函館地裁H30.4.17)
 これを函館地検で閲覧申請していましたが、D1LAWにでました。
 被害児童35名で執行猶予ですが「犯情の最も重い第1の罪の刑に加重」になっていて、「判示第1別表○版の罪に加重」となっていないことからは、1回の盗撮で数人撮影した場合を一罪とカウントしていて、被害児童の個性は問題となっていないようです。個人的法益説が徹底されていない場面です。

函館地方裁判所
平成30年04月17日
被告人
弁護人(私選) 廣田朋子

主文
被告人を懲役2年6か月に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(犯罪事実)
 被告人は
第1 平成28年4月13日、北海道(以下省略)所在のA小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表1(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態を腕時計型カメラで動画撮影し、同日頃、北海道(以下省略)所在の当時の被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し
第2 平成29年4月12日、前記小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表2(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態をペン型カメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるマイクロSDHCカードに記録して保存し
第3 同年7月4日、北海道(以下省略)の法面において、北海道(以下省略)所在のB方脱衣場で入浴後に全裸となっていたC(当時9歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された同児童の全裸の姿態を前記B方に向けたデジタルカメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるSDHCカードに記録して保存し
もって、それぞれ、ひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した。
(証拠)
 (省略)
(法令の適用)
 罰条(第1ないし第3) いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項3号
 刑種の選択(第1ないし第3) いずれも懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い第1の罪の刑に加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件各犯行は、当時小学校教諭であった被告人が、自己の性欲を充たすために、勤務先の小学校に通う児童合計35名の裸体を盗撮して児童ポルノを製造したというものであるところ、その犯行態様がいずれも悪質であることはいうまでもないが、取り分け、判示第1及び第2の各犯行は、小学校教諭としての立場を悪用し、小学校内の保健室に隠しカメラを設置して敢行されたという非常に悪質なものであり、犯行動機にもおよそ酌量の余地はない。
 したがって、被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
 他方、被告人が本件各犯行を認め、反省の態度を示していること、前科がないこと、当然のこととはいえ、小学校教諭を懲戒免職され、一定の社会的制裁を受けていること、父親が今後の被告人の監督を約束していることなど、被告人のために酌量すべき事情もある。
 そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人を主文の刑に処し、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。
(求刑-懲役2年6か月)
刑事部
 (裁判官 橋本健)

6/13 20:18 逮捕、6/14 夜 起訴

 20日勾留というのは短縮できるということですね。

 逮捕中起訴から起訴後の勾留へ

時効まで27時間…強姦容疑の男を逮捕 さいたま地検、異例のスピード起訴
https://www.sankei.com/affairs/news/180614/afr1806140037-n1.html
 平成20年に10代の女性に性的暴行を加えたとして、埼玉県警川口署は13日、強姦の疑いで容疑者を逮捕した。時間は午後8時18分で、15日午前0時の時効成立まで27時間余りだった。さいたま地検は14日夜に容疑者を異例のスピード起訴した。
 刑事訴訟法は「時効は、当該事件についてした公訴の提起によってその進行を停止し」と定めており、逮捕によって止まらないため、速やかに起訴する必要がある。
 通常は48時間以内に警察から検察に送検され、20日間の勾留を経て起訴されることが多いが、県警と地検が事件の重大性を判断して異例の手続きを行ったとみられる。
 地検は起訴内容の詳細を明らかにしていないが、県警の逮捕容疑は20年6月14日午後11時ごろ、川口市内の路上で、帰宅途中の専門学校生の女性の肩をつかみ、「大声を出したら刺すぞ」と脅し、翌15日未明まで公園や空き地など数カ所を連れ回して性的暴行を繰り返したとしている。
 現場の遺留物と被告のDNA型が一致したため、指名手配して行方を追っていた。今月13日夜、川口市内の知人宅にいるのを捜査員が発見した。調べに対し、「記憶にない」と容疑を否認している。

何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後十一時から翌日午前四時までの時間をいう。)に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説

 罰則は16歳未満の場合のみ。過失処罰条項がある

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 H23.7
(深夜外出の制限)
第十五条の四 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後十一時から翌日午前四時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3 何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。
4 深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。
(平一六条例四三・追加)

[要旨】
本条は、第1項において保護者に対し、深夜に青少年を外出させない努力義務を課し、第2項においてすべての者に対し、保護者の委託又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出すこと等を禁止した規定である。さらに、第3項においてすべての者に対し、深夜に外出している青少年の保護及び善導を、第4項において深夜に営業を営む事業
者等に、その施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すことをそれぞれ努力義務として定めている。
【解説]
本条でいう「保護者」とは、第4条の2第1項の「保護者Jと同義である。近年、生活時間帯が深夜に及ぶとともに、深夜に営業する施設も増加したことなどから、青少年が深夜に繁華街を俳佃し、コンビ、ニエンスストア内や駐車場の敷地内、庖の前の路上でたむろするなどの行動が目立つようになり、また、事件や犯罪に巻き込まれる事例も増えている。これらを背景に、平成16年の条例改正により新設された。
第1項は、本来第一義的に保護者が自覚を持つべき事項であるが、子供が深夜に俳梱していたり、無断外泊をしていても、無関心であったり、携帯電話で連絡が取れるから問題がないとしてすぐに迎えに来ない保護者もいるなど、保護者の責任感が希薄化していることから、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させない努力義務を保護者に課したものである。これにより、保護者の責任を明確にし、自覚を促すことを目的としている。
ここでいう「正当な理由」とは、勉強又は就労(労働基準法で認められている範囲内に限る。)のように定例的なもの、本人又は保護者・親戚等の病気や事故、旅行先からの帰宅等の突発的又は一時的なものの両方が想定される。
第2項は、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめることを禁止する規定である。保護者の同意等を受けず、また、その他正当な理由がないのに、青少年を深夜に連れ回すことは、まさに犯罪に巻き込まれる危険性があることから、設けられたものである。
保護者の委託文は同意の有無は、例えば、塾等に迎えに行くなど保護者の委託を受けて定例的に行っている場合、毎回必ず確認することまでは要さない。また、ここでいう「正当な理由Jとは、本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合、事件や事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等を指す。
「連れ出し」とは、青少年をその住居、居所等から離れさせることであり、その手段等は問わない。したがって、携帯電話やメーノレ等での呼び出しで、あっても該当する。
「同伴」とは、現に同行し、又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であると複数であるとは問わない。また、既に深夜に外出している青少年と同伴する場合も含む。
「とどめ」とは、連れ出している、あるいは既に外出している青少年が、帰宅の意思を表しているにもかかわらず、それを翻意させ、又は制止することをいい、その手段は問わない。
また、「連れ出し」、「同伴」、「とどめ」のいずれも、青少年の意思には関係がない。つまり、青少年の意思に反し、あるいは意思の確認をしないで、これらの行為をすることはもとより、青少年が自らの意思で「連れ出し」に応じて外出し、同一の行動を取り、また、翻意に応じて帰宅の意思を変更してとどまっている場合もこれに該当する。
本条において、本項のみが罰則の対象となるが、罰則を適用されるのは、16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者に限る。これは、中学生以下と高校生以上とでは、生活実態が異なることを考慮、したものである。
第3項は子供に対する大人の本来の責任を明確にするためのものである。
第1項及び第2項を受けて、すべての者が、深夜に青少年が外出することは望ましくないとの認識を持ち、そのような青少年と会った場合は、保護するとともに、今後は深夜に外出しないように促すことを求めた規定である。
「保護」とは、深夜外出している青少年が被害に遭わないための未然防止策であり、例えば、飲酒、喫煙、けんか等自身を損ない、又は周囲に迷惑をかける行為をしている場合に、警察や消防などへ通報することが挙げられる。
「善導」とは、深夜外出している青少年に帰宅を促すとともに、犯罪に巻き込まれないため等の注意喚起を促すことである。
なお、保護者から深夜外出の承諾を得ている場合には、やむを得ない場合と考えられることや、保護者が責任をもって行わせていることであるため、必ずしも保護及び善導に努める必要はない。
第4項は、第16条にいう深夜立入制限施設には該当しないが、深夜に営業を営んでいる事業者等は、本条及び第16条の制定された趣旨を十分に理解し、協力する必要があるとして、特に、当該営業に係る施設内等にいる青少年に対する帰宅を促す責任があることを規定したものである。
「深夜に営業を営む者」とは、深夜に営業しているスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの経営者等を想定している。また、帰宅を促す方法としては、掲示や放送等が有効と考えられる。

・・・
罰則
第二十六条 
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
五 第十五条の四第二項の規定に違反して、深夜に十六歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者

第二十八条 
・・・第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

[解説]
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇l等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物質受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の寅受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて糞任を負わせないとしたものである。

https://thepage.jp/detail/20180614-00000002-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-90.x0Auz-QlTn2yldOAHtyYkA.1&utm_referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2F
NEWS手越祐也も未成年と飲酒 “文春砲”は逃れたと思った頃にやってくる

アイドルグループ・NEWSに、また大騒動が起きた。今度は手越祐也が参加した昨年12月のパーティー動画が流出、『週刊文春』の取材により同席者の中には当時19歳と17歳の未成年の女性タレントもいたことが判明。「文春オンライン」やきょう発売の同誌で報じられた。

http://biz-journal.jp/gj/2018/06/post_6952.htmlNEWS
手越祐也「未成年飲酒パーティ」文春砲で絶望? 事務所「最後通告」カウントダウンはじまる?
【この記事のキーワード】NEWS, 手越祐也, 週刊文春
 未成年への飲酒強要で活動を自粛することになったNEWSの小山慶一郎と、厳重注意となった加藤シゲアキジャニーズ事務所に激震が走っているが、今度は手越祐也が「文春砲」の餌食になってしまった。ジャニーズの天敵「週刊文春」(文藝春秋社)が、webサイト『文春オンライン』で手越と未成年女性の「飲酒パーティー」動画を公開している。

 詳しくは同サイトを御覧頂いたきたい。だが、NEWSのメンバーが未成年女性を巡るトラブルで次々に処分されている中、この報道は本人にとってあまりにも痛すぎるのは間違いないだろう。

「手越の女グセの悪さはこれまでもさまざまな媒体が報じていました。ですが昨年、金塊強盗犯との写真流出、セフレとのベッド写真流出など、立て続けにスキャンダルが噴出したため、ついにジャニーズ事務所も重い腰を上げ、彼に最後通告がなされたとも言われていたんですよ。今回の一件で手越になにかしらの処罰が下されるのは明白でしょうね」(芸能記者)

 13歳未満の者に依頼して裸画像を撮影送信させる行為は強制わいせつ罪(176条後段)を構成する(某高裁某支部)


「確かに,この主張のとおり,原判示第4の事実のうち,前記(1)の②の撮影行為はそれ自体強制わいせつ罪を構成すると解される。」という初判断が出ています。

原判決
第4 A(当時●●●歳。以下「A」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、別表2記載のとおり、平成29年月日午後11時15分頃から同月日午前10時43分頃までの間、前後8回にわたり、●●●内の同児童方において、同児童に、その乳房又は陰部を露出させる姿態をとらせ、これを同児童の撮影機能付きスマートフォンで静止画又は動画として撮影させた上、その静止画像データ3点及び動画データ5点を、同スマートフォンから被告人のパーソナルコンピュータに電子メール添付ファイルとして送信させてこれらを受信し、同月日午後11時17分頃から同月日午後零時23分頃までの間、上記被告人方において、同静止画像データ3点及び同動画データ5点を同パーソナルコンピュータに記録させて保存し、もって衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
  第4 包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号

控訴審判決
3原判示第4の事実について
(1)不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反
原判示第4の事実には,
①被告人から被害児童への撮影依頼,
①被害児童による撮影及びスマートフォンヘの記録,
③被害児童による被告人への撮影した画像の送信
④被告人による送信された画像の受信・記録
という行為が含まれ,児童ポルノの②提供目的製造罪,③提供罪,④単純所持罪,①上記②及び③の教唆という併合罪関係にある4つの行為がまとめて記載されているから,訴因不特定として公訴棄却されるべきであったのに,実体判断をした原判決には不法に公訴を受理した違法があるし,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反もある。
(2)訴訟手続の法令違反(弁護人奥村の控訴理由第2及び■■■■■■の控訴理由第2)
原判示第4の事実は,強制わいせつ罪を構成するのに児童ポルノ製造罪で起訴しているのであって,訴因不特定の違法があるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある。
また,原判示第4の行為がされた当時,強制わいせつ罪の起訴には被害者の告訴が必要であったところ,原判示第4の行為について告訴がないまま起訴されているから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある
(3)法令適用の誤り(弁護人奥村の控訴理由第3及び■■■■■■の控訴理由第3)
被害児童は,自由意思で自分を撮影し,送信しており,被害児童が児童ポルノの提供目的製造罪ないし提供罪の正犯であって,被告人はそれらの教唆ないし共同正犯であるから,被告人の単独正犯とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。

裁判所の判断
原判示第4の事実について
Il不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反の主張(前記第1・3(1))について
まず,原判示第4の事実に係る公訴事実はできる限りの特定がされているといえる。
また,同事実に弁護人奥村及び■■■■■■が指摘する①から④までの行為が含まれるとしても,これらは,■■■■■■において,継続した同一の犯意に基づき,一人の児童に係る児童ポルノを所持するために順次行われた行為であるから,これら各段階の行為が各別にみた場合にいずれも指摘された罪の構成要件に該当し得るとしても,全体としては包括して一罪と評価できる。
また,訴因の設定は原則として検察官に委ねられているところ,前記の各段階を各別に特定して訴追しなければ審理の範囲が定まらないとか防御に支障が生じるというものでもないから,これらをまとめたことにより訴因が特定できなくなるものでもない。さらに,弁護人奥村及び■■■■■■が引用する東京高等裁判所の各判決は,起訴状記載の訴因が併合罪を構成するかが不明確な事案についてのものであって,本件とは事案が異なる。したがって,前記事実に係る訴因が不特定であるとして不法な公訴の受理あるいは訴訟手続の法令違反があるとする主張は採用できない。なお,前記②③については,証拠から認められる被害児童の積極性の低さなどからすると,被害児童がそれらの罪に係る構成要件的故意等を有する正犯にあたるとも思われず,従ってまた①の行為が②や③の教唆に当たるということ自体が困難である(これらを間接正犯とするのであれば理解できるが,そうであるとしても,訴因の特定については先に述べたところがそのままあてはまる。)。
(2)訴訟手続の法令違反の主張(前記第1・3(2))について
確かに,この主張のとおり,原判示第4の事実のうち,前記(1)の②の撮影行為はそれ自体強制わいせつ罪を構成すると解される。しかし,■■■■■■が原判示第4の罪に係る行為をした意図は児童ポルノの製造(特に自ら所持等する装置への記録)にあるし,原判示第4の事実には強制わいせつ以外の行為が含まれているのであって,撮影行為はその一部にすぎない。そして,起訴状記載の罰条も併せれば,検察官が強制わいせつを起訴したのではないことは明白であって,審理の範囲が定まらないとか,防御に支障が生じるというものでもないから,訴因が不特定であるとはいえない。また,検察官が起訴したのは非親告罪である児童ポルノ製造罪であるから,強制わいせつ罪の起訴であることを前提に親告罪における告訴が欠ける旨の弁護人奥村及び■■■■■■の主張を採用する余地はなく,この点で原判決に訴訟手続の法令違反はない
(3)法令適用の誤りの主張(前記第1・3(3))について
前記(1)で触れたとおり,証拠からは,被害児童による同②及び③の行為が児童ポルノの提供目的製造罪や提供罪の構成要件を満たすとはいえず,また■■■■■■の原判示第4の行為は包括して児童ポルノ製造罪に当たると解されるから,これを前提に■■■■■■に同罪の単独正犯が成立するとした原判決に法令適用の誤りはない。

11Aとの「平成29年11月14日午後7時23分頃から同日午後11時26分頃までの間に、A市a区bc番dにおいて、同人(当時11歳)と性交及び口腔性交」と「同日午後11時32分頃から同月15日午前5時45分頃までの間に、同区e町f番gにおいて、同人と口腔性交」とを併合罪とした事例(神戸地裁h30.3.20)

 23:26~23:32が移動時間。
 処断刑期が変わるので包括一罪を主張してください

■28262211
神戸地方裁判所
平成29年(わ)第1503号
平成30年03月20日

主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。

理由
(犯罪事実)
 被告人は、被害者が13歳未満の者であることを知りながら、同人と性交等をしようと考え、
第1 平成29年11月14日午後7時23分頃から同日午後11時26分頃までの間に、A市a区bc番dにおいて、同人(当時11歳)と性交及び口腔性交をし
第2 同日午後11時32分頃から同月15日午前5時45分頃までの間に、同区e町f番gにおいて、同人と口腔性交をし
た。
(証拠)
(法令の適用)
罰条 判示第1、第2の各所為につき、いずれも刑法177条後段
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
酌量減軽 刑法66条、71条、68条3号
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は、インターネットを介して知り合った11歳の被害者に対する強制性交等の事案である。
 被告人は、被害者が過去の特異な性体験などによって心身ともに大きく傷ついていることを知っていたのだから、30歳にもなる大人としては、そのような被害者を慮り、その発達に更なる悪影響を及ぼすような行動は厳に慎み、むしろ、年齢に応じた健全な性的価値観を有することができるよう諭さなければならない立場にあったといえるのに、かえってその心の傷に乗じるようにして、性欲の赴くままに、異なる場所で繰り返し犯行に及んだ(本件の犯行態様等からすれば、被告人が性欲を満たすために犯行に及んだことは明らかで、これに反する被告人の供述は信用できず、また、前記経緯に照らすと、被害者が被告人に対して好意を抱いている旨を供述していることも大きく考慮することはできない)。このように、本件犯行は身勝手かつ卑劣であり、そのような犯行により被害者の心身の健全な発達に悪影響を及ぼすことが強く懸念される。また、被告人は、平成28年11月に恐喝罪等により懲役1年6月、3年間執行猶予に処せられ、執行猶予中であるにも関わらず本件犯行に及んだことも、強い非難に値する。被害者の母親も、厳しい処罰を求める旨述べている。これらの点からすると、被告人の刑事責任は重いというべきである。
 そこで、本件が暴行脅迫を用いたり、抵抗しにくい状況に乗じたりしての犯行ではないこと、被告人が本件犯行を行ったこと自体は認めて反省の言葉を述べていることなどを考慮し、13歳未満の女性に対するこれまでの強姦罪の量刑傾向を踏まえつつ、被告人に対しては、酌量減軽の上、主文のとおり刑を量定した。
(求刑懲役5年)
第2刑事部
 (裁判長裁判官 小倉哲浩 裁判官 倉成章 裁判官 牛濵裕輝)

h27.1.30発生の危険運転致死被告事件(当時18歳)。懲役5年(さいたま地裁h29.6.23)→懲役2年6月(東京高裁h30.5.18)→上告棄却H30.8.31

 控訴審が長くて、上告審は超短期。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180901-00000044-asahi-soci
二審判決によると、元少年は18歳だった2015年1月、埼玉県川口市でバイクを無免許で2人乗り運転。赤信号で交差点に侵入してトラックに衝突し、同乗者を死亡させた。県警の書類送検までに約10カ月、検察の起訴までにさらに約10カ月かかり、起訴された時には20歳を超えていた。

TKC
【文献番号】25560572
東京高等裁判所平成29年(う)第1370号
平成30年5月18日第5刑事部判決

       判   決

無職 ■■■■ 平成8年■生
 上記の者に対する道路交通法違反,危険運転致死被告事件について,平成29年6月23日さいたま地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官星景子出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

原判決を破棄する。
被告人を懲役2年6月に処する。


       理   由

第1 控訴趣意とその検討
1 事案の概要
 本件は,当時少年であった被告人が,平成27年1月30日午前3時32分頃,無免許で普通自動二輪車を運転し(原判示第1),信号機により交通整理の行われている交差点を直進するに当たり,同交差点の対面信号機が赤信号を表示しているのを停止線手前約58メートルの地点で認めたが,運転が楽しく,信号を無視してでもスピードを出したまま運転し続けたいと思うと同時に深夜なので左右から来る車両はないだろうと考え,直ちに急制動の措置を講ずることなく,赤信号を殊更無視し,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約50キロメートルで進行したことにより,折から信号に従い左方道路から進行してきた中型貨物自動車左前部に自車左側面部を衝突させて自車を転倒させ,自車の後部席に同乗していた被害者(当時18歳)を転倒させて重症胸部外傷等の傷害を負わせ死亡させた(原判示第2)という事案である。
2 控訴趣意とこれに対する答弁
 弁護人岩本憲武の控訴趣意は,(1)公訴の受理に関する違法(弁護人は,控訴趣意中で刑訴法379条をいう論旨は同法378条2号をいう趣旨であると釈明した。)及び(2)量刑不当の主張であり,これに対する検察官の答弁は,いずれの控訴趣意も理由がなく,本件控訴は棄却されるべきであるというものである。
3 公訴の受理の違法に関する論旨について
(1)論旨は,事故当時は18歳●か月の少年であった被告人の公訴提起が,捜査の遅れのため,成人した後である平成28年10月28日にされ,少年であれば刑事裁判において可能であったはずの少年法55条に基づく家庭裁判所への移送を主張する機会及び同法52条による不定期刑を受ける機会が奪われることになったが,このような事態を生じさせた本件捜査及び公訴提起は違法であるから,本件については刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったのに,そうすることなく実体判断をした原判決には不法に公訴を受理した違法があり,このような処置は平等原則を定める憲法14条にも違反するというのである。
(2)原判決は,この点につき,概要,以下のとおり説示した。すなわち,本件では,(ア)平成27年1月30日に本件事故が発生し,(イ)同年12月3日に警察官からさいたま地方検察庁検察官に事件が送致され,(ウ)同月6日にさいたま地方検察庁から東京地方検察庁に事件が移送され(この理由については被告人の住所地が東京都内であったためと認められる),(エ)平成28年5月26日に東京地方検察庁から東京家庭裁判所に事件が送致され,(オ)同年6月21日に東京家庭裁判所東京地方検察庁検察官への送致決定をし,(カ)同年7月29日に東京地方検察庁からさいたま地方検察庁に事件が移送され(この理由は被告人の住居地が大阪市内であることが確認されたためと認められる),(キ)同年○○月○日に被告人が成人し,(ク)同月28日に検察官が公訴提起をしている,という経過が認められる。
 そして,上記(ア)から(イ)まで約10か月間を要している点については,警察の捜査担当者には,未成年の被疑者の事件を扱うに当たっての十分な知識や配慮があったとは認められず,この点の配慮等があればより短期間に終わらせることは可能であったとは認められるが,この期間内には概ね継続的に捜査が行われていたほか,一時捜査がなされていない時期にも取調べの日程調整等に時間を要した部分があったと考えられる上,被告人が成人に達する約10か月前には検察官送致がされており,警察官が被告人に少年としての刑事裁判を受ける機会を失わせる意図をもって殊更捜査を遅らせたり,特段の事由もなくいたずらに事件の処理を放置したりするなどの重大な職務違反があったとは認められない。
 また,上記(イ)から(エ)まで6か月弱を要している点については,検察官において警察官に補充捜査を指示するなどしたものの,警察官の方で関係者との日程調整に時間がかかったことが原因と認められるが,より短期間に捜査を遂げることはできたと考えられるものの,検察官において殊更に捜査を遅らせたり,いたずらに事件処理を放置したりしたなどとは認められない。
 さらに,上記(オ)から(ク)まで約4か月の期間を要している点も,検察官から被告人やその母親に数回連絡を試みたものの応答がなかったり,被告人が大阪に転居したことが判明したため,東京地方検察庁からさいたま地方検察庁に移送されたりしたという事情が影響していると認められ,この期間の検察官の対応が違法であったとも認められない。
 以上のとおり,捜査のいずれの段階においても,捜査官が少年法の適用を求める機会を奪う意図をもって殊更に捜査を遅らせたり,いたずらに事件の処理を放置したりしたなどという著しい職務違反は認められないとし,公訴棄却を求める原審弁護人の主張は採用できないと判断した。
(3)この原判決の判断は,後記のとおり,本件捜査の評価に関する部分は是認することはできないものの,本件公訴提起の効力は失われないとしたその結論は相当であって,当裁判所も支持することができる。
ア すなわち,本件は,被告人,被害者及びその友人ら合計6名で深夜の肝試しに出かけ,降雪もある中で、同行者の中で比較的年少であった被告人が友人の自動二輪車を運転することとなり,その後部席にやはり年少であった被害者が同乗し,その他の4名は普通乗用自動車に乗って帰る途中で発生したもので,先行した上記自動車が本件交差点前の停止線で赤信号表示に従って停止中であったにもかかわらず,被告人は,赤信号を無視して,その脇を走行して交差点に進入し,進路左方道路から進行してきたトラックに衝突したという事案である。捜査機関においては,上記同行者4名(本件の経緯や目撃状況)及びトラック運転手,被害者遺族の事情聴取,被告人の取調べ等の捜査が必要であったほか,本件交差点付近における防犯カメラ映像の収集や分析,トラックに搭載されたドライブレコーダーの分析等の捜査が必要であったと考えられるところ,同行者等に対する事情聴取のための日程調整に手間がかかったり,本件事故で負傷した被告人の取調べの時期を配慮したりしたなどの事情は認められるとはいえ,本件事故発生当日,被告人が警察に対して自分が運転していたことを認める内容の上申書を提出するなど基本的な事実関係を争っていなかったことやそれを裏付ける基本的な証拠(トラックの運転者立合いの実況見分と調書作成,同車搭載のドライブレコーダーの記録媒体,近くのコンビニエンスストアの防犯カメラ映像等)の収集が比較的早期に獲得されていたことなどに照らすと,警察の捜査は必要以上に時間をかけ過ぎているとの評価は免れない。
 本件捜査を担当した警察官の原審証言等によれば,危険運転致死事件を取り扱うのは初めてであったが,被告人が成人に至らないうちに検察官に事件を送らなければならないという意識はあったものの,それ以上の法律上の取扱いの差異等についての知識や自覚はなかったというのであり,担当警察官が,少年法の規定が適用される機会を奪う意図で本件捜査を遅らせようとしていたとは認められないものの,所論もいうように少年事件を担当する警察官として当然に備えているべき法律知識の欠如が捜査の遅延に関係していたと認められ,本件当時18歳●か月であった被告人の事件で,事実関係が争われていたわけでもないにもかかわらず,検察官に対する事件送致に約10か月を要した担当警察官には,重大な職務怠慢があったといわざるを得ない。 
イ 次に,前記(イ)から(エ)及び(オ)から(カ)までの検察官の捜査状況をみても,被告人の所在地が移ったという理由で検察庁間での移送がなされていたことを踏まえても,法律の専門家として,検察官は,犯行当時,未成年者であった被告人の不利益については特別の関心をもって事件処理に当たるべきであったといえる。検察官において,少年法の規定を適用できなくするとの意図を積極的に有していたり,殊更,事件を放置したりしたとまでは認められないものの,所論のいうとおり,法律の専門家として少年法の規定を熟知しているはずであるにもかかわらず,それまでの経緯から既に大幅に遅れていることが明らかな少年事件の捜査について,特に被告人が被ることとなる不利益に配慮して早期の処理を試みたとも認められず,家庭裁判所への事件送致とその逆送を受けてから公訴提起までに合わせて約10か月間を要した検察官の処理には,職務懈怠があったとの評価は免れない。
ウ 以上によれば,本件においては,被告人の年齢を踏まえ,それに応じた迅速な捜査を遂げていれば,被告人には少年法の適用を受ける機会があったと考えられるにもかかわらず,累積した職務怠慢による捜査の遅延によりその機会が失われたという点において,本件捜査は違法性を帯びるものといわざるを得ず,各捜査担当者には重大な職務違反があるというべきである。
 以上のとおりであるから,本件捜査には重大な職務違反はなく,違法性も認められないとした原判決の判断は是認することができない。
(4)もっとも,検察官には極めて広範な訴追裁量があり,捜査手続に違法性が認められるからといって当然に公訴提起を違法とするものではないところ,本件捜査を担当した捜査官には重大な職務違反が認められるものの,いずれも被告人が少年法の諸規定に基づく裁判を受ける機会を殊更に奪おうとしたものとは認められず,事件の処理を遅らせた職務懈怠の程度も,重大とはいえ,捜査対象となる関係者の多さや,その出頭を得るために要した期間などの事情も踏まえれば,極めて重大であるとまではいえず,本件事案の重大性に照らしても,本件における公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合とは到底いえないから,本件公訴提起を無効とするものではないと解される。
 そうすると,原裁判所が,本件公訴を受理して実体判断をした点に違法はなく,この措置がもとより憲法14条違反の誤りを犯すものともいえない。
 論旨は理由がない。
4 量刑不当の論旨について
(1)論旨は,原判決は,犯情事実についての評価が不当である上,被告人が捜査遅延により受けた不利益を十分に評価しておらず,本件については執行猶予付きの判決とされるべきであり,被告人を懲役5年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である,というものである。
(2)原判決は,被告人は,普通自動二輪車の免許を取得したことがないのに,後部席に被害者を乗せて運転し,時速約50キロメートルの速度で赤信号を無視して本件事故を起こしており,その態様は極めて危険で悪質であること,当時18歳の被害者を死亡させたという本件結果は重大で,被害者の遺族が厳しい処罰感情を述べていることも当然といえること,バイクに乗って楽しかったためにテンションが上がり,深夜であって車が来ないと思ったなどということについては,未熟さが残っているとはいえ既に18歳●か月という年長少年であった上,保護観察中でありながら,短絡的な動機から犯行に及んだもので,その意思決定には厳しい非難が妥当することを指摘し,さらに,本件では,被害者が被告人運転車両に同乗していたものの,被害者は同行していた先輩に言われて乗せられたというのであるから,自発的に同乗した事案と同程度までこの事情を重視することはできないとした。そして,赤信号殊更無視の危険運転致死のうち処断刑と同一又は同種の罪の件数が1件の事案(量刑分布〔1〕)と,危険運転致死のうち同乗者を死亡させた事案(量刑分布〔2〕)の双方の量刑グラフを参照し,本件は,4年から6年程度の実刑が相当な事案と位置付けることができるとし,本件捜査では被告人の年齢に対し十分な配慮がされていなかったこと,本件後に3度の交通違反をしていて反省が十分とはいえないこと,被害弁償として不十分ではあるが,100万円及び自賠責保険約2690万円が支払われていること,被告人の父親が今後被告人と暮らすと述べていて監督者があることなどを総合的に考慮し,上記の刑(懲役5年)に処した旨説示している。
(3)上記量刑判断において,原判決が,本件各犯行の態様,危険性,結果の重大性や遺族感情,動機等につき指摘するところは相当である。
 所論は,深夜で交通量も少ないから危険が高いとはいえないとか,交通量が多いのに殊更信号を無視した事案と比べて情状は軽い,などと指摘するが,本件態様が極めて危険であったことはいうまでもなく,建物があり左側の見通しが悪い状況でありながら,殊更赤信号を無視した点が厳しい非難に値することも明らかである。そうすると,被告人の刑事責任は軽いとはいえないから,被告人に有利な事情を踏まえても,実刑は免れず,その刑の執行を猶予すべきであるとの所論は採用できない。
 しかしながら,原判決が被害者の同乗の点を上記のように評価した上で量刑資料を選定し,その中で本件事案の位置付けを検討した点は相当ではない。さらに,既に判示したような本件捜査における捜査官の重大な職務怠慢により被告人が未成年のうちに刑事裁判を受けることができなかったことについて,一定程度被告人に有利に考慮されるべき事情といいながら,結局,原裁判所が認めた同種事案における量刑の幅の中央値で,原審検察官の求刑どおりの刑を科している点は相当とはいえず,これを是認することはできない。
 すなわち,被害者が先輩に言われて乗せられたといっても,一緒に肝試しに行ったいわば仲間内での話であるし,危険運転を行った車両に衝突された相手方が死亡した場合と同視することはできないのであるから,衝突された相手方が死亡した場合が殆どを占める事案の量刑分布を基準として量刑をすべきものとはいえない。そうすると,懲役7年以下をピークとして概ね懲役5年以上9年以下にまとまっている上記量刑分布〔1〕(これは信号殊更無視の場合であって被害者が被告人車両に同乗者していることによる絞り込みはなく,衝突した相手方車両内に被害者がいる事案が殆どである。)を用いるのは本件事案に適切であるとはいえない。一方,上記量刑分布〔2〕(信号殊更無視の他高速運転の事案も多い。)をみると,懲役3年以下をピークとし,懲役4年以下がそれに次いでいるのであって,これらの事例一覧にみられる個別の事情をも併せ考慮すると,本件は,概ね懲役3,4年で重くても5年程度という枠に位置付けられるものといえる。原判決がこれと異なり,上記量刑分布〔1〕を参照して,懲役4年から6年程度の実刑が相当な事案であると位置付けたことは,本件事案の社会的な類型の評価や全体としての量刑分布における位置付けを誤ったものといわざるを得ない。また,本件捜査の違法を認定しなかった上,被告人の年齢に対する配慮を欠いた点について被告人に有利な事情として考慮すると説示しながら,自ら選択した量刑の幅の中で中央に当たる刑を量定し,捜査の遅れについて有利にしん酌する必要はないと論告において主張する原審検察官の求刑と同じ結論を出していることも不合理である。
 そうすると,原判決の量刑は,被害者が同乗者であった点の評価及び事案に適切な量刑分布表の選択を誤り,全体としての量刑分布における本件事案の位置付けを誤った上,捜査官の重大な職務怠慢により被告人が少年法の諸規定に基づく裁判を受ける利益を失ったことも十分斟酌したものとはいえず,その量刑は重過ぎるものというべきである。
 論旨は上記の限度において理由がある。
第2 自判
 そこで,刑訴法397条1項により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,更に判決をする。
 原判決の罪となるべき事実に原判決挙示の法令(刑種の選択,併合罪の処理を含む)を適用した処断刑の範囲内で,被害者が同乗者であった点や捜査官に重大な職務怠慢があった点を踏まえ,被告人を懲役2年6月に処し,訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 よって,主文のとおり判決する。
平成30年5月18日
東京高等裁判所第5刑事部
裁判長裁判官 藤井敏明 裁判官 菊池則明 裁判官 大西直樹

【文献番号】25560571
さいたま地方裁判所平成28年(わ)第1468号
平成29年6月23日第1刑事部判決
       判   決
無職 ■■■■ 平成8年○○月■日生
 上記の者に対する道路交通法違反,危険運転致死被告事件について,当裁判所は,検察官小西英恵及び同島本元気並びに国選弁護人岩本憲武(主任)及び同原田茂喜各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役5年に処する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,友人らとともに車とバイクに分乗して肝試しに行った帰り際に,雪が降って寒くなったため,一緒に行っていた先輩から被告人らはバイクで帰るように言われたことから,
第1 公安委員会の運転免許を受けないで,平成27年1月30日午前3時32分頃,埼玉県川口市大字α×××番地の×付近道路において,普通自動二輪車を運転し,
第2 前記日時頃,前記車両を運転し,前記場所先の信号機により交通整理の行われている交差点をさいたま市方面から東京都方面に向かい直進するに当たり,同交差点の対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを同交差点の停止線手前約58メートルの地点に認め,直ちに制動措置を講じれば同停止線手前で停止できたにもかかわらず,バイクを運転するのが楽しく,信号を無視してでもスピードを出したまま運転し続けたいと思うとともに,深夜なので左右から来る車両はいないだろうと考えて,赤色信号を殊更無視し,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約50キロメートルで進行したことにより,折から信号に従い左方道路から進行してきた■運転の中型貨物自動車左前部に自車左側面部を衝突させて自車を路上に転倒させた上,自車の後部席に同席していた■(当時18歳)を衝突地点から約26.1メートル離れた路外の畑に転倒させ,よって,同人に重症胸部外傷等の傷害を負わせ,同日午前6時36分頃,埼玉県川口市大字β×××番地所在のA医療センターにおいて,同人を前記重症胸部外傷により死亡させた。
(証拠の標目)《略》
(争点についての判断)
1 弁護人は,本件では捜査機関が捜査を遅延させたことにより,犯行当時18歳●か月であった被告人が少年として刑事裁判を受ける利益が失われたため,このような公訴提起は違法であり,公訴が棄却されるべきであると主張している。もっとも,当裁判所は本件公訴提起は違法ではないと判断したため,その理由について以下に述べる。
2(1)捜査経過の概要
 本件では、(ア)平成27年1月30日に本件事故が発生し,(イ)同年12月3日に警察官からさいたま地方検察庁検察官に事件が送致され,(ウ)同月6日にさいたま地方検察庁から東京地方検察庁に事件が移送され(この理由については被告人の住所地が東京都内であったためと認められる。),(エ)平成28年5月26日に東京地方検察庁から東京家庭裁判所に事件が送致され,(オ)同年6月21日に東京家庭裁判所東京地方検察庁検察官への送致決定をし,(カ)同年7月29日に東京地方検察庁からさいたま地方検察庁に事件が移送され(この理由については被告人の住所地が大阪市内であることが確認されたためであると認められる。),(キ)同年○○月○日に被告人が成人し,(ク)同月28日に検察官が公訴提起をしている。 
(2)検討
 まず,警察官がさいたま地方検察庁に事件を送致するまでに事故発生から約10か月間を要している点について検討すると,確かに,捜査を担当していたB警察官には,未成年の被疑者の事件を扱うに当たっての十分な知識や配慮があったとは認められず,本件捜査をより短期間に終わらせること自体は可能であったと認められるが,前記の約10か月の期間中は概ね継続的に捜査が行われていたほか,一時捜査がなされていない期間についてもその後の取調べ等の日程調整等に時間を要した部分があったと考えられる上,最終的に警察官としては被告人が成人に達する約10か月前に検察官に送致している以上,警察官が少年として刑事裁判を受ける機会を失わせる意図をもって殊更捜査を遅らせた,あるいは,特段の事情もなくいたずらに事件の処理を放置したりするなど極めて重大な職務違反があったとは認められない(最高裁平成23年(あ)第2032号平成25年6月18日第三小法廷決定参照)。
 次に,検察官が家庭裁判所に事件を送致するまでに約6か月弱を要している点をみると,その間に警察官に補充捜査を指示するなどしたものの,警察官の方で関係者との日程調整に時間がかかったために補充捜査が遅れたこと等がその原因となっているものと認められる。この期間についても,より短期間に捜査を遂げることができたのではないかという疑念は払しょくできないが,以上のとおり一応の理由があって捜査を継続していた以上,この期間に検察官が殊更に捜査を遅らせたりいたずらに事件の処理を放置したなどとは認められない。
 さらに,東京家庭裁判所東京地方検察庁検察官への送致決定をした後,公訴提起までに約4か月間の期間を要している点についても,検察官から被告人や被告人の母親に対して複数回連絡を試みたものの被告人らが応答しなかったり,被告人が大阪に転居していたことが判明したために事件が東京地方検察庁からさいたま地方検察庁に移送されたなどという事情が影響していると認められるのであるから,この期間についても,検察官の対応が違法であったとは認められない。
(3)結論
 以上のとおり,本件の捜査経過のいずれの段階においても,また,以上の捜査経過を総合してみても,捜査官が殊更に捜査を遅らせたりいたずらに事件の処理を放置したなどとは認められない。
 なお,弁護人は,捜査の遅延によって,(ア)保護処分が相当と主張する利益や,(イ)不定期刑を受ける利益が奪われたと主張しているが,一般的な感覚から見ても,(ア)本件は保護処分が相当な事案とは到底認められないから,この点で被告人に実質的な不利益が生じたとは認められないし,(イ)少年として刑事裁判を受けていた場合ですら不定期刑という刑事罰を受けていたはずの被告人が,公訴提起が遅れたことによって何らの刑事罰も受けずにすむというのはおかしいと考えられる。
 よって,公訴棄却を求める弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は道路交通法117条の2の2第1号,64条1項に,判示第2の所為は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪につき所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした範囲内で被告人を懲役5年に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件において被告人は,普通自動二輪車の免許を取得したことがないにもかかわらず,後部席に被害者を乗せた状態で普通自動二輪車を運転し,時速約50キロメートルの速度で赤信号を無視して本件事故を起こしており,その態様は極めて危険で悪質である。当時18歳の被害者を死亡させたという本件結果が重大であることは言うまでもなく,被害者遺族が厳しい処罰感情を述べているのも当然である。本件犯行に及んだ動機をみると,被告人は,バイクに乗って楽しかったためにテンションが上がった旨や,深夜であったために車が来ないと思った旨等を述べている。被告人は犯行時少年であり,未熟な部分があったことは否定できないが,18歳●か月という年長少年であった上,保護観察中で,しかも犯行2日前に原付免許の停止処分を受けていながら,このような短絡的な動機から犯行に及んだというのであるから,その意思決定には強い非難が妥当する。
 また,本件では,被害者が被告人の運転車両に同乗していたことが認められるが,被害者は同行していた先輩に言われて乗せられたというのであるから,自発的に同乗したような事案と同程度までこの事情を重視することはできない。そうすると,本件は,赤信号殊更無視の危険運転致死のうち処断刑と同一又は同種の刑が1件の事案と,危険運転致死のうち同乗者を死亡させた事案の,双方の量刑グラフを参照し,4年から6年程度の実刑が相当な事案と位置付けることができる。
 以上述べた被告人の犯罪行為自体の責任に加えて,本件捜査においては,被告人の年齢に対して十分な配慮がされていなかったことが認められ,仮に十分な配慮のもとに捜査が急がれていたならば,被告人が未成年のうちに刑事裁判を受け,不定期刑の判決を受けていた可能性があることは否定できない。このことは,一定程度被告人に有利に考慮されるべき事情と言える。
 さらに,その他の一般情状をみると,被告人は法廷で反省の弁を述べてはいるものの,本件事故の後にも普通自動車を運転して3度の交通違反をしており,反省は不十分であると言わざるを得ないし,被告人から被害者遺族への謝罪も不十分である。被害弁償100万円及び自賠責保険約2690万円が支払われている点は被告人に有利に考慮できるものの,他方で,未だ被害弁償は不十分である。なお,被告人の父親は,今後被告人と暮らす旨を述べており,一応監督者のいる環境が確保されていることは認められる。
 以上の事情を総合的に考慮すると,被告人には主文掲記の刑を科すことが相当である。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役5年)
平成29年6月23日
さいたま地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 高山光明 裁判官 加藤雅寛 裁判官 尾池悠子

「著作権法119条1項においては,侵害の対象となる権利が著作権,出版権又は著作隣接権と明示されているほか,それぞれの権利の内容や消滅,制限等に加え,権利侵害についても同法に定められており,これらをみれば,同条項にいう著作権等を侵害し,又は侵害するとみなされる行為は無限定なものではなく,それらの行為は日常用語として合理的に解釈できる。そうすると,同法119条1項は,同項に定める侵害行為が限定されていないことや明確性を欠くことから憲法21条や31条に反するということはできず,合憲限定解釈されるべきであるとも,

著作権法119条1項においては,侵害の対象となる権利が著作権,出版権又は著作隣接権と明示されているほか,それぞれの権利の内容や消滅,制限等に加え,権利侵害についても同法に定められており,これらをみれば,同条項にいう著作権等を侵害し,又は侵害するとみなされる行為は無限定なものではなく,それらの行為は日常用語として合理的に解釈できる。そうすると,同法119条1項は,同項に定める侵害行為が限定されていないことや明確性を欠くことから憲法21条や31条に反するということはできず,合憲限定解釈されるべきであるとも,そうしなければ同項が無効であるともいえないから,原判決に法令適用の誤りはない。」某高裁某支部
 
 弁当切りの事件だから、憲法違反も主張しておく。
 高裁では初判断。
 頒布権侵害罪というのは、無権限で頒布するという行為をいうということ。頒布行為を妨害するとか、頒布権者を殺すのは含まないというのは、常識で判る。

某高裁某支部h30
第1 弁護人及び被告人の控訴理由
(4)法令適用の誤り(弁護人奥村の控訴理由第4及び被告人の控訴理由第4)
著作権法119条1項は,客体は限定されているが,行為は全く限定されておらず,表現行為に対する漠然不明確な規制であり,かつ過度に広汎な規制であるから,憲法21条に反し無効である。また,著作権法119条1項は,行為や正犯者の範囲について全く無限定であるし,刑罰法規としての明確性も欠くから,合憲限定解釈をしない限り,罪刑法定主義を定める憲法31条に反し無効である。そうすると,限定解釈されるべきであるのにこれをせず,無効である著作権法119条1項を適用して被告人を有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。

裁判所の判断
(4)法令適用の誤りの主張(前記第1・2(4))について
著作権法119条1項においては,侵害の対象となる権利が著作権,出版権又は著作隣接権と明示されているほか,それぞれの権利の内容や消滅,制限等に加え,権利侵害についても同法に定められており,これらをみれば,同条項にいう著作権等を侵害し,又は侵害するとみなされる行為は無限定なものではなく,それらの行為は日常用語として合理的に解釈できる。そうすると,同法119条1項は,同項に定める侵害行為が限定されていないことや明確性を欠くことから憲法21条や31条に反するということはできず,合憲限定解釈されるべきであるとも,そうしなければ同項が無効であるともいえないから,原判決に法令適用の誤りはない。

「物件を借りる際の契約書の保証人になる」という対償供与の約束

 児童を買ったという程度の金額は必要です。
 裁判例で出てくるのはコミック2冊、タバコ数箱です。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
(3) 「対償」 とは、児童が性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいいます。現金のみならず、物品、債務の免除も、「対償j となります。金額の多寡:は問いません。
・・・

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」解説警察庁生活安全局少年課執務資料(部内用)
3 対償の供与、又はその供与の約束
( 1 )対償
ア「対償」とは、売春防止法第2 条にいう「対償」と同義で、児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいい、このようなものと認められる限り、現金のみならず、物品や債務の免除であっても「対償Jに当たり得る.また、金額の多寡は問わないが、「対償」に当たるためには、性交等をすることに対する反対給付といえるかという点と、供与されたものが社会通念上経済的利益といえるかという点の2 点を満たす必要がある

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33838280W8A800C1ACX000/
少女にわいせつ行為 容疑の塾講師の男逮捕 福岡
九州・沖縄 社会
2018/8/6 11:48
 17歳の少女に賃貸保証人になると持ちかけ、酒を飲ませてわいせつな行為をしたとして、福岡県警春日署は6日、容疑者を児童買春・ポルノ禁止法違反(児童買春)などの疑いで逮捕した。「わいせつな行為するために賃貸の保証人になったつもりはない」と容疑を一部否認している。

 逮捕容疑は7月3日、自宅で「物件を借りる際の契約書の保証人になる」と少女に持ちかけた上で、酒を飲ませわいせつな行為をした疑い。

 同署によると、少女が同月上旬、SNSに「保証人になってほしい」と書き込み、容疑者が応じて自宅に呼んだ。少女が2日後に警察に相談し発覚した。

親告罪規定廃止の遡及適用の問題点

 非親告罪化が遡及するので、改正前の刑法の強姦罪・強制わいせつ罪について告訴無しで起訴されることもあります。非親告罪化は、遡及処罰(憲法39条)と、刑の変更(刑法6条)の関係で問題になりますので、控訴審で主張しています。

控訴理由第※ 法令適用の誤り・訴訟手続の法令違反~親告罪規定廃止の遡及適用について、改正刑法附則2条2項は憲法39条前段前半(遡及処罰の禁止)違反であり無効である。
1 附則2条2項は憲法39条前段前半(遡及処罰の禁止)違反であり無効である。

刑法
附 則 (平成二九年六月二三日法律第七二号) 抄
施行期日)
経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。
2 この法律による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第百八十条又は第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇ほう助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。

2 憲法39条前段前半(遡及処罰の禁止)違反からの問題点
 しかし、親告罪という訴訟法の改正について、犯罪後に被告人に不利に変更された場合でも、憲法の趣旨からは、遡及的に適用することは禁止されている。
①橋本公旦「憲法」p282
しかし、訴訟法の変更が重要なものであって、被告人に対して容易に有罪判決をもたらすような内容であるときは、前記条項の精神から見て、立法前の犯罪の裁判には適用できないと解すべきである。
②宮澤全訂日本国憲法p326
 強制わいせつ罪(176条)の親告罪性を失わせると、告訴が無い場合、公訴棄却から有罪(懲役10年)になるのであるから、著しく被告人に不利な結果となるので、憲法39条に違反することになる。
③野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利 憲法Ⅰ第4版p428
④芦部「憲法Ⅲ人権2」p231
 芦部説では訴訟法でも無条件に不利益な変更は禁止されているという。
3 まとめ
 上記のとおり、附則2条2項は憲法39条前段前半(遡及処罰の禁止)違反であり無効である。
 にもかかわらず、遡及させて非親告罪として、告訴なく有罪とした原判決には法令適用の誤り・訴訟手続の法令違反があり、原判決は破棄を免れない。
・・・・・・・・
控訴理由第※ 法令適用の誤り~犯罪後に刑の変更(刑法6条)があったから、軽い方(親告罪)が適用され、告訴がないので、公訴棄却となること。
1 犯罪後の刑法改正であること
 強制わいせつ罪(176条)を非親告罪とした刑法改正はh29.7.13年施行であるから、変更後に刑法が改正されたことになる。

法律名:刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)
公布日等:平29.6.23公布 平29.7.13施行

2 刑法6条の適用
 親告罪規定の廃止も「刑の変更」であるから、刑法6条により、本件には軽い方(改正前の180条1項)が適用される。
第六条(刑の変更)
 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

改正前の第一八〇条(親告罪
1 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

改正後の第一八〇条(親告罪
削除

 これは、刑法施行法4条でも明らかにされていて、刑法の根本原理である。今回の改正でも6条が適用される。
刑法施行法4条明治41年法律第29号
「刑法施行前旧刑法又ハ他ノ法律ノ規定ニ依リ告訴ヲ待テ論ス可キ罪ヲ犯シタル者ハ刑法ノ規定ニ依リ告訴ヲ要セサルモノト雖モ告訴アルニ非サレハ其罪ヲ論セス」

①「刑法施行法評釋」(遠藤源六明治大学)p62
 刑法施行法4条は当然の規定であって、なくても、非親告罪化は遡及しないと説明されている。
「けだし,
(一)告訴を待って論ずることは,告訴の有無にかかわらず処断するよりも犯人に利益なること,
(二)告訴を待って論ずべき罪を犯したる者は告訴なき場合には法律上始めより罪とならざる行為をなしたるものと異ならず,故に新法においてこれを罪とするも,その施行以前の行為に遡及せしむるは不穏当なることの二理由による。そもそも,法律は特別の明文あるにあらざれば,その施行以前の行為に及ばざるを原則とす。したがって,刑法施行以前においては,告訴あるにあらざれば罰せざる行為を刑法において告訴の有無にかかわらず罪とし論ずる旨を規定するもこの規定をもって刑法施行以前の行為を論ずることあたわざるはもちろんなり。故に,本条の規定は理論上当然のことにして,特にこれを設くる必要なきがごとし」

②木村増太郎「刑法施行法大意」
 非親告罪化を遡及させることは刑法の原則に反すると説明されている。
 これは、刑法では通説である
③大塚仁「刑法概説総論4版」p71
 親告罪の変更は刑の変更にあたるとされる。
④植松正「全訂刑法概論Ⅰ総論」p84
⑤町野朔「刑法総論講義案1 第2版」p46
 非親告罪化は、刑の変更となる。

3 まとめ
 強制わいせつ罪(176条)の非親告罪化は刑の変更にあたるから、本件については、改正前の強制わいせつ罪(176条)(親告罪)が適用され、告訴がないので、公訴棄却とすべきである。
 しかるに実体判断をした原判決には法令適用の誤りの誤りがあるので、原判決は破棄を免れない。

準強制わいせつ罪で、5/30初公判(否認)、(この間、証人尋問) 7/20論告、8/28判決(実刑)

 えらいスピード審理で実刑ですね。
 弁護人としては、不合理弁解として実刑になる場合と不合理弁解でも執行猶予になる場合との見極めが必要です。

https://news.google.co.jp/nwshp?hl=ja&tab=wn
海上自衛官、部下にわいせつ 地検横須賀支部が起訴|カナロコ|神奈川 ...
2018/05/31 - 酒に酔って眠っていた部下の女性隊員(20)にわいせつな行為をしたとして、海上自衛隊横須賀音楽隊所属の男(58)=横須賀市=が、準強制わいせつ罪で横浜地検横須賀支部に起訴されていたことが30日、海自などへの取材で分かった。
海自横須賀地方総監部によると、被告は現在、休職中。
起訴状などによると、被告は昨年4月30日、名古屋市内のホテルで、女性隊員が酒に酔って抵抗できない状態にもかかわらず、胸を触るなどのわいせつな行為をした、としている。
3 0日に同支部で公判が開かれ、検察側は冒頭陳述で、「水泳の指導を通して女性と知り合い、(女性が)愛知県に帰省すると聞いて、名古屋市内で食事に誘った」などと指摘。「女性は上官である被告の勧めを断れず、約 5時間にわたり、少なくともビール約 72 0ミリリットルと日本酒約2・5合を飲んだ」とした上で、「自らが宿泊するホテルに連れて行き、眠ってしまった女性にわいせつな行為をした」と犯行の経緯を説明した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180721-00027829-kana-l14
海自女性隊員にわいせつ 音楽隊員に懲役2年求刑
7/21(土) 10:36 神奈川新聞
海自女性隊員にわいせつ 音楽隊員に懲役2年求刑
横浜地裁横須賀支部
 酒に酔って眠っていた部下の女性隊員(20)にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた海上自衛隊横須賀音楽隊所属の男(58)=横須賀市=の論告求刑公判が20日、横浜地裁横須賀支部(植村幹男裁判官)で開かれ、検察側は懲役2年を求刑した。弁護側は無罪を主張し、結審した。判決の言い渡しは8月28日。
 検察側は論告で「被告は、女性が飲み慣れない日本酒を飲ませて、冷静な判断ができない状態にさせた上でホテルに連れて行った」と指摘。「立場を利用した極めて悪質な犯行」と述べた。これに対して弁護側は「女性は抵抗することが不可能な状態ではなかった」などと主張した。
 起訴状などによると、被告は昨年4月30日、名古屋市のホテルで、女性隊員が酒に酔って抵抗できない状態にもかかわらず、胸を触るなどのわいせつな行為をした、とされる。

海自女性隊員にわいせつ 音楽隊員に懲役1年8月実刑判決
神奈川新聞2018年08月28日21時34分
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kanagawa/region/kanagawa-108651973
海自女性隊員にわいせつ 音楽隊員に懲役1年8月実刑判決
 酒に酔って眠っていた部下の女性隊員(20)にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた海上自衛隊横須賀音楽隊所属の被告の男(58)=横須賀市=に対し、横浜地裁横須賀支部は28日、懲役1年8月(求刑懲役2年)の実刑判決を言い渡した。
 判決などによると、被告は昨年4月30日、名古屋市のホテルで、酒に酔って抵抗できない女性隊員の胸を触るなど、わいせつな行為をした。
 植村幹男裁判官は判決理由で「女性隊員から同意が得られないことを認識していたのに、(女性隊員が)再び眠ってしまったことから行為に及んだ。動機は自己中心的」と指摘。弁護側は「女性隊員は抵抗することが不可能な状態ではなかった」などと無罪を主張したが、「不合理な弁解に終始し、反省の情に乏しい」と述べ、主張を退けた。

大法廷h29.11.29の英訳

大法廷h29.11.29の英訳
 えげつない事件も英語にすれば目立たない。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_en/detail?id=1541
2016 (A) 1731
→Back
Date of the judgment (decision)
2017.11.29
Case Number
2016 (A) 1731
Reporter
Keishu Vol. 71, No. 9
Title
Judgment concerning whether the perpetrator’s sexual intention is required for the formation of forcible indecency or not
Case name
Case charged for violation of the Act on Regulation and Punishment of Acts Relating to Child Prostitution and Child Pornography, and the Protection of Children, for forcible indecency, and for violation of the Act on Prevention of Transfer of Criminal Proceeds
Result
Judgment of the Grand bench, dismissed
Court of the Second Instance
Osaka High Court, Judgment of October 27, 2016
Summary of the judgment (decision)
Although there are some cases in which, as one of individual and specific conditions for determining whether an act falls under an “indecent act” stipulated in Article 176 of the Penal Code (prior to the revision by Act No. 72 of 2017) or not, the perpetrator’s purpose and other subjective conditions should be considered as a factor for determination, the perpetrator’s sexual intention is not a requirement for the formation of forcible indecency.
References
Article 176 of the Penal Code (prior to the revision by Act No. 72 of 2017)



Penal Code (prior to the revision by Act No. 72 of 2017)



Article 176 A person who, through assault or intimidation, forcibly commits an indecent act upon a male or female of not less than thirteen years of age shall be punished by imprisonment with work for not less than 6 months but not more than 10 years. The same shall apply to a person who commits an indecent act upon a male or female under thirteen years of age.
Main text of the judgment (decision)
The final appeal is dismissed.

The 280 days of pre-sentencing detention for this instance are regarded as implementation of part of the sentence.
Reasons
1. Regarding the respective reasons for final appeal argued by the defense counsels, MATSUKI Toshiaki and SONODA Hisashi and among the reasons for final appeal argued by the defense counsel, OKUMURA Toru regarding the reason alleging violation of a judicial precedent and violation of laws and regulations by citing a Supreme Court judgment (1968 (A) No. 95, Judgment of the First Petty Bench of the Supreme Court of January 29, 1970, Keishu Vol. 24, No. 1, at 1) (hereinafter referred to as the “1970 Judgment”)

(1) A summary of findings of the facts constituting the crime charged stated in I-1 of the judgment of first instance is as follows: Knowing that the victim was a girl under thirteen years of age, the defendant committed indecent acts, such as forcing the victim to touch his penis and hold it in her mouth, and touching the victim’s private parts.

The findings of the judgment of first instance are that the explanation provided by the defendant that he had no intention of whetting and satisfying his sexual appetite but an intention of obtaining money cannot be rejected, and therefore a reasonable doubt remains about determining that the defendant had a sexual intention. The judgment of prior instance affirmed these findings of the judgment of first instance, and then held that it is inappropriate to maintain the 1970 Judgment at this time because forcible indecency is formed when the perpetrator objectively conducts an act violating the victim’s sexual freedom with an awareness of that effect, and therefore whether the perpetrator has a sexual intention or not does not affect the formation of the crime. Accordingly, the judgment of prior instance affirmed the judgment of first instance, which found the above-mentioned essential facts constituting the crime charged stated in I-1 of the judgment.

(2) The argument of the defense counsels alleges that the judgment of prior instance made a mistake in construction and application of Article 176 of the Penal Code prior to the revision by Act No. 72 of 2017 (hereinafter referred simply to as “Article 176 of the Penal Code”) and made a determination that contravenes the 1970 Judgment, which held that, for the formation of forcible indecency, the act is required to be conducted under a sexual intention of whetting or satisfying the perpetrator’s sexual appetite. Therefore, the Court will consider this allegation.

(3) The 1970 Judgment was on an appeal case against the judgment of prior instance, which affirmed the judgment of first instance, which held that facts of forcing the victim under threat of intimidation to become naked and taking pictures of her with an intention of taking revenge on her by taking pictures of her while naked fall under forcible indecency stipulated in the first sentence of Article 176 prior to the revision by Act No. 91 of 1995. The 1970 Judgment held that, for the formation of forcible indecency, as it is called, stipulated in the first sentence of Article 176 (prior to the revision by Act No. 91 of 1995), the act is required to be conducted under a sexual intention of whetting or satisfying the perpetrator’s sexual appetite, and therefore an act of using intimidation to make a woman become naked and taking pictures of her may otherwise constitute compulsion and other crimes but does not form forcible indecency when the act was conducted under the sole purpose of taking revenge on the woman or insulting and abusing her. Accordingly, the 1970 Judgment quashed the judgment of prior instance by stating that both the judgment of first instance and the judgment of prior instance, which held that forcible indecency is formed without a sexual intention of whetting or satisfying one’s sexual appetite, etc., made a mistake in the construction and application of Article 176 of the Penal Code (prior to the revision by Act No. 91 of 1995).

(4) However, it is difficult to maintain the above construction shown in the 1970 Judgment.

(A) Since the enactment of the current Penal Code and until this moment, no phrase has been prescribed in the text of the law on the purpose of requiring a sexual intention, which is the perpetrator’s subjective condition other than an intention of committing the crime, as a requirement for the formation of forcible indecency, and there has been a persuasive opinion that, regarding forcible indecency, whether the perpetrator’s sexual appetite was whetted or not has no effect on the formation of the crime. On the other hand, the 1970 Judgment required a sexual intention for the formation of forcible indecency, and therefore held that compulsion and other crimes may formed if there is no sexual intention, without stating any clear reason for differentiating a case with a sexual intention, in which forcible indecency (its statutory penalty at that time being imprisonment with work for not less than six months but not more than seven years) is formed, and a case without a sexual intention, in which only compulsion (its statutory penalty at that time being imprisonment with work for not more than three years), etc. is formed. Moreover, the judgment did not give a specific explanation on the consistency with a coherent construction that, for the formation of rape, which is construed as an aggravated type of forcible indecency, the perpetrator’s subjective condition other than an intention of committing the crime is not required.

Basically, a criminal provision pertaining to sexual damage or the construction of the provision has a characteristic that it cannot determine subjects of punishment without taking into account how such damage is accepted by society. Also in foreign countries, since 1970, provisions pertaining to sexual damage have been revised according to actual conditions of each country, and Germany, which is sometimes pointed out to have affected theories in Japan at the time of 1970, has also conducted repeated revisions of law to revise the fundamental part of requirements for constituting the crime. These trends in legislation show us that criminal provisions pertaining to sexual damage have been revised according to the reality of sexual damage and changes in public awareness about it in each country of different times.

From these points, the 1970 Judgment can be understood that it required in a blanket manner the act to be conducted under a sexual intention of whetting or satisfying the perpetrator’s sexual appetite, regardless of the nature and content of the act, as a requirement for the formation of forcible indecency, to determine the extent of subjects of punishment for the crime, taking into account how the crime was accepted by society at the time. However, this construction cannot be deemed as solid and unchallenged.

(B) “The Act for the Partial Revision of the Penal Code, etc.” (Act No. 156 of 2004) made heavier the statutory penalty for forcible indecency from imprisonment with work for not less than six months but not more than seven years to imprisonment with work for not less than six months but not more than 10 years and the statutory penalty for rape from imprisonment with work for a limited term of not less than two years to imprisonment with work for a limited term of not less than three years to make them consistent with the normative awareness of the public about crimes pertaining to sexual damage. Furthermore, given the reality, etc. of crimes pertaining to sexual damage and to become able to respond to a case according to its reality, “the Act for the Partial Revision of the Penal Code” (Act No. 72 of 2017) newly created crimes of forcible intercourse, etc. by combining part of acts that had been treated as subjects for punishment for forcible indecency and acts that had been treated as rape to include both men and women in the possible object and subject of the new crimes, and made heavier the statutory penalty for the new crimes to imprisonment with work for a limited term of not less than five years, as well as newly created a crime of indecency by a person who has custody and crimes of intercourse, etc. by a person who has custody. It is apparent that these revisions reflect changes in how society generally accepts crimes pertaining to sexual damage and the reality of the crimes.

(C) In light of the above points, in present times, in construing the requirements for the formation of forcible indecency, the Court should look at whether the victim suffered sexual damage or not and the content and extent of the damage. It is inevitable to say that it has become further difficult to find substantial grounds for supporting the legitimacy of the construction of the 1970 Judgment, which treated the perpetrator’s sexual intention as a requirement for the formation of the crime, and therefore it has now become hard to maintain the construction.

(5) With that being said, among acts that should be evaluated as an indecent act stipulated in Article 176 of the Penal Code, there are acts that, as an act leading to rape, can be immediately evaluated as an indecent act for the reason that the acts themselves have an apparent sexual nature and can be confirmed without doubt to have a sexual meaning, regardless of the specific situation in which such acts were conducted and other factors. On the other hand, there are acts that people cannot tell whether the acts themselves have an apparent sexual nature or not, and for which it is difficult to evaluate whether they have a sexual meaning or not without taking into account the specific situation in which such acts were conducted and other factors. Moreover, given the severity of the statutory penalty stipulated in the same article, not all the acts that can be seen to have a hint of a sexual meaning should be evaluated as deserving of punishment as an indecent act stipulated in the same article. The question of what kinds of acts have a sexual meaning and should be seen to deserve punishment pursuant to the same article is a matter of normative evaluation that should be determined objectively in consideration of how society at that time generally accepts crimes pertaining to sexual damage.

According to the above-mentioned facts, in order to determine whether an act falls under an indecent act stipulated in Article 176 of the Penal Code or not, the Court should first duly examine whether the act itself has a sexual nature or not and its extent, then give comprehensive consideration to the specific situation in which such act was conducted and other factors, as the case may be, and finally determine whether the act has a sexual meaning or not and the strength of the sexual meaning based on specific facts according to individual cases. Therefore, it is undeniable that there are some cases in which, as one of such individual and specific conditions, the perpetrator’s purpose and other subjective conditions should be considered as a factor for determination. However, although there are such cases, it is not appropriate to require the perpetrator’s sexual intention other than an intention of committing the crime as a requirement for the formation of forcible indecency in a blanket manner. The construction made in the 1970 Judgment should be amended.

(6) Looking into this case, the act itself stated in I-1 of the judgment of first instance has an apparent sexual nature. Without the need to consider other conditions, the act has a strong sexual meaning and is apparently an objectively indecent act. Accordingly, the conclusion of the judgment of prior instance, which affirmed the judgment of first instance, which confirmed the formation of forcible indecency, is appropriate.

For the reasons above, according to Article 410, paragraph (2) of the Code of Criminal Procedure, it is appropriate to amend the 1970 Judgment so far as it contravenes the above opinion of this Court and to maintain the judgment of prior instance. Therefore, the argument of the defense counsels alleging violation of the judicial precedent does not constitute a reason for quashing the judgment of prior instance. In addition, such maintenance of the judgment of prior instance does not constitute a violation of Article 31 of the Constitution of Japan and other provisions.



2. Among the reasons for final appeal argued by the defense counsel, OKUMURA Toru, the remaining reasons alleging violation of a judicial precedent are irrelevant in this case because the cited judicial precedent addressed a different type of facts, or lack a premise because the cited judicial precedent did not indicate the reasoning as argued by the defense counsel; and the rest are assertions of violation of laws and regulations and inappropriate sentencing; and none of these reasons can be regarded as a reason for final appeal permissible under Article 405 of the Code of Criminal Procedure.



Consequently, pursuant to Article 414 and Article 396 of the Code of Criminal Procedure and Article 21 of the Penal Code, the Court unanimously decides as set forth in the main text.



Public prosecutors HIRAMITSU Nobutaka and NAKAHARA Ryoichi attended the trial.
Presiding Judge
Justice TERADA Itsuro

Justice OKABE Kiyoko

Justice ONUKI Yoshinobu

Justice ONIMARU Kaoru

Justice KIUCHI Michiyoshi

Justice YAMAMOTO Tsuneyuki

Justice YAMASAKI Toshimitsu

Justice IKEGAMI Masayuki

Justice OTANI Naoto

Justice KOIKE Hiroshi

Justice KIZAWA Katsuyuki

Justice KANNO Hiroyuki

Justice YAMAGUCHI Atsushi

Justice TOKURA Saburo

Justice HAYASHI Keiichi
(This translation is provisional and subject to revision.)