盗撮製造罪で執行猶予(函館地裁H30.4.17)
これを函館地検で閲覧申請していましたが、D1LAWにでました。
被害児童35名で執行猶予ですが「犯情の最も重い第1の罪の刑に加重」になっていて、「判示第1別表○版の罪に加重」となっていないことからは、1回の盗撮で数人撮影した場合を一罪とカウントしていて、被害児童の個性は問題となっていないようです。個人的法益説が徹底されていない場面です。
函館地方裁判所
平成30年04月17日
被告人
弁護人(私選) 廣田朋子主文
被告人を懲役2年6か月に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。理由
(犯罪事実)
被告人は
第1 平成28年4月13日、北海道(以下省略)所在のA小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表1(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態を腕時計型カメラで動画撮影し、同日頃、北海道(以下省略)所在の当時の被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し
第2 平成29年4月12日、前記小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表2(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態をペン型カメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるマイクロSDHCカードに記録して保存し
第3 同年7月4日、北海道(以下省略)の法面において、北海道(以下省略)所在のB方脱衣場で入浴後に全裸となっていたC(当時9歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された同児童の全裸の姿態を前記B方に向けたデジタルカメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるSDHCカードに記録して保存し
もって、それぞれ、ひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した。
(証拠)
(省略)
(法令の適用)
罰条(第1ないし第3) いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項3号
刑種の選択(第1ないし第3) いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い第1の罪の刑に加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
本件各犯行は、当時小学校教諭であった被告人が、自己の性欲を充たすために、勤務先の小学校に通う児童合計35名の裸体を盗撮して児童ポルノを製造したというものであるところ、その犯行態様がいずれも悪質であることはいうまでもないが、取り分け、判示第1及び第2の各犯行は、小学校教諭としての立場を悪用し、小学校内の保健室に隠しカメラを設置して敢行されたという非常に悪質なものであり、犯行動機にもおよそ酌量の余地はない。
したがって、被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
他方、被告人が本件各犯行を認め、反省の態度を示していること、前科がないこと、当然のこととはいえ、小学校教諭を懲戒免職され、一定の社会的制裁を受けていること、父親が今後の被告人の監督を約束していることなど、被告人のために酌量すべき事情もある。
そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人を主文の刑に処し、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。
(求刑-懲役2年6か月)
刑事部
(裁判官 橋本健)