児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪で最終媒体(cdrom・HDD)を没収できるか?

 複製の際には「姿態とらせて」がないので、「姿態とらせて」が実行行為だとすれば、成立しないはずです。
 最高裁は実行行為説ではなく身分犯説でこの問題をすり抜けようとしています。

札幌の教頭児童買春:元教頭、わいせつ認める 懲役3年求刑−−地裁公判
2007.12.14 毎日新聞社
 出会い系カフェで知り合った少女らに現金を渡し写真を撮影したとして児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われた被告(55)の初公判が14日、札幌地裁(中川綾子裁判官)であった。被告は起訴事実を全面的に認め、検察側は懲役3年を求刑。即日結審した。
 検察側は論告で「児童の未成熟な精神につけ込み、教育機関への社会の信頼を失わせる極めて悪質な犯行。ゆがんだ性癖は常軌を逸しており再犯の可能性が高い」と指摘。児童の画像を記録したSDカード2枚とCD1枚の没収も求めた。弁護側は「謝罪文を書くなど真摯(しんし)に反省し、社会的制裁も受けている」と執行猶予を求めた。

 札幌高裁はこの点よくわかっていなくて、札幌高裁h19.3.8でも「姿態をとらせ」実行行為説ですよね。
 最高裁は実行行為説ではなく身分犯説なんですけど。

札幌高裁H19.3.8
児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。
・・・・
3没収に関する控訴趣意について(控訴理由第3)
論旨は,要するに,原判決が没収するとしたミニデジタルビデオカセット3本(以下,「本件各ビデオカセット」という)は,改正児童ポルノ法施行前の撮影画像が含まれ,改正児童ポルノ法施行後に撮影された撮影画像も児童ポルノの所持は所定の目的がない限りいわゆる法禁物ではなく,さらに,改正児童ポルノ法施行前の撮影画像や起訴されなかった撮影画像部分の没収は憲法21条,29条に違反するから,いずれも没収できないのに,これらを含む本件ビデオカセット全体を没収した原判決には:判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違反がある,というのである。
しかし,本件各ビデオカセットに本件児童ポルノ製造罪に係るもの以外の画像が含まれていたとしても,本件児童ポルノ製造罪に係る画像も含まれており,両者が物理的に一体となっている以上,それらはそれぞれ本件児童ポルノ製造行為の犯罪組成物件(刑法19条1項1号)であり,かつ,被告人以外の者に属しない(同法2項)ゐであるから,いずれも刑法19条の任意的没収の対象となることは明らかである。また,没収は刑罰の一つであり,その対象物は被告人以外の者に属しないことが要件とされているから,憲法21条,29条に違反するとの所論は採用できない。論旨は理由がない。
・・・・
所論は,?児童ポルノ法は改正され,平成16年7月8日に施行されたが,法務省のウェブサイトでも今だに旧法を広報しているのであるから,改正法は,.形式的には公布・施行されているが,実質的には公布・施行が欠けており,被告人は改正法を知らなかったから違法性の意識を欠いており,また,期待可能性も減少すると評価すべきであって,児童ポルノ製造罪につき刑法38条3項ただし書を適用して減刑すべきであり,・・・という。
しかし,改正法が公布・施行されている以上,主務官庁である法務省のウェブサイトが本件犯行当時旧法を広報していたとしても,違法性の意識の可能性・期待可能性がないとはいえない。

 札幌高裁がわかっていないことがわかったので、さらに突っ込まれて、札幌高裁H19.9.4では「姿態をとらせて」を実行行為とした上で、児童買春罪とは観念的競合であるとしています。
 さらに、第一次製造(撮影)と第二次製造(複製)を包括一罪として、第二次製造のときには「姿態とらせて」は不要だというのですが、第二次製造単独でも3項製造罪になるから本来併合罪のところを包括一罪となるという基本を忘れています。第二次製造単独で3項製造罪にならない場合は、それは「不可罰的事後行為」です。

札幌高裁平成19年9月4日
 論旨は、要するに、?原判決は、「携帯電話内蔵メモリからSDカードの複製」については、姿態をとらせることは「実行行為」ではないとしながら、罪数処理においては、姿態をとらせることを「実行行為」とすることを前提にしており、原判決には、理由齟齬がある(控訴理由第5)、?原判決の「犯罪事実」には、「携帯電話による撮影行為」と「携帯電話内蔵メモリからSDカードへの複製」という2段階の製造行為が記載されているが、「携帯電話内蔵メモリからSDカードへの複製」には、「姿態をとらせる」に該当する事実が記載されていない原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある(控訴理由第4)、・・・というのである。
 そこで、検討するに、児童ポルノ法7条3項は、「姿態をとらせ、これを記録媒体その他の物に描写することにより、児童ポルノを製造すること」を処罰しているのであって、「姿態をとらせ」てから「その姿態を描写する」までの間の経過については、何ら制限を加えていないから、「姿態をとらせ」てから姿態が描写された児童ポルノが作成されるまでの間に、複数の児童ポルノが製造されることを排除していないと解され、また、児童ポルノ法の「製造」とは、児童ポルノを作成することをいい、児童ポルノは、一定の操作を行うことによって児童の姿態を視覚により認識することができれば足りるから、例えば、フイルムカメラによる写真撮影の場合には、?撮影、?フイルムの現像、?フイルムのプリント・焼付けのそれぞれが児童ポルノの製造に当たると解される。このように、児童ポルノの製造においては、「撮影して写真を作製する」といった、社会通念的に一つの固まりと見られそうな行為であっても、その過程で児童ポルノに当たる物が順次製造されるごとに製造行為が観念でき、当初から意図されていた物が製造されるまでに複数の製造行為が連なっていると見られる場合が少なくない。そして、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合には、その全体として包括一罪となると解するのが相当である。
 原判決は、その「犯罪事実」において、「同児童らを相手方とする性交又は性交類似行為に係る姿態及び衣服の全部又は一部を着けない姿態であって性欲を興奮させ又は刺激する姿態をとらせ、これをそれぞれ携帯電話内蔵カメラで撮影した上、これらを電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)に描写し、もって同児童らに係る児童ポルノをそれぞれ製造した」と記載しているのであって、原判決が、「児童に姿態をとらせ、これを携帯電話内蔵カメラで撮影した上、電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)に描写し」たことを一体として児童ポルノ製造罪の「実行行為」としていることは明らかで、「児童に姿態をとらせ」たことを、「実行行為」として認定し、原判決の「犯罪事実」にも「実行行為」として記載していることは明らかである。論旨?及び?は、原判決を曲解した独自の見解に基づくもので、失当である。
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 2 製造罪の成立及び没収に関する主張について
 論旨は、要するに、本件児童ポルノ製造行為には、「携帯電話による撮影行為」と「携帯電話内蔵メモリからSDカードの複製」という2段階の製造行為があり、この携帯電話の内蔵メモリからSDカードの複製行為には、「実行行為」である姿態をとらせる行為が存在しないから、児童ポルノ法7条3項の構成要件を満たさないのに、原判決が電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)の児童ポルノ製造罪を認め、このSDカードを没収した原判決には、法令適用の誤りがある(控訴理由第3)、というのである。
 しかしながら、上記のとおり、本件のように、複数の製造行為が連なっていて、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行った場合には、包括一罪となるのであって、「児童に姿態をとらせ、これを携帯電話内蔵カメラで撮影した上、電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)に描写し」たことが一体として児童ポルノ製造罪の「実行行為」となる。したがって、「姿態をとらせ」る行為も存在し、児童ポルノ法7条3項の構成要件を満たすことは明らかであり、その姿態を描写したSDカードが児童ポルノであって犯罪組成物件となることも明らかである。これと同様の判断に基づいて、児童ポルノ製造罪の成立を認め、本件SDカードの没収をした原判決の判断に法令適用の誤りはない。所論は、弁護人独自の見解に基づき原判決を曲解したものであって、その前提を誤っており、採用できない。論旨は理由がない。
 3 罪数処理に関する主張について
 論旨は、要するに、本件児童ポルノ・児童買春罪は、1罪であるのに、多数罪とした原判決には、法令適用の誤りがある(控訴理由第7)、というのであるが、原判決の罪数処理は相当であって、原判決に法令適用の誤りはない。
 所論は、?同一被害児童に対する数回の撮影行為は包括一罪である、?児童ポルノ製造罪の個数は、製造された児童ポルノの個数により定まる、?本件の児童ポルノ製造罪と児童買春罪は観念的競合である、という。
 ?の点を考えるに、なるほど、同一被害児童に対する複数の撮影行為の場合、その場所的時間的近接性、機会の単一性・同一性、犯意の同一性、といった観点から、一つの行為とみることが相当であるとして包括一罪とされる場合は存在する。しかしながら、本件の場合、各撮影等の行為は買春行為に付随して行われているところ、この各買春行為は、その買春の機会ごとに被告人から新たな買春の申込みがなされ、これに被害児童が個別に応じることによって生じたものであって、それぞれが別個独立した機会、犯意に基づくものである。このような買春行為に付随して行われた撮影等の行為も、買春行為ごとに別個独立の行為とみるのが相当である。
 ?の点を検討するに、本件で各買春行為に関連してなされた姿態を描写して児童ポルノを製造する行為は、上記のとおり別個独立であり、それぞれの描写行為(SDカードへの記録行為)により製造された児童ポルノであるSDカードは、それ以前のSDカードが内蔵していた姿態とは異なる姿態を内蔵するのであるから、それまでの児童ポルノとは異なる別個の児童ポルノとなっていることも明らかである。すなわち、外形上1個の有体物ではあっても、各描写行為により別個の児童ポルノが製造されていたこととなる。したがって、仮に、所論のとおり、児童ポルノ製造罪の個数が製造された児童ポルノの個数で定まると考えても、本件では、多数個の児童ポルノが製造されているのであるから、多数罪となる。
 そして、?については、原判決も、各買春とこれに関連してなされた児童ポルノ製造罪とを「観念的競合」として処理している。
 上記判断と同様の罪数処理をした原判決に誤りはなく、法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。

 東京高裁h19.11.6の裁判長は「観念的競合はおかしいでしょう。誰ですかそんな判決書いたのは?」って言ってましたね。
 大阪高裁h19.12.4も単純一罪説でした。
 被告人は裁判所を選べないのに、分かっていない裁判所にあたると気の毒です。