児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

5項製造罪事件について、理由不備で原判決を破棄した事例(東京高裁H22.3.23)

 検察官はちゃんと起訴状に書いたのに、裁判所が書き漏らしたのでした。 
 奥村弁護士もあわや見落とすところでした。
 裁判官が手抜きした感じで後味悪い事件です。
 児童ポルノ・児童買春事件については、理由不備・法令適用の誤りが通るかもしれないので、弁護人は注意して下さい。

平成22年3月23日宣告
判決
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の各控訴趣意書記載のとおりであるから,これらを引用する。
第1理由不備の主張について
論旨は,要するに,原判決は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項前段に規定する児童ポルノを製造した罪(以下「児童ポルノの5項製造罪」という。)に係る訴因をすべて認めて同条項を適用しているのに,犯罪事実の項には,その要件である「不特定又は多数の者に提供する目的で」との事実を認定判示し七いないから,原判決には理由不備の違法がある,というのである。
そこで,原審記録を調査して検討すると,原判決は,所論指摘のとおり,児童ポルノの5項製造罪に係る本件の訴因がすべて肯認できるとし,被告人の所為が児童ポルノ法7条5項前段(同法2条3項3号,刑法60条を併せ適用)に該当するものと認めた有罪判決であることは明らかであるところ,本件の訴因のとおりの犯罪事実を肯認するためには,被告人につき,児童ポルノ法7条5項前段に定める主観的要件である「前項に掲げる行為の目的」,すなわち,本件に即していえば,児童ポルノを不特定又は多数の者に提供する目的が認められることが必要である。しかるに,原判決は,犯罪事実の第1において,その旨の判示をしていないのであるが,このような目的を持たないで児童ポルノの製造を行った場合には,同法7条3項(なお,特定かつ少数の者に提供する目的が認められる場合には同条2項)に規定する児童ポルノを製造した罪に該当することにも照らせば,上記の目的の記載を欠く原判示を単なる誤記と認めることはできないというほかはない。したがって,この点において原判決には理由不備の違法があり,破棄を免れない。論旨は理由がある。
第2破棄自判
よって,その余の控訴趣意(事実誤認,法令適用の誤り,量刑不当)に対する判断を省略し,刑訴法397条1項,378条4号により原判決中被告人に関する部分を破棄し,同法400条ただし書により被告事件について更に判決する。
(罪となるべき事実)

 この点の控訴理由の一部も挙げておきます。実際には、この程度ではなく、くどくど書いています。

控訴理由第1 理由不備〜罪となるべき事実は3項製造罪の構成要件をみたさない。
1 はじめに
 本件製造罪(7条5項の製造罪)の犯罪事実には、構成要件である「不特定又は多数の者に提供する目的で」に該当する事実が全く記載されていない

原判決
(犯罪事実)
第 1 被告人は,共謀の上,日時まで,地名等において,被害児童が 18歳に満たない児童であることを知りながら,児童をして・・・させ,殊更に性器や臀部等を強調した姿態をとらせて,これをデジタルビデオカメラで撮影し,その画像をデジタルビデオカセット 8本に記憶させて,衣服の一部を着けない児童の姿態あって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

起訴状
公訴事実
第1 被告人は、と共謀の上、「不特定又は多数の者に提供する目的で、」日時までの間、地名等において、被害児童が18歳に満たない児童であることを知りながら、児童をして・・・させ、それらを殊更強調した姿態をとらせ、これをデジタルビデオカメラで撮影し、それらの画像をデジタルビデオカセットテープ8本に記憶させ、もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し

 原判決の認定事実には「不特定又は多数の者に提供する目的で」が記載されていない点で犯罪を構成しない。
 にもかかわらず無罪判決をせず5項製造罪として有罪とした原判決には、理由不備があるから原判決は破棄を免れない。