児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童に裸体画像を送信させる行為は、「わいせつ行為」ではない。(広島高裁岡山支部H22.12.15 東京高裁H27.12.22)

児童に裸体画像を送信させる行為は、「わいせつ行為」ではない。(広島高裁岡山支部H22.12.15 東京高裁H27.12.22)
 送信させる行為は、児童ポルノ製造罪で取り込むしかありません。
 弁護人はこういう高裁判例で切り込めばちょっと軽くなるでしょう。

東京高裁H27.12.22
(1)強要罪が成立しないとの主張について
記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネットアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,というものである。
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。
弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名及び罰条の記載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す記載もないことからすれば,本件において,強制わいせつ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審においても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,性的意図を含むものとはいえない。
また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主張は失当である。
そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。

札幌高裁令和5年1月19日
第4 法令適用の誤りの論旨について
 1 所論は、①被告人が遠隔地にいるAに裸体を撮影させた行為は、性的侵
襲が弱く、それだけでは被告人は全く性的興奮を得られないから、性的意味合
いは皆無か、極めて薄く、わいせつな行為に該当しない、あるいは、強制わい
せつ未遂罪が成立するにとどまる、②原判決は、罪数処理の記載で、被告人
が、Aに撮影させた動画データを被告人に送信させて、保存・記録させ、被告
人がその動画を見たことまでわいせつ行為と評価しているが、これらはわいせ
つ行為にならないし、Aに撮影させた行為までであればわいせつ行為となり得
るとしても、Aに動画データを送信記録させる行為に及ぶと、Aに撮影させた点
を含めて行為全体がわいせつ行為とは評価できなくなる、③接触を伴う強制わ
いせつ罪においては、犯人が被害者の面前にいることが前提とされているか
ら、非接触の強制わいせつ罪においても、犯人が規範的にみて被害者の目の前
にいるといえなければ、わいせつな行為に当たらないと解されるところ、本件
では、要求行為に遅れて撮影行為がされており、規範的にみて被告人がAの目
の前にいるとはいえず、わいせつな行為に当たらない、④本件は、Aを利用し
た間接正犯になっていなければ、強制わいせつ罪の正犯とはなり得ないとこ
ろ、Aは道具化しておらず、間接正犯になっていないから、強制わいせつ罪は
成立せず、せいぜい準強制わいせつ罪が成立するにとどまる、⑤原判決は本件
の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合としているが、両罪は包括
一罪である、などと指摘して、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令適用の誤りがある旨主張する。
 2 しかし、以下のとおり、所論は全て採用することができない。
 ①については、被告人は、Aに要求して、陰部等を露出した姿態をとらせ、
これらをスマートフォンで撮影させているところ、その行為は、Aを性的意味
合いの強い陰部等を露出した裸体にさせ、Aの身体を性的な対象として利用で
きる状態に置いた上、これを撮影させて記録化することで、その内容を被告人
や第三者が知り得る状態に置くものであって、被告人がAに対して撮影した動
画データを被告人に送信することも要求して撮影させており、その撮影させる
行為自体にAがこの要求に従って動画データを送信して被告人がこれを閲覧す
ることになる具体的な危険性が認められることも踏まえると、その性的侵害性
は大きく、また、本件が、当時○○歳の男性である被告人が、SNSを通じて知
り合いアプリケーションソフトを利用してやり取りをしていたという関係にす
ぎない当時13歳未満の女児であるAに対し、Aの陰部等を見たいなどというメッ
セージや男性が自慰行為をしている動画データを送信するなどする中でなされ
たものであることも踏まえると、その性的意味合いは強いというべきであるか
ら、その行為が「わいせつな行為」に当たり、強制わいせつ既遂罪が成立する
と判断した原判決に誤りはない。
 ②については、前記のとおり、原判決が、被告人がAに撮影させた動画デー
タ4点を被告人のスマートフォンに送信させてサーバコンピュータ内に記録・
保存させた行為を、強制わいせつ罪を構成する事実として認定したとは認めら
れず、Aに動画データを送信・記録させる行為に及ぶと、Aに撮影させた点を含
めて行為全体がわいせつ行為とは評価できなくなるなどというのは、所論独自
の見解であって、採用の限りではない(なお、所論指摘の裁判例は、そのよう
な趣旨を判示したものとは解されない。)。
 ③については、接触を伴わない強制わいせつ罪の成否を、接触を伴う強制わ
いせつ罪の成否と同様に考える必然性はないし、犯人が規範的にみて被害者の
面前にいるとはいえない状況であっても、本件のように、被害者に要求して、
その身体を性的な対象として利用できる状態に置き、それを記録化して被告人
や第三者が知り得る状態に置くことで、接触を伴う強制わいせつ罪と同程度の
性的侵害をもたらし得ることは明らかであるから、所論は採用できない。
 ④については、刑法176条後段の強制わいせつ罪は、被害者の承諾がある
場合も含め、13歳未満の男女にわいせつな行為をすることで成立するとこ
ろ、本件において被告人が当時8歳のAに対して行った行為がわいせつな行為
に当たることは前記のとおりであり、それ以外の要件として被害者の道具性が
要求されるとする所論は、独自の見解であって採用できない。
 ⑤については、本件において、Aに陰部等を露出した姿態をとらせてこれを
撮影させるという強制わいせつ罪に当たる行為は、Aに陰部等を露出した姿態
をとらせてこれを撮影させた上、その動画データを被告人のスマートフォン
送信させて、サーバコンピュータ内に記録・保存させるという児童ポルノ製造
罪に当たる行為に包摂されていること、被告人は当初から撮影後に動画データ
を送信することも要求しており、撮影から送信、保存・記録までがほぼ同時刻
に行われていること、一般に本件のような態様のわいせつ行為は、撮影された
画像の内容を行為者等が知り得る状態に置くことを意図して行われるものと考
えられることも踏まえると、両行為は通常伴う関係にあり、自然的観察の下で
社会的見解上1個のものであると評価することができるから、両罪を観念的競
合とした原判決に誤りがあるとはいえない(なお、所論指摘の裁判例は、いず
れも本件とは事案を異にするものである。)。

https://www.sanspo.com/article/20231228-4FMPDTIFWRLP5CKPDD5IUDTRGA/
10代の男子生徒に自身の性的な画像を送信させたとして、東京地検は28日、不同意わいせつと映像送信要求などの罪で容疑者を起訴した
・・・
地検によると起訴内容は、今月2日、交流サイト(SNS)を通じて、同校の男子生徒にわいせつ画像を送るよう求め、携帯電話で撮影、送信させたとしている。