児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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間接正犯構成による性的姿態撮影罪(青森地裁r5.11.17)

間接正犯構成による性的姿態撮影罪(青森地裁r5.11.17)
 じゃあ、児童ポルノ製造も間接正犯構成になるよね。

判例ID】
28313774
【裁判年月日等】
令和5年11月17日/青森地方裁判所刑事部/判決/令和5年(わ)120号
【事件名】
性的姿態等撮影被告事件
【裁判結果】
有罪
【裁判官】
小澤光
【出典】
D1-Law.com判例体系
【重要度】
1

■28313774
青森地方裁判所
令和5年(わ)第120号
令和05年11月17日
本籍 (省略)
住居 (住所略)
無職

平成14年(以下略)生
 上記の者に対する性的姿態等撮影被告事件について、当裁判所は、検察官藤原裕里子及び弁護人(国選)B各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、令和5年7月18日午後3時56分頃から同日午後6時25分頃までの間、(住所略)被告人方において、別紙記載のAに対し、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「C」のメッセージ機能を利用して、被告人の知り合いである暴力団組員を装い、「おめ、誰とはいわねぇけど、以前付き合ってた彼氏居るよな。」「その男がな、俺らの組合さ入っててな」「んでその男はな、金飛んだ訳よな、その際に保証人をAって名前にした訳よ。」「しらねぇじゃすまねぇはんで、こっち迷惑被ってんよ。大体総額60万ちょいなんよな。とりまどうでもいいけ、払える?」「その人じゃねえはんで、俺ら組合が迷惑してんだ。払えねぇならオメェの家さいくはんでな、●●●」「あとさ、普通にパパちゃんママちゃん頼ると思うけどやめなよ。」「その男からオメェの裸写真もらってるからちくりでもしたらSNS、まぁ学校とか友達さばらまくはんで笑」「どうしても無理なら●●●に頼りな笑」「あと、親含め外部に話したらすぐにバレるからな笑そしたらハメ撮り含め写真ネット上にばら撒く」「まぁ、周りには監視してるやついるはんで笑笑」「●●●に金払わせるのは良いけど、ついでに●●●に裸画像送れ嘘つくなよ。」「●●●からもその画像とスクショ見せてもらうからな。それが無理なら●●●の金受け取りません。自分でどうにかしろ笑」「広い画とかばれるはんで 全身と下の方も送れよ後 オナニーしてるところも送れよ笑 じゃなきゃお金受け取りません」「60万●●●から払ってもらうならついでに潮吹きの動画も送れよ笑」「あー、ここにと、●●●のほうにもな」などと記載したメッセージを送信し、その頃、青森県内のA方にいたAにこれらを閲読させるなどして、Aの身体及び名誉に危害を加える旨告知して脅迫したことにより、同意しない意思を表明することが困難な状態にさせ、同日午後6時25分頃、同所において、Aに、Aの写真撮影機能付き携帯電話機でAの乳房及び陰部等を撮影させた。
(証拠の標目)(括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の番号を示す。)
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の検察官調書(乙4、5)、警察官調書(乙2、3)
・ Aの検察官調書(甲2)、警察官調書(甲1)
・ 捜査報告書抄本(甲4)、捜査報告書(甲5、6)
(法令の適用)
罰条 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律附則2条により同法2条1項2号、1号イ(刑法176条1項1号)
刑種の選択 懲役刑を選択
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(法令の適用に関する補足説明)
1 弁護人は、本件の事実関係は争わないものの、検察官が主張する性的姿態等撮影罪の間接正犯は成立せず、被告人には強要罪が成立するにとどまると主張する。
2(1) 性的姿態等撮影罪は、間接正犯の形式では犯し得ない犯罪ではなく、その点に関する弁護人の主張は前提を欠く。
 (2) 関係証拠によれば、被告人は、Aに裸の写真を撮影させて送信させることを目的として本件犯行を行い、実際に送信された写真2枚を保存していること、Aが「C」の相手方を暴力団員であると認識して、裸の写真等を送信しなければ、Aの家まで押し掛けてきてAやその家族に暴力を振るうかもしれないなどと思っていたことから、裸の写真等を撮影したこと、Aが両親を含む外部の人に相談をしたらAの裸の画像をSNSでばらまかれると認識していたことが認められる。
  弁護人が指摘するとおり、被告人が日頃からAを畏怖させていたとは認められないものの、被告人は暴力団員を装っていたのであるから、Aは「C」のやり取りの段階ではその相手方が被告人であるとは認識しておらず、被告人とAとの従前の関係は、間接正犯の成否に影響しない。その上で、上記の各事情からすれば、Aが、周囲の人たちに相談することもできず、「C」の相手方からの報復等を恐れて自らの裸の写真を撮影せざるを得ない状況に追い込まれていたことが十分に認められるから、被告人が、Aをして自己の意思のとおりの行動をさせたことによりAの性的な部位を撮影し、その際、Aの意思は抑圧されていたと評価することができる。その他、弁護人が指摘する事情を踏まえても、上記の結論は変わらない。
3 そうすると、本件につき、間接正犯構成による性的姿態等撮影罪が成立することは明らかであり、弁護人の主張はいずれも採用することができない。