児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「送信させ」をわいせつ行為とした上で準強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合としたもの(大津地裁r5.10.26 確定)

 「送信させ」をわいせつ行為とした上で準強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合としたもの(大津地裁r5.10.26 確定)

 判示第1は、当初起訴状は、児童ポルノ製造罪のみで、訴因変更で、準強制わいせつ罪が追加されたものです。
 公訴事実の同一性がないという高裁判例が山ほどあるので、控訴して訴因変更の違法を主張すべきでした。
 さらには、「送信させた」はわいせつ行為ではないという高裁判例も幾つかあるので、そう主張すべきでした。

 大津地検で当初起訴状6/5と訴因変更請求書6/26を閲覧して確認しました。
 強制わいせつ罪と製造罪は多くの高裁判例併合罪とされているので、訴因変更許可は違法です。自然確定ですが、控訴していれば、準強制わいせつ罪が落ちますので、宣告刑はかなり下がります。準強制わいせつ罪を追起訴してきたら、観念的競合の判例を当てれば、かなり未決がもらえたでしょう。

第1〔訴因変更後の令和5年6月5日付け起訴状記載の公訴事実関係〕
  A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年7月22日頃から同年8月12日頃までの間、東京都内又はその周辺において、複数の架空人を装い、Aに対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にあることに乗じてAにわいせつな行為をしようと考え、同日、東京都内又はその周辺において、Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに、衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、

判例ID】
28313641
【裁判年月日等】
令和5年10月26日/大津地方裁判所刑事部/判決/令和5年(わ)253号/令和5年(わ)287号
【事件名】
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(変更後の訴因:準強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反)、準強制性交等被告事件
【裁判結果】
有罪
【裁判官】
谷口真紀 西脇真由子 山口美和
【出典】
D1-Law.com判例体系
【重要度】
1

■28313641
津地方裁判所
令和5年(わ)第253号/令和5年(わ)第287号
令和05年10月26日
被告人 Y
年齢 昭和53年(以下略)生
本籍 (省略)
住居 (住所略)
職業 無職
検察官 花田咲季
弁護人 松尾博美(国選)

主文
被告人を懲役8年に処する。
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1〔訴因変更後の令和5年6月5日付け起訴状記載の公訴事実関係〕
  A(氏名は別紙記載のとおり。以下「A」という。当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和4年7月22日頃から同年8月12日頃までの間、東京都内又はその周辺において、複数の架空人を装い、Aに対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にあることに乗じてAにわいせつな行為をしようと考え、同日、東京都内又はその周辺において、Aに対し、乳房及び性器を露出した姿態を撮影し、被告人が使用する携帯電話機に同静止画を送信するよう要求し、同日、滋賀県内のA方において、Aに乳房及び性器を露出させる姿態をとらせ、これをA使用の撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、同画像データ2点を、アプリケーションソフト「B」を使用して同携帯電話機から被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同データ2点をそれぞれB株式会社が管理する日本国内設置の電磁的記録媒体であるサーバコンピューター内に記録して保存し、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をするとともに、衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第2〔令和5年6月26日付け起訴状記載の公訴事実(第1ないし第3)関係〕
 1 令和4年7月22日頃から同年8月7日頃までの間、東京都内又はその周辺において複数の架空人を装い、A(当時13歳)に対し、SNSアプリケーションを用いて多数のメッセージを送信して、Aの写真が人身売買の情報を掲載するインターネット上のサイトに掲載されており、Aが人身売買を逃れるには、架空人の要求に従う必要がある旨申し向け、Aにその旨誤信及び畏怖させ、その要求を拒絶することができない抗拒不能の状態にさせた上で被告人と性交することを要求し、同日午前7時6分頃から同日午後4時20分頃までの間に、滋賀県C市内又はその周辺に駐車中の自動車内において、Aと口腔性交及び性交をし、
 2 Aが前記抗拒不能の状態にあることに乗じてさらに性交等しようと考え、同年10月9日午前6時54分頃から同日午後7時2分頃までの間に、同県D市内又はその周辺に駐車中の自動車内において、Aと口腔性交及び性交をし、同県E市(以下略)から同県D市内に至る間を走行中の自動車内において、Aと口腔性交をし、さらに、同県内の道路上に駐車中の自動車内において、Aと口腔性交し、
 3 Aが前記抗拒不能の状態にあることに乗じてさらに性交等しようと考え、同年12月4日午前7時6分頃から同日午後4時28分頃までの間に、同県D市内又はその周辺に駐車中の自動車内において、Aと口腔性交及び性交をし、
 もってそれぞれ人の抗拒不能に乗じて性交等をし
たものである。
(証拠の標目)括弧内の符号番号は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の番号を示す。
(法令の適用)
罰条
 判示第1の所為のうち
  準強制わいせつの点 令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条1項、176条前段
  児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
 判示第2の1ないし3(第2の2は包括して)の各所為
  いずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条2項、177条前段
科刑上一罪の処理
 判示第1の罪 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、重い準強制わいせつ罪の刑で処断)
累犯加重
 判示の各罪 いずれも刑法56条1項、57条(前記の前科があるので再犯の加重(ただし、判示第2の1ないし3の各罪の刑については同法14条2項の制限内))
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の3の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
刑事部
 (裁判長裁判官 谷口真紀 裁判官 西脇真由子 裁判官 山口美和)