児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

16歳未満に、裸の画像を送信させた場合の罪名

16歳未満に、裸の画像を送信させた場合の罪名
  不同意わいせつ、性的姿態撮影等処罰法違反、わいせつ目的要求の各容疑
  「画像を送らせたことに間違いありません
と弁解してしまっているが、送信させたことは、わいせつ行為ではない。(東京高判平成28年2月19日(強要被告事件 判夕1432号134)

不同意わいせつ、性的姿態撮影等処罰法違反、わいせつ目的要求の各容疑で逮捕し、発表した。「画像を送らせたことに間違いありません。男同士のノリという感じでやっただけです」と供述しているという。捜査1課によると、容疑者は今年12月2日夜、生徒と教師の社会的な地位を利用し、同校の男子生徒に性的な画像を撮影するよう要求し、携帯電話で撮影させてSNSで送らせた疑いがある。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b06d474cd88bc31843996a13bebbb3dd518bc20f

(不同意わいせつ)
第百七十六条
1 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

 わいせつとされるのは東京高裁判例では、「撮影させ」まで。

 画像要求罪は不同意わいせつ(3項)に吸収される

十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条 
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

逐条説明
4 第3項(遠隔型の処罰規定)について
対象者は、性的行為に関する判断能力を十分に備えていない者であるから、対象者に対して性的行為の要求をする行為は、そのことだけで、性的保護状態の危険を生じさせ得る行為といえる。
その上で、本条が対象者の性的自由・性的自己決定権の保護を図ろうとするものであることに鑑みれば、要求行為の対象となる行為については、当該行為が実現した場合に対象者の性的自由・性的自己決定権が侵害される行為とした上で、早期の処罰が特に要請される重大な性的自由・性的自己決定権の侵害を生じるものに限定することが相当であると考えられる。
そこで、本条第3項においては、現在の実務において強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえ(注2 、要求した行為が実現した場合に強制わいせつ罪)の成立が認められると考えられる行為を要求行為の対象とする観点から、
〇性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信する行為
〇膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信する行為
の要求行為を処罰対象行為としている(注3)
(注2)アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して、遠隔地にいた被害者(当時9歳)に対し、陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影し被告人に送信するよう要求して、被害者に、その陰部及び乳房を露出した姿態をとらせて撮影させた行為の「わいせつな行為」該当性が争われた事案(大阪高判令和3年7月14日・公刊物未登載)において大阪高裁は撮影させた部位のうち陰部性器自体は写っていないもののその周辺部であるは性的要素が強く乳房も性を象徴する典型的な部位であるまた衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は、裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって、単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし、続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も、自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を、さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり、それによって性的侵害性が強まるといえるから「わいせつな行為」にあたり、得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる」としている。。
このほか、強制わいせつ罪の成立が認められた事案として、例えば、
〇被害者(当時11歳)に対し、乳房や陰部を露出して自慰行為をする様子を動画で撮影
して被告人が使用する携帯電話機に送信するように要求し、被害者に衣服を脱がせ乳房、陰部等を露出させ陰部に指を挿入した姿態等をとらせた事案(東京地判令和4年3月10日・公刊物未登載)
がある。
(注3)遠隔型の処罰規定については、対面型の処罰規定とは異なり、加重処罰規定を設けることとしていないところ、これは、次の理由による。
すなわち、本条第3項の要求行為の対象は、前記4のとおり、現在の実務において強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例を踏まえて規定しており、要求行為の対象となる行為が実現した場合には、強制わいせつ罪が成立すると考えられる。
その上で、要求行為からその対象となる行為が実現するまで、すなわち、強制わいせつ罪が成立するに至るまでの過程において、一般的・類型的に同罪に至る危険性が高まり、加重処罰の対象とするに足りる新たな当罰性を有する行為があり得るかについては、
〇行為者からの要求を直ちに承諾して、そのまま要求された行為に及ぶ場合も、相当程度あり得ることを踏まえると、要求行為後の行為について、加重処罰の対象とするに足りるものを明確に捕捉することは困難である
と考えられる。
そのため、遠隔型の処罰規定については、加重処罰規定を設けることとはしていない。

 性的姿態撮影罪については、「撮影させる」とはなっていないので、間接正犯構成であれば可能か

(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為