仲道祐樹「児童ポルノ法の判例と理論的課題:自画撮りの問題をめぐって」警察学論集76巻12号
間接正犯構成は、未公開の高裁判決いくつかで否定されてます。鳥取県警の情報公開で出てきた。
強制わいせつ罪・不同意わいせつとの関係については、観念的競合とする高裁判決が3件(大阪、大阪、札幌)出ている。
わいせつ」とされる範囲は、東京高判平成28年2月19日(強要被告事件 判夕1432号134)が「撮影させ」までとしているのが効いていてだいたいそうなっているが、zoom生中継の準強制わいせつ事件が札幌高裁に係属した。
仲道祐樹「児童ポルノ法の判例と理論的課題:自画撮りの問題をめぐって」警察学論集
特別刑法解釈の現在と理論的課題(1) 43
Ⅵおわりに
以上をまとめると次の通りである。
まず、自画撮り送信による姿態をとらせ製造罪は、描写および製造の点について、間接正犯としての構造を有する。
刑法総論における間接正犯の一般理論からでは、背後者の正犯性を肯定することは困難であるが、姿態をとらせ製造罪の構成要件の特徴から、「姿態をとらせ」という要件を充足するような働きかけが存在する場合には、それが、児童ポルノ該当影像を送信しろという指示の性質、自画撮り行為自体の特性および児童の性的判断能力の未熟さとが相まって、被写体児童の行為が存在したとしても、これを背後者の行為と同視できるため、このような解釈から間接正犯としての姿態をとらせ製造罪を認めることが可能である。
もっとも、このような解釈による場合、「姿態をとらせ」に該当する事実として、行為者からの働きかけの存在を示すことが必要となる。
次に、被写体児童自身による提供目的製造罪や公然陳列(目的製造)罪、提供罪については、児童ポルノ法の趣旨である、児童の性的搾取・性的虐待からの保護という観点から、被写体児童自身には自身に対する性的搾取の契機を欠くため、児童ポルノ関連犯罪の主体ではないという帰結が導かれる。
最後に、罪数関係については、次のように整理される。
条例上の児童ポルノ提供要求罪は、姿態をとらせ製造罪が成立する場合には同罪に吸収され、同罪のみが成立する。
新設された映像送信要求罪と児童ポルノ提供要求罪とは観念的競合になる。
この場合において、姿態をとらせ製造罪が成立するときは、児童ポルノ提供要求罪が姿態をとらせ製造罪に吸収され、映像送信要求罪と姿態をとらせ製造罪の罪数関係のみが問題となる。
両者の関係は観念的競合になる。
自画撮り送信が不同意わいせつ罪の程度に至った場合は、姿態をとらせ製造罪と不同意わいせつ罪がともに成立し、 両者は観念的競合になる。