児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

侵入+強姦+児童ポルノ製造につき、かすがい現象を認めない裁判例(立川支部h23.11.4)

 侵入罪は重い強姦(未遂)罪にくっつけて牽連犯として、製造罪と侵入罪は併合罪として、かすがい現象を否定しています。

立川支部h23.11.4
第5
 1 H(当時11歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成20年11月10日午後5時頃,東京都東久留米市内の集合住宅の同人の自宅に,同人が帰宅後無施錠のままにしていた玄関ドアから侵入し,居間で横になっていた同人に対し,その顔面に同人が掛けていた毛布をかぶせ,その上から同人の口を手でふさぎ,「暴れるな。暴れると殺す。」と言うなどの暴行脅迫を加え,同人に強いてわいせつな行為をしようとしたが,同人が恐怖のあまり全く抵抗できない状態であることを知るや,これに乗じて同人を強姦しようと考え,同人に対し,その顔面に毛布をかぶせたまま,同人のパンツを引き下ろし,その両足を開かせるなどの暴行を加え,その反抗を抑圧し,同人と無理やり性交しようとしたが,同人の性器に陰茎を挿入する前に射精したため,強姦の目的を遂げず,
 2 前記1の日時場所において,前記Hが18歳に満たない児童であることを知りながら,同人に被告人から性器を触られている姿態をとらせ,これをデジタルビデオカメラ1台で撮影し,その動画データを同カメラに内蔵された記録媒体であるSDカードに記憶させた上,さらに,同日頃,東京都国分寺市の当時の被告人方において,USBケーブルを用いてデスクトップパソコン1式のハードディスクに前記動画データを記憶させて蔵置し,もって,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
第6 I(当時11歳)を強姦しようと考え,平成20年12月26日午後0時20分頃,前記第5の1の集合住宅の同人の自宅に,同人に引き続いて玄関ドアから侵入し,玄関内において,同人に対し,背後からその口を手でふさぎ,「騒いだら殺すぞ。」「ズボンを脱げ。」などと言って同人にズボンを脱がせた上,同人のパンツを引き下ろして下半身を裸にし,さらに,同人を子供部屋付近まで押し込んだ上,同所において,同人を床に仰向けにさせ,防災頭巾を顔にかぶせて,「絶対見るなよ。」「足を開け。」と言うなどの暴行脅迫を加え,その反抗を抑圧し,同人と無理やり性交しようとしたが,同人に足をばたつかせるなどされたため,性交を断念し,その目的を遂げず,この際,同人の着用していたパンツを奪い取ろうと考え,同人が極度に畏怖し,反抗を抑圧されているのに乗じ,同人所有の前記パンツ1枚(時価300円相当)を奪い取り,
第7
 1 J(当時12歳)を強姦しようと考え,平成21年2月13日午後5時頃,東京都小平市内の同人の自宅に,同人に引き続いて玄関ドアから侵入し,同所において,同人に対し,背後からその口を手でふさぎ,「抵抗すると殺すぞ。」などと言い,さらに「パンツを脱げ。」などと言って同人のズボンとパンツを脱がせて下半身を裸にするとともに,「寝ろ。」などと言って同人を床に仰向けにさせるなどの暴行脅迫を加え,その反抗を抑圧し,同人と無理やり性交しようとしたが,同人の性器が未成熟で陰茎を挿入できないと思われたため,性交を断念し,その目的を遂げず,
 2 前記1の日時場所において,前記Jが18歳に満たない児童であることを知りながら,同人の陰部を露出した姿態をとらせ,これを前記第5の2のカメラで撮影し,その動画データを同カメラに内蔵された記録媒体であるSDカードに記憶させた上,さらに,同日頃,前記の当時の被告人方において,USBケーブルを用いて前記第5の2のパソコンのハードディスクに前記動画データを記憶させて蔵置し,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
第11
 1 M(当時10歳)を強姦しようと考え,平成21年12月30日午後0時頃,前記第9のMの母方に無施錠の玄関ドアから侵入し,1階居間にいた前記Mに対し,仰向けにしてその顔面に座布団をかぶせ,同人のズボン及びパンツを引き下ろし,その両足を開かせるなどの暴行を加え,その反抗を抑圧し,同人と無理やり性交しようとしたが,同人の性器が未成熟で陰茎を挿入できないと思われたため,性交を断念し,その目的を遂げず,
 2 前記1の日時場所において,前記Mが18歳に満たない児童であることを知りながら,同人に被告人から性器を触られている姿態をとらせ,これを前記第5の2のカメラで撮影し,その動画データを同カメラに内蔵された記録媒体であるSDカードに記憶させた上,さらに,同日頃,前記の当時の被告人方において,USBケーブルを用いて前記第5の2のパソコンのハードディスクに前記動画データを記憶させて蔵置し,もって,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,

(罰条の適用等)
 被告人の判示第1の所為は,刑法179条,176条前段に,判示第2ないし第4の各所為は,いずれも包括して同法176条に,判示第5の1の所為のうち,住居侵入の点は,同法130条前段に,強姦未遂(強制わいせつ未遂はこれと包括)の点は,包括して同法179条,177条に,判示第5の2の所為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項,1項,2条3項2号に,判示第6の所為のうち,住居侵入の点は,刑法130条前段に,強姦未遂の点は,包括して同法179条,177条に,強盗の点は,同法236条1項に,判示第7の1の所為のうち,住居侵入の点は,同法130条前段に,強姦未遂の点は,包括して同法179条,177条に,判示第7の2の所為は,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項3号に,判示第8の所為は,刑法235条に,判示第9及び第10の各所為のうち,各住居侵入の点は,同法130条前段に,各窃盗の点は,同法235条に,判示第11の1の所為のうち,住居侵入の点は,同法130条前段に,強姦未遂の点は,包括して同法179条,177条に,判示第11の2の所為は,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項2号に,判示第12の所為は,刑法130条前段に,判示第13の所為のうち,住居侵入の点は,同法130条前段に,強姦の点は,同法177条前段に,判示第14の所為のうち,住居侵入の点は,同法130条前段に,強姦未遂の点は,同法179条,177条前段に,判示第15の所為は,同法130条前段に,それぞれ該当するところ,判示第5,第7及び第11の各1並びに判示第14の住居侵入と強姦未遂,判示第9及び第10の住居侵入と窃盗,判示第13の住居侵入と強姦との間には,いずれも手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として,判示第5,第7及び第11の各1並びに第14についてはいずれも重い強姦未遂罪の刑で,判示第9及び第10についてはいずれも重い窃盗罪の刑で,判示第13については重い強姦罪の刑で,判示第6の住居侵入と強姦未遂及び強盗との間には,それぞれ手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により結局以上を1罪として最も重い強盗罪の刑で,それぞれ処断することとする。
 なお,検察官は,判示第15の事実について,マンション敷地内への立入りをもって,住居侵入に当たるとして起訴しているが,いわゆるマンションは,居住を予定している各居室部分のほか,居住を予定していない共用部分があり,全体を一つの住居とみるのは相当でなく,全体としてみる場合は1個の建造物と解するほかない。そうすると,本件では,建造物の囲繞地への立入りということになるので,建造物侵入罪として問擬した。
 (裁判員法78条2項5号についての判断)
 判示第1の強制わいせつ未遂,判示第5の1,第6,第7の1,第11の1及び第14の各強姦未遂については,関係各証拠(判示第1・甲132,判示第5の1・乙12,判示第6・乙13,判示第7の1・乙10,判示第11の1・乙15,判示第14・甲123(ただし,不同意部分を除く。))により,「罪となるべき事実」記載のとおり,それぞれ障害未遂の事実が認められる。その他,全証拠に照らして検討したが,裁判員法78条2項5号に定められたその余の事実はない。
(没収の根拠となる事実)
 東京地方検察庁立川支部で保管中のデジタルビデオカメラ1台及びデスクトップパソコン1式は,いずれも判示第5,第7,第11の各2の児童ポルノ製造の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,刑法19条1項2号による没収対象物に当たる。
  平成23年11月4日
    東京地方裁判所立川支部刑事第2部
        裁判長裁判官  毛利晴光
           裁判官  寺澤真由美
           裁判官  杉田時基