児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 侵入して、窃盗・強制わいせつ(176条後段)・姿態をとらせて製造した事 案について、侵入罪と各罪が牽連犯になるとして、かすがい現象により科刑上 一罪とした事例(福山支部r4.10.25)

 侵入して、窃盗・強制わいせつ(176条後段)・姿態をとらせて製造した事
案について、侵入罪と各罪が牽連犯になるとして、かすがい現象により科刑上
一罪とした事例(福山支部r4.10.25)
 検察官は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪が観念的競合になると主
張したようです。
 侵入罪と強制わいせつ罪(176条後段)が牽連犯になるという最高裁判例
ありません。侵入罪と製造罪が牽連犯になるという最高裁判例もありません。

広島地方裁判所福山支部令和04年10月25日
 上記の者に対する住居侵入、窃盗、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノ
係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件につ
いて、当裁判所は、検察官清水壮一及び弁護人上野彰大各出席の上審理し、次
のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1(令和4年8月31日付け起訴状記載の公訴事実)
  令和4年5月31日午前9時ころから同日午後4時20分ころまでの間
に、広島県(以下略)C方敷地内において、同所に干されていたC外1名が所
有するブラジャー1枚等6点(時価合計約4000円相当)を窃取し、
第2(令和4年7月29日付け起訴状記載の公訴事実)
 1 正当な理由がないのに、令和4年6月16日午前1時43分ころ、別紙
記載の犯行場所に無施錠の玄関から侵入し、
 2 そのころから同日午前2時03分ころまでの間に、同所において、
  (1) 別紙記載のBが所有するブラジャー1枚(時価約500円相当)
を窃取し、
  (2) 別紙記載のAが13歳未満の者であることを知りながら、同人に
対し、その上衣をまくり上げて胸部を露出して自己が使用する撮影機能付き携
帯電話機で撮影し、もって、13歳未満の者に対してわいせつな行為をし、
  (3) 別紙記載のAが18歳に満たない児童であることを知りながら、
同人の上衣をまくり上げて胸部を露出する姿態をとらせ、これを自己が使用す
る撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その静止画データ1点を携帯電話機本体
の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって、衣服の全部又は一部を着けない
児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されている
ものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識するこ
とができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造
したものである。
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法235条に該当し、判示第2の1の所為は同
法130条前段に該当し、判示第2の2(1)の所為は同法235条に該当
し、判示第2の2(2)の所為は同法176条後段に該当し、判示第2の2
(3)の所為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童
の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号に該当する。
 判示第2の1と判示第2の2(1)、(2)及び(3)との間にはそれぞれ
手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により結局以上を1
罪として最も重い判示第2の2(2)の罪の刑で処断する(判示第2の2
(2)及び(3)の罪数評価について、検察官は、観念的競合(刑法54条1
項前段)と主張するが、判示第2の2(2)の本質的な部分は上衣をまくりあ
げて胸部を露出することにあるのに対し、判示第2の2(3)の本質的な部分
は撮影行為にあり、社会的見解上一個のものと評価することはできないから、
別罪と認定した。)。
 判示第1の罪について懲役刑を選択する。
 以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により
犯情の重い判示第2の2(2)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被
告人を懲役2年に処する。
 情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その
刑の執行を猶予する。
 訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させな
い。
 (裁判官 松田克之)