児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

侵入罪をかすがいとして、侵入わいせつ+侵入窃盗が、科刑上一罪とされた事例(甲府地裁R05.4.19)


 判示第8と第10が、侵入罪をかすがいとして、侵入わいせつ+侵入窃盗が、科刑上一罪とされています。
 侵入目的が「わいせつ目的・窃盗目的」ではなく「正当な理由がないのに」だと、牽連関係がわかりません。
 準強制わいせつ罪と侵入罪を牽連犯とする最高裁判例はありません。東京高裁h11.7.26「原判決は,証拠の評価を誤り事実を誤認したといわざるを得ない。そして,右準強制わいせつ罪は住居侵入罪と牽連犯として科刑上一罪の関係にあり,一個の刑を言い渡すべきものであるから,右誤りが判決に影響することも明らかである。」があるくらい。
 侵入・強姦については、大審院m440523とか大審院s070512が牽連犯としていますが、強制わいせつ罪の特別類型である強姦罪が、侵入と牽連犯になるからといって、強制わいせつ罪と侵入罪とが牽連犯になるとは言えないでしょう。


甲府地方裁判所
令和5年4月19日刑事部判決
       判   決
 上記の者に対する住居侵入、準強制性交等、準強制わいせつ、窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官竹村真弓及び私選弁護人高部裕史各出席の上審理し、次のとおり判決する。
       理   由

(罪となるべき事実)

第8(令和4年7月15日付け起訴状記載の公訴事実)
 正当な理由がないのに、令和2年11月29日午前2時頃から同日午前3時33分頃までの間、別紙Bが宿泊する前記民宿■2階客室■に侵入し、その頃、同所において、布団に横たわっていた同人(当時21歳)が、侵入してきた被告人に気付き恐怖のため抗拒不能状態であるのを、睡眠中のため同状態であるものと誤信し、前記Bの同状態に乗じて、同人の陰部を直接指で触り、その状況を持っていたスマートフォンで動画撮影するなどし、もって人の抗拒不能状態に乗じてわいせつな行為をし、さらに、その頃、同所において、同人が着用していた同人所有のショーツ1枚(時価約1000円相当)を窃取し、
第10(令和4年6月29日付け起訴状記載の公訴事実)
 正当な理由がないのに、令和3年8月29日午前4時19分頃から同日午前4時55分頃までの間、別紙Aらが宿泊する同郡α■(省略)■所在の■(省略)■2階客室■に侵入し、その頃、同所において、同人(当時33歳)が睡眠中のため抗拒不能状態であることに乗じ、同人の陰部を直接指で触り、その状況を持っていたスマートフォンで動画撮影するなどし、もって人の抗拒不能状態に乗じてわいせつな行為をし、さらに、その頃、同所において、同人が着用していた同人所有のショーツ1枚(時価約1000円相当)を窃取した。
(法令の適用)
罰条
判示第1ないし第10の各所為のうち
住居侵入の点 いずれも刑法130条前段
判示第1ないし第5及び第8ないし第10の各所為のうち
準強制わいせつの点(判示第3については各被害者ごとに)
いずれも刑法178条1項、176条前段
判示第6及び第7の各所為のうち
準強制性交等の点 いずれも刑法178条2項、177条前段
判示第8及び第10の各所為のうち
窃盗の点 いずれも刑法235条
科刑上一罪の処理
判示第1ないし第10につきそれぞれ刑法54条1項後段、10条(判示第1、第2、第4、第5及び第9につき各住居侵入と各準強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、1罪として重い準強制わいせつの罪の刑で各処断、判示第3につき住居侵入とH及びIに対する各準強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いIに対する準強制わいせつの罪の刑で処断、判示第6及び第7につき各住居侵入と各準強制性交等との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、1罪として重い準強制性交等の罪の刑で各処断、判示第8及び第10につき各住居侵入と各準強制わいせつ及び各窃盗との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として最も重い準強制わいせつの罪の刑で各処断)
併合罪の加重
刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第6の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入
刑法21条