児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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拘禁刑を創設する理由

刑法等の一部を改正する法律案逐条説明 法務省
〔第2条関係〕
【刑法】
○ 第9条(刑の種類)
【説明】
1 改正内容
本条は,刑の種類を規定するものであるところ,本条の改正は,懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設するため,「懲役」及び「禁錮」を「拘禁刑」に改めるものである。
2 拘禁刑を創設する理由
(1) 「刑罰」とは,講学上,一般に,応報,すなわち過去の犯罪行為に対する報いとして科すことを前提としながら,犯人の処罰によって一般社会に警鐘を鳴らして将来における犯罪を予防しようとする一般予防,及び特定の犯人が将来再び犯罪に陥ることを予防しようとする特別予防を目的とするものであるとされている(注1)(注2)。
(2) 懲役は,刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり,禁錮は,刑事施設に拘置する刑罰である。
懲役における作業は,応報,すなわち過去の犯罪行為に対する報いとして課されるという性格を持つとともに,一般予防の目的を有するほか,改善更生及び再犯防止の観点からも重要な処遇方法として,特別予防の目的を有するものである。
もっとも,我が国の現実の行刑の場面においては,刑事施設において受刑者に作業を行わせることは,受刑者の改善更生や円滑な社会復帰を図る上で重要な機能を有する処遇方策として,基本的かつ重要な地位を占めてきたとされており(注3),このような作業の重要性に鑑み,平成17年に成立した刑事収容施設法においては,「作業は,できる限り,受刑者の勤労意欲を高め,これに職業上有用な知識及び技術を習得させるように実施するものとする。」(刑事収容施設法第94条第1項)と規定され,そのことが法制的にも明確にされている。
このような経緯に鑑みれば,作業については,その懲罰的・苦役的な要素,すなわち過去の犯罪行為に対する報いという性格は希薄化してきている一方で,改善更生や再犯防止を図る目的で課される処遇としての位置付けが増してきているといえる。
さらに,近年,刑罰の目的の一つである受刑者の改善更生及び再犯防止の重要性についての認識が更に高まってきており(注4),作業に対し,出所後の就労の確保等に資する機能を求める要請が更に高まっていることを踏まえると,今後も,このような傾向をより推進することが刑事政策の観点からも望ましいといえる(第12条の解説参照)。
そのため,拘禁刑が持つ過去の犯罪行為に対する報いとしての性格,すなわち刑罰としての性格を有する部分は,刑事施設への拘置に限ることとし,作業から刑罰としての性格を取り除き,作業を,刑事収容施設法で規定されている受刑者への改善指導や教科指導と同様(注5)に,その改善更生や再犯防止のために課される処遇として位置付けることが相当であると考えられる(注6)(注7)。
そうすると,懲役と禁錮を区別する必要がなくなることから,懲役及び禁錮
を廃止して拘禁刑を創設するものである。