児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪(176条後段)とその際の姿態をとらせて製造罪を混然一体と記載した公訴事実について、訴因不特定ではないとしたもの(大阪高裁r5.9.28)
 観念的競合でいいみたいですよ。
 撮影までなら強制わいせつ罪(176条後段)だが、媒体記録までだと強制わいせつ罪(176条後段)を超えていて、、児童ポルノ製造罪になるとか言って併合罪にされていました。

公訴事実=原判決罪となるべき事実
 被告人は、
A(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和5年10月7日午後7時19分頃から同日午後8時30分頃までの間に、別紙記載の場所において、同人に対し、その陰部を露出させるよう申し向けるとともに、玩具を同人の露出した女性器にあてがうよう申し向けて、同人をして、下半身の下着を含む着衣を脱いで陰部を露出させた上、その陰部近くの同人の両太ももに前記玩具を挟む姿態をとらせ、これをスマートフォンの写真撮影機能を用いて撮影し、その画像データ5点を同スマートフォン本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した

阪高裁r5.9.28
3 訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第1)について
 (1) 論旨は、②の事実について、強制わいせつ罪と本法7条4項の児童ポルノ製造罪は併合罪であるのに、これを一つの公訴事実として起訴しているのは、公訴事実の単一性を欠き、公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるから公訴棄却すべきであるのに、両罪につき有罪とした原判決には訴訟手続の法令違反がある、という。その主張内容及び控訴趣意書の控訴理由第1の表題中に「訴因不特定」と記載されていることからすると、所論のいう「その規定に違反した」とは、起訴状の公訴事実における訴因の特定を求める刑訴法256条3項違反をいう趣旨と解される。
   この点、②の事実に係る起訴状(3において、以下「本件起訴状」という。)の公訴事実には、被告人が、当時12歳の被害児童が13歳未満であることを知りながら、同児にわいせつな行為をしようと考え、特定の日時及び場所において、同児に対し、下衣及び下着を脱ぐよう言って同児にそれらを脱がせて陰部を露出させるとともに、同児童の両太ももに玩具を挟む姿態をとらせ、これをスマートフォンの写真撮影機能を用いて撮影し、その画像データ3点を同スマートフォン本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した旨が記載されている。また、本件起訴状には、罪名及び罰条として、強制わいせつ及び刑法176条後段と本法違反及び本法7条4項、2条3項3号が記載されている。
これらの記載によれば、検察官が、強制わいせつの事実及び本法7条4項の児童ポルノ製造の事実をいずれも起訴する趣旨であることが明らかである上、
このうち、強制わいせつについては、日時及び場所に加えて、被害児童に指示して陰部を露出させ、両太ももに玩具を挟む姿態をとらせ、これを写真撮影したという方法によって訴因が特定されているし、
児童ポルノ製造についても、日時及び場所に加えて、被害児童に指示して上記のような姿態をとらせ、これをスマートフォンで撮影して、その内蔵記録装置に記録させて保存したという方法によって訴因が特定されている。
すなわち、いずれの犯罪事実に関しても、刑訴法256条3項が求める訴因の特定はなされているのであり、それらが起訴状において一つの公訴事実として記載されているからといって、訴因の特定に欠けるというものではない。したがって、これら両事実の公訴提起の手続は刑訴法256条3項に違反するものではなく、所論のいう訴訟手続の法令違反はない。