「想定される監護者性交等の犯行態様の中で,本件をことさらに重く処罰すべき事情も存在しない。」ということで法定刑の下限
【判例番号】 L07350443
監護者性交等被告事件
【事件番号】 長崎地方裁判所判決
【判決日付】 平成30年5月16日
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載主 文
被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理 由
(犯罪事実)
被告人は,平成29年8月当時,内縁の妻Bの娘であるC(当時16歳)と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護していた者であるが,Cが18歳未満の者であることを知りながら,同人と性交をしようと考え,平成29年8月25日から同月26日までの間に,福岡市博多区(以下略)□□603号室において,Cを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をした。
(証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)
被告人の公判供述
被告人の各警察官調書(乙2,3)
Cの検察官調書抄本(甲1)
Bの各警察官調書(甲6,7)及び検察官調書(甲9)
捜査報告書(甲2)
各写真撮影報告書(甲4,5)
戸籍全部事項証明書(甲10)
(法令の適用)
罰条
被告人の判示行為は,刑法179条2項,177条前段に該当する。
宣告刑の決定
所定刑期の範囲内で,被告人を懲役5年に処する。
未決勾留日数の算入
刑法21条を適用して未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
訴訟費用の処理
訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
犯行態様は,被告人がBやCらとホテルに宿泊した際,隣のベッドにBらが寝ているにもかかわらず,同じベッドに寝ていたCと性交するというものであり,大胆かつ悪質である。しかも,被告人は避妊措置をとっておらず,その点でも非難は免れない。Cは,すぐ近くに実母であるBらが寝ている中で性交をするという異常な状況に置かれており,本件犯行により受けた精神的苦痛は非常に大きく,また,肉体的苦痛も軽視できない。犯行の動機も,自身の性欲を解消するとともに,Cの実母であるBらが横で寝ている状態でCと性行為に及ぶスリルを感じるためという身勝手極まりないもので,特に酌むべき事情はない。
以上によれば,被告人の刑事責任は重く,酌量減軽を行うべき事情は見当たらないが,他方で,想定される監護者性交等の犯行態様の中で,本件をことさらに重く処罰すべき事情も存在しない。
そして,被告人が公判廷において事実を認め,反省の弁を述べていること,Cとその家族に二度とかかわらない旨誓約していること,被告人に前科がないこと等の被告人に有利な事情が認められるので,それらの事情も考慮し,主文のとおりの刑に処するのが相当と判断した。
(検察官大西杏理,国選弁護人中田昌夫各出席)
(求刑-懲役6年)
平成30年5月17日
長崎地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小松本卓
裁判官 堀田佐紀
裁判官 佐野東吾