児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

監護者性交罪について「被告人は、父親の援助の下、被害者の母親との合意に基づいて損害賠償金として300万円を支払っており、このことは、被告人に有利な事情として斟酌されるが、性犯罪の性質上、被害者の苦痛がどの程度和らいだといえるか、すなわち、宥恕の有無は重要な考慮要素になるところ、親権者である被害者の母親は宥恕の意思を表明しているわけではないから、この事情によっても、被告人の刑を大きく減じることはできない。」という判示(鹿児島地裁H30.8.7)

監護者性交罪について「被告人は、父親の援助の下、被害者の母親との合意に基づいて損害賠償金として300万円を支払っており、このことは、被告人に有利な事情として斟酌されるが、性犯罪の性質上、被害者の苦痛がどの程度和らいだといえるか、すなわち、宥恕の有無は重要な考慮要素になるところ、親権者である被害者の母親は宥恕の意思を表明しているわけではないから、この事情によっても、被告人の刑を大きく減じることはできない。」という判示(鹿児島地裁H30.8.7)
 児童淫行罪と同様、訴因外の過去の性交が考慮されています。そこなんとか防御できないかなあ。
 

判例ID】 28263953
【裁判年月日等】 平成30年8月7日/鹿児島地方裁判所刑事部/判決/平成30年(わ)75号
【事件名】 監護者性交等被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 岩田光生 恒光直樹 西木文香
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 -


■28263953
鹿児島地方裁判所
平成30年(わ)第75号
平成30年08月07日
被告人 A
 上記の者に対する監護者性交等被告事件について、当裁判所は、検察官渡邉かおり及び弁護人寺田玲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役5年6月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、当時の内縁の妻の娘である被害者B(当時15歳)と同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護していた者であるが、同人が18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交をしようと考え、平成29年11月5日頃、鹿児島県内において、前記被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をしたものである。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法179条2項、177条前段に該当するので、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役5年6月に処し、刑法21条を適用して未決勾留日数中20日をその刑に算入し、訴訟費用は、刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 被告人は、かつての内妻及びその娘の被害者らと、被害者が小学校低学年の頃から同居し、生活費の一部を負担するなどして被害者の監護、養育を行っていたものである。こうした状況下において、被告人は被害者に対する性的欲求を募らせるようになり、他方、被害者は被告人に逆らえないと感じ、嫌われないよう振る舞っていた。被告人は、このような被害者の気持ちに配慮せず、明確に嫌がっていないから同意しているなどと安易に考えて本件犯行に及んだ。監護者としての影響力に乗じた卑劣な犯行であり、自己中心的な動機に酌量の余地はない。加えて、被告人は、被害者が小学6年生であった頃から被害者にわいせつな行為を行うようになり、被害者が中学1年生であった頃から3年以上にわたって被害者と性交を繰り返す中で本件犯行に及んでおり、本件犯行は、常習的犯行として態様悪質といえる。被害者の受けた精神的苦痛は甚だしく、その日常生活に今もなお深刻な影響を与えている。被害者や、その母親が被告人の厳重処罰を求めているのは十分理解できる。
 他方、被告人は、父親の援助の下、被害者の母親との合意に基づいて損害賠償金として300万円を支払っており、このことは、被告人に有利な事情として斟酌されるが、性犯罪の性質上、被害者の苦痛がどの程度和らいだといえるか、すなわち、宥恕の有無は重要な考慮要素になるところ、親権者である被害者の母親は宥恕の意思を表明しているわけではないから、この事情によっても、被告人の刑を大きく減じることはできない。
 以上によれば、被告人が本件犯行を認め、公判廷において被告人なりの反省の弁を口にしていること、被告人には罰金前科のほかに前科がないこと、被告人の父や妻が被告人を支援していく旨述べていることなど、その余の被告人に有利な事情を併せ考慮しても、被告人の刑事責任は非常に重く、酌量減軽をして法定刑の下限を下回る刑を言い渡すことは相当ではなく、主文の刑が相当と判断した。
(求刑 懲役6年)
刑事部
 (裁判長裁判官 岩田光生 裁判官 恒光直樹 裁判官 西木文香)