児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

最近量刑理由が、量刑DBの事例との比較だよなあ。(水戸地裁H30.4.27)

 
 相場観ないのかなあ。

       主   文

被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中260日をその刑に算入する。

(量刑の理由)
1 まず,犯情について検討する。 
 被告人は,いずれの犯行(以下,判示第1の犯行を「X事件」,判示第2の犯行を「Y事件」,判示第3の犯行を「Z事件」という。)でも,殴る蹴るなどの強度の暴行はしていないが,被害者の体を手で押して路上に転倒させており,特にY事件,Z事件では,自転車で走行中の被害者にこの暴行を加えている。暴行の態様は,転倒の仕方によっては重大な傷害を負わせかねない,危険なものである。また,Y事件では,犯行日以外にも被害者を待ち伏せしていたものであり,犯意の強さが表れている。
 Y事件,Z事件の被害者2名が負傷している。また,突然被害に遭った被害者らの精神的苦痛も軽いものではない。
 犯行当時の被告人は,仕事上,家庭上のストレスを抱えていたが,被害者らを性的欲求のはけ口とすることを正当化する事情とは認められない。本件の経緯,動機に酌量の余地はない。
 もっとも,被告人がX事件,Y事件で行ったわいせつ行為の内容は,頬にキスをする,着衣の上から乳房を揉むなどというものであり,行為の内容や対象部位からすると,わいせつ行為の程度は後記同種事案の中では比較的軽いといえる。また,Z事件では,わいせつ行為をするに至っていない。
 以上の事情に照らせば,本件は,同種事案(前科のない被告人が単独で犯した路上における強制わいせつ致傷で,わいせつ行為は既遂に至り,凶器を使用せず,被害者が負ったけがの加療期間等が2週間以内であり,かつ,被害者は,13歳以上であり,被告人との面識がなく,落ち度がない事案のうち,処断罪を含め同一または同種の罪を2~4件伴うもの)の中で,やや軽い部類に属する。
2 次に,刑を調整する要素としての一般情状を検討する。
 Y事件,Z事件の被害者や保護者は厳罰を希望しており,X事件で被告人が被害者に30万円を支払い,示談が成立している事実を過度に重視することはできない。被告人は,断続的ではあるが3回も犯行を繰り返しており,相応の常習性が認められる。被告人は,被告人なりに反省の態度を示しているが,その供述内容からすると,自らが犯した罪と正面から向き合うことができているとは認められない。
3 以上の犯情,一般情状の評価を踏まえ,同種事案における量刑傾向も考慮すると,被告人を執行猶予とすることはできず,主文の実刑が相当である。
(量刑意見 検察官:懲役4年6月 弁護人:懲役3年執行猶予)
平成30年5月11日
水戸地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小笠原義泰 裁判官 河野一郎 裁判官 安井亜季