児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童買春罪・強姦罪・強制わいせつ罪・姿態をとらせて製造罪で執行猶予(水戸地裁h28.9.12)

 昔から言ってますけど、後段の性犯罪に児童買春罪を付けると、被害者の帰責性が訴因から明らかになるので、一番軽い部類になってしまいます。

水戸地方裁判所
平成28年9月12日刑事部判決
       主   文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 ■(■年■月■日生,当時11歳)が13歳に満たない児童であることを知りながら,
1 平成27年10月4日午後2時10分頃から同日午後4時43分頃までの間に,茨城県ひたちなか市大字α×××番地付近駐車場に駐車中の自動車内において,■に対し対償としてiPod touch(ポータブルオーディオプレーヤー)1台を供与して,■に自己の性器を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をするとともに,13歳未満の女子に対しわいせつな行為をし,
2 前記日時場所において,■に,自己の性器を口淫させる姿態及び■の性器及び胸部を露出させる姿態をとらせ,これを自己が使用するカメラ機能付きのiPhone(スマートフォン)で静止画及び動画として撮影し,その各データを前記スマートフォンの内蔵記録装置に記録させた上,平成27年10月12日頃,茨城県鹿嶋市β×丁目×番地×の当時の被告人方において,前記静止画データ27点及び前記動画データ1点を,前記内蔵記録装置からパーソナルコンピュータの内蔵記録装置に記録して保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し、児童ポルノを製造し,
3 平成27年10月12日午前10時8分頃から同日午後4時24分頃までの間に,茨城県ひたちなか市大字γ××××番地所在のホテル「Z2」△△△号室において,■に対し性交の対償としてiPod touch1台を供与して,■と性交し,もって児童買春をするとともに,13歳未満の女子を姦淫し,
第2 ■(■年■月■日生,当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成27年11月3日午前11時13分頃から同日午後3時5分頃までの間に,茨城県ひたちなか市大字δ××××番地所在のホテル「Z3」▽▽▽号室において,■に対し対償として現金を供与する約束をして,自己の性的好奇心を満たす目的で,■に自己の性器を触らせ,もって児童買春をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
1 罰条
判示第1の1の行為
児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
強制わいせつの点 刑法176条後段
判示第1の2の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,3号
判示第1の3の行為
児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
強姦の点 刑法177条後段
判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
2 科刑上一罪の処理
判示第1の1 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので,1罪として重い強制わいせつ罪の刑で処断)
判示第1の3 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので,1罪として重い強姦罪の刑で処断)
3 刑種の選択
判示第1の2,第2の各罪
いずれも懲役刑を選択
4 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の3の罪の刑に法定の加重)
5 執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 量刑の中心となる判示第1の3の強姦・児童買春は,インターネット(SNS)を通じて知り合った女児(以下「A」という。)に対し,Aが欲しがっていたiPod touchを与え,それと引替えに性交に応じさせたというものであり,僅か11歳の女児を買春した悪質な犯行である。Aの判断能力の未熟さに付け込んだ犯行であるから,Aが性交渉に関する願望等の書き込みをしていたことやAの本件に関する姿勢自体は,量刑上重視できない。 
 さらに,被告人は,Aに対する強制わいせつ・児童買春,児童ポルノ製造や,13歳の女児(以下「B」という。)に対する児童買春も行っている。
 しかし,いずれの犯行も,暴行脅迫等を用いたり,被害者に対する立場を利用したりしたものではなく,AやBに対する働き掛けも強くない。
 以上の点を考慮すると,本件は,同種事案(単独で犯した13歳未満の女子に対する強姦)の中では,軽い部類に属する。そして,Aとの間では,損害賠償金204万27円を支払うことで示談が成立し,Aと保護者は被告人を許している。また,Bとの間では,損害賠償金30万円を支払うことで示談が成立し,Bと保護者は被告人に対する厳しい刑事処分を求めないとの意見を表明している。さらに,被告人が,犯行を認め,性依存症者の自助グループに参加するなど,被告人なりに反省の態度を示していること,被告人の父親が今後の監督を約束していること,前科がないことなども認められるので,刑の執行を猶予するのが相当である。
(量刑意見 検察官:懲役4年 弁護人:執行猶予)
平成28年9月15日
水戸地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小笠原義泰 裁判官 長島銀哉 裁判官 瀧田佳代