口淫させる行為については、強制わいせつ罪の時代よりは重くなりました。
上記の者に対する準強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官宮上泰明及び弁護人渡部美由紀(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
理由(犯罪事実)
被告人は,平成29年7月19日午前8時25分頃から同日午前11時8分頃までの間に,市●●●において,かねて顔見知りのAが自動車を運転して仕事に向かう姿を発見するや,同人が知的障害者であり,被告人が指示すれば,それを拒み得ない心理状態になることに乗じて,前記Aを●●●被告人方に連れ込んで性交しようと考え,前記Aに同車から降りるよう命じ,同人が所持していた携帯電話機を取り上げた上で,同車から降車した同人に,同棟最西端に設置された階段を上り前記被告人方に行くよう命じ,階段を上る前記Aの後方に付いて更に同様に命じるなどして,同人を前記被告人方に連れ込み,同所において,前記Aに口腔性交に応じるよう指示し,被告人の指示を拒み得ない心理状態にある前記Aの口腔内に自己の陰茎を入れ,もって同人の抗拒不能に乗じて口腔性交をした。
(証拠)
なお,弁護人は,判示事実は間違いないとする一方で,本件は被害者の知的障害に付け込んで行われた犯行ではない旨主張するので,念のため被告人の故意について検討する。
被告人は,その公判供述によれば,被害者に知的障害があることを知っており,正しい判断に基づけば口腔性交に応じないことも分かっていたというのであるから,被告人が被害者の抗拒不能に乗じて本件犯行に及んだことは明らかで,本件の故意も認められる。
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法178条2項,177条に該当するところ,犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
被告人は,被害者に知的障害があり,性的行為に関して正常な判断ができないことを知りながら,それに乗じて,携帯電話機を取り上げたり,後方から階段を上ったりするなどして,被害者を自宅に連れ込み,全裸にさせるなどした上で口腔性交をさせているのであって,犯行態様は卑劣で悪質である。被害者は,本件により甚大な精神的苦痛を受けており,厳しい処罰感情を有しているのも当然である。
以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきであり,今般の法改正により口腔性交が性交と同様の重い類型の犯罪として処罰されることになったことも踏まえると,相当期間の実刑は免れない。
その上で,被告人が,本件犯行を認めて示談の申入れをするなど,反省の態度を示していること,罰金前科以外の前科がないこと,被告人の姉がきょうだいによる監督を約束していることなどの事情も考慮して,主文の刑を定めた。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑―懲役5年)
甲府地方裁判所刑事部
(裁判長裁判官 丸山哲巳 裁判官 望月千広 裁判官 種村仁志)