児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被害者のスカートを捲り上げてハーフパンツ越しに被害者の臀部を撫でるように触った行為が,刑法176条所定のわいせつ行為に該当すると認めた事例(仙台高裁H25.9.19)

高等裁判所刑事裁判速報集H25
判決要旨
関係、証拠によれば,被告人は,性欲を満足させるなどの性的意図の下に,女性の意に反してその身体に対して有形力を行使して,少なくとも女性の臀部を触ろうと考え,自動車を運転して徘徊するうち,被害者が通り掛かるのに気付き,先回りして待ち伏せし,被害者がやってきたのを見計らい,降車して小走りで追い掛け,原判示第5の日時・場所において,いきなり被害者の背後から両腕を回して抱き付いて引き寄せ,悲鳴を上げるとともに体を左右に揺すって振りほどこうとする被害者の上半身を左手で押さえ付けて,被害者のスカートを右手で捲り上げ,被害者のハーフパンツ越しに被害者の智部を右手で撫でるように触った上,さらに,直接磐部を触ろうとして被害者のハーフパンツを脱がそうとしたものの,被害者が振りほどいて逃げようとしたことから,被害者のスカートの裾を両手で掴み,これを手前に引っ張り上げたため,被害者は地面に右横臥様にうつぶせに倒れて原判示のとおり負傷したことが認められ,被告人も,原審罪状認否や被告人質問で,被告人の前記行為や同行為に出た動機については基本的に争っていない。
以上のような事実関係に徴すれば,被告人の被害者に対する一連の有形力の行使は,女性の意に反してわいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する態様・程度のものとして,刑法176条所定の暴行に該当することはいうまでもなく,被告人が被害者に対する強制わいせつの故意を有していたことも明らかである。また,被告人において,左手で押さえ付けて自己の体に引き寄せたままの被害者のスカートを右手で捲り上げて,ハーフパンツ越しに腎部を右手で撫でるように触った行為は,触った部位や態様等に照らしても,被害者の性的自由を不当に侵害するとともに,普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものであって,刑法176条所定のわいせつ行為に該当するといわなければならず,(中略)被告人について,原判示第5のとおりの強制わいせつ致傷罪が成立することは優に肯認するととができる(ちなみに,たとえ,被害者の啓部を触った行為が未だわいせつ行為には該当しないとしても強制わいせつ罪の実行の着手があり,かっ,被害者の傷害も強制わいせつの手段たる暴行により生じたものである以上,強制わいせつ致傷罪が成立することに変わりはない。)
解説
着衣の上から臀部を撫で回す行為がわいせつ行為に該当するかについては,これを否定する名古屋地判昭和48年9月28日(判例時報736号110頁)と,肯定する東京高判平成13年9月18日(東京高等裁判所判決時報(刑事) 52巻54),名古屋高判平成15年6月2日(判例時報1834号161頁)などがあり結論が分かれている。いずれにしても,前記名古屋高判についての評釈が,「いかなる状況,態様においても「わいせつ行為」に該当するとまではいえないことに注意する必要がある」と述べているように(研修668号91頁),個々の事案ごとに判断する必要がある。本件は,裁判所が,被告人の行為は,判示態様からすれば「わいせつ行為」 に該当すると判断した事例として,参考になると思われる。