児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

外れない「かすがい」

 併合罪を主張した方が被告人に有利になることもあります。
 それを排斥するために、判決文は「観念的競合」とか「包括一罪」とかを乱発して、これが判例になる。児童ポルノ罪単体の場合は併合罪だという点は、包括一罪の高裁判決があるので、判例違反になっています。
 非わいせつの3号児童ポルノ提供の方が、わいせつな1号児童ポルノ提供よりも重くなります。誰も望んでいないのに軽い方に転がる。
 児童ポルノ規制派に、こういうことがわかる人がいないので、奥村と高裁とのやりとりで、だんだん処断刑期が下がっていきます。デフレスパイラル現象。

東京高裁H20.8.13
 1 控訴理由第1の訴訟手続の法令違反について
(1)原審において,下記アの公訴事実から同イ及びウの事実へ順次訴因変更が行われたところ,原判決は,犯罪事実第3として,同ウのとおりの事実を認定した(事実はいずれも概要である。)。
 ア 被告人は,前後11回にわたり,3名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−R合計11枚及びわいせつ図画であるDVD−R合計25枚を不特定又は多数の者に販売して提供した。
 イ 被告人は,前後16回にわたり,4名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−R合計21枚及びわいせつ図画であるDVD−R合計67枚を不特定又は多数の者に販売して提供した。
 ウ 被告人は,
 (ア) 前後16回にわたり,4名の者に対し,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−R合計21枚及びわいせつ図画であるDVD−R合計67枚を不特定又は多数の者に販売して提供し
 (イ) 自宅において,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−R合計20枚及びわいせつ図画であるDVD−R合計136枚を不特定若しくは多数の者に提供又は販売する目的で所持した。
(2)所論は,次の点を挙げて,原判決の罪数判断に誤りがあり,上記訴因変更は違法であるという。?わいせつ図画罪と児童ポルノ罪は観念的競合となるが,児童ポルノ罪を伴う場合には,わいせつ図画罪は包括一罪とならず,かすがい現象を認めない。?児童ポルノ罪の保護法益がもっぱら個人的法益であることに照らせば,複数の児童ポルノ相互の関係は併合罪である。?複数の児童ポルノ罪を併合罪とした裁判例があるのに一罪にしたことは,法適用における不合理な差別であるから,原判決の法令適用には憲法14条違反がある。?児童ポルノ罪については,その個人的法益性を重視すると,一回性の売買や特定少数に対する売買や無償譲渡もわいせつ図画以上の当罰性を有するから,販売イコール包括一罪とすることは許されない。?後記最高裁昭和39年決定は,児童ポルノ罪等他罪が観念的競合となっている場合については何も判断していない。?数回のわいせつ図画販売を包括一罪とする判例は変更されるべきである。?児童ポルノ罪を何回行ってもわいせつ図画罪が同時に訴追されていれば,わいせつ図画罪で架橋されて結局一罪となるという理論は許されない。?原判決の罪数処理では,わいせつでない場合の方が児童の被害は軽く,社会的法益の侵害も小さいのに,罪数面では重くなり不都合である。
(3)複数のわいせつ図画販売が包括一罪であること,わいせつ図画販売と販売目的所持が包括一罪であることはいずれも最高裁判例のとおりである(前者について最高裁昭和39年4月30日第一小法廷決定・裁判集刑事151号133頁,後者について最高裁昭和40年12月23日第一小法廷決定・裁判集刑事157号495頁)。なお,被告人は,自宅において児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−Rとわいせつ図画であるDVD−Rを合計二十数種類製造した上,それらのDVD−Rを宅配等の方法により不特定多数の者に提供・販売し,同様の提供・販売を行う目的でそれらのDVD−Rを自宅において所持していたのであり,本件には上記最高裁昭和40年決定の趣旨が及ぶものと解される。
 また,児童ポルノでありわいせつ図画であるDVD−Rの不特定多数の者に対する提供・販売は,児童ポルノ提供とわいせつ図画販売との観念的競合であり,同様のDVD−Rの不特定多数の者に対する提供・販売目的の所持は,児童ポルノ提供目的所持とわいせつ図画販売目的所持との観念的競合である。
 したがって,これらを包括一罪として訴因変更を許可した原審の手続に違法はない。所論は,結局のところ,前記最高裁判例に反するものというべきであり採用できない。

 「架橋」って懐かしいですね。手形法の裏書の連続とかで出てきましたね。