財産的被害を重視するなら、2項詐欺罪で立件すべきですね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111225-00000508-san-soci
【衝撃事件の核心】電気使用量を量る電気メーターに細工をし、関西電力の電気料金徴収業務を妨害したとして、飲食店経営会社社長ら2人が、偽計業務妨害容疑で大阪府警に逮捕された。飲食店経営会社社長は、人気ラーメンチェーン店「ラーメンむさし」などの実質的経営者で、関電によると、確認されただけで飲食店などでの“不正節電”額は、7年間で6千万円以上にのぼるという。「経費を浮かせたかった」という思いから、手を染めたその巧妙な手口とは…。
マジックホン事件とか、裁判例がありますが、「累犯前科 省略」となっていて、累犯前科があることがわかります。
偽計業務妨害被告事件
福岡地方裁判所 昭和61年3月3日
業務用電力量計に工作をして実際の使用電力量より少ない量を指示させた行為を偽計業務妨害罪に問擬した事例(2件)
被告人を懲役一〇月に処する。
未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。
(罪となるべき事実)
被告人は、甲、乙と共謀のうえ、九州電力株式会社(以下、九州電力という。)から電気の供給を受けている福岡県○○市大字○○×x番地パチンコ○○こと右乙方店舗内に九州電力が電気の使用量を計量するため設置している電力量計の作動を減速させ、九州電力の右乙に対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害しようと企て、昭和六〇年三月中旬ころ、右乙方店舗において、同所に設置されていた九州電力の電力量計を収納している計器ボックスを開け、その内部の電力量計とテストスイッチ間に配線してある3Lの記号表示のある部分の電線をテストスイッチ側のターミナル端子から抜き出し切断して電力量計への通電を妨げ、その作動を減速させて実際の使用電力量より少ない電力量を指示するような工作をなし、もつて偽計を用いて九州電力の右乙に対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害したものである。
(証拠の標目)〈省略〉
(累犯前科)〈省略〉
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法六〇条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、被告人には前記前科があるので刑法五六条一項、五七条により再犯の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数のうち三〇日を右の刑に算入することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官中野久利)
偽計業務妨害被告事件
【判決日付】 昭和61年3月3日
【出 典】 判例タイムズ595号95頁
一、電力会社では、需要家に供給した電力の量を計算するため、各需要家のもとに電力量計を取付けている。
このうち、業務用などの高圧電力の場合は、高圧状態のまま直接計量すると危険なため、供給電力の一部を変成器(変圧器と変流器とがセットになったもの)を通して低圧電流としたうえで、供給する高圧電力量に比例する量の低圧電流を電力量計に通電して計量する仕組みとなっている。
そして、電力量計は、変成器から配線された電線を電流が流れることにより、電磁力が生じ、これにより円板を回転させ、その回転数により使用電力量を計算するという構造になっている。
本件被告人らは、それぞれこの電力量計に工作して、その指示数が実際の高圧電力使用量を正しく表示しないようにしたものである。
このうち、(1)の事案では、被告人らは、電力量計の内部にある複数の配線の一部を切断し、その部分での電磁力の発生を妨げて円板の回転数を減少させ、(2)の事案では、被告人らは、電力量計内の円板の軸受筒にゴムチューブを挿入し円板軸との接触抵抗を増大させて円板の回転数を減少させていたものである。
二、本件各判決は、これに、電力会社の電気料金計算徴収業務を妨害したものとして、偽計業務妨害罪を適用して処断している。
同罪に該当することは異論のないところであろうが、同罪のほか、電気窃盗や詐欺(正規の電気料金との差額についての2項詐欺)などの成立も考えられよう(もっとも、実務上は、このような事犯の場合、窃取電力量や正規電力料金が厳密には認定できないため、窃盗や詐欺での起訴よりは、本件のような偽計業務妨害での起訴のほうがすわりがいいという面はあろう)。