条例を刑法の補充的なものと考えて強制わいせつ罪を意識すると「善良な性的道義観念に反するいわゆる猥褒な行為には達しないものがこれにあたる」ということになります。
東京高等裁判所判決昭和52年11月28日
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年10月11日東京都条例第103号)5条1項
東京高等裁判所判決時報刑事28巻11号142頁そこで考察すると、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和三七年一〇月一一日東京都条例第一〇三号)は、当初、街頭における犯罪を防止し、街頭を明るくきれいにするという理念のもとに立案されたものであるが、その後制定の過程で、必ずしも街頭における暴力犯罪に該当しない場合でも、いやしくも都民生活に直接迷惑や不安を与えるような、いわゆる小暴力事犯をすべて取締ることとし、もって都民生活の平穏を保持することを目的とし(同条例一条参照)、小暴力事犯の予防と取締り上の既存法令の不備を補うために制定されたものであるから、右条例制定の趣旨に鑑みれば、同条例五条一項にいう「婦女を著しくしゅう恥させ、または不安を覚えさせる卑わいな言動」とは、都民の善良な風俗環境を害し、法的安全の意識を脅かすような卑わいな言動であって、善良な性的道義観念に反するいわゆる猥褒な行為には達しないものがこれにあたると解すべきであって(なお、附言すると、軽犯罪法一条二〇号所定の、一般公衆にけん悪の情を催させる行為と対比すれば、本条例違反の罪は、特定の婦女を対象とするものであって、行為の悪性において罪質が右軽犯罪法違反の罪より重い点で、明確に区別される。)、このような卑わいな言動に該当するかどうかは、健全な社会常識に基づいて、その言動自体のほか、対象となった婦女の年令、その際の周囲の状況等をも考慮して決定すべきものであるといわなければならない。
迷惑条例で起訴されたときに、強制わいせつ罪(告訴無し)だという捨て身の抗弁に使えます。