処断刑期を間違ったときは、法令適用の誤りだと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101119-00000009-mai-soci
高裁判決によると、検察側は1審・論告求刑の際、強盗強姦の法定刑を「無期懲役または7〜20年の懲役」として懲役12年を求刑した。しかし事件は刑法改正前の03年だったため、「無期懲役または7〜15年の懲役」が正しかった。地裁は誤りを指摘せず、改正後に適用される刑の条文を判決文に書いていた。高裁判決で長谷川憲一裁判長は「裁判官が正確な法定刑を示さずに評議が行われたと推認する」とし、訴訟手続きに法令違反がある場合に該当すると指摘した。しかし1審判決への影響について、「正しい法定刑を示されていたとしても、同じ量刑となった可能性が極めて高い」として否定した。
こういう単純ミスを見つけるには、「司法研修所編 刑事判決起案の手引」でチェックします。ocrかけてデスクトップに置いてあります。
「司法研修所編 刑事判決起案の手引h19」p48
第2 法令適用の形式一般
180 1 文章式と羅列式
法令の適用を示す方法としては,文章体をもってする文章式と条文の列挙を中心とする羅列式・列挙式とがある。かつては文章式のみが行われたが,近ごろでは後者の方式もかなり採用されている。羅列式は記載が簡単で便宜であり,複雑な法令適用関係を図表に似た形式で表現できる長所を有するが,その反面,まだ型が確立していないため,ときとして表現が不十分となり,必要な事項を脱落し,場合によっては理由不備(法378④)ないし法令適用の誤り(法380) を来す危険を含んでいる。
・・・・
(10)刑の変更がある場合。
ア罰則について経過規定がない場合
第2章有罪判決(法令の適用)
「被告人の判示所為は,行為待においては平成16年法律第15 3016号による改正前の刑法20 4条に,裁判持においてはその改正後の刑法204条に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条. 1 0条により軽い行為時法の刑によることとし(行為時法の刑が軽い事例)
小林充「刑事控訴審の手続及び判決書の実際」p16(法曹会・平成12年)
「明らか」
可能性では足りず、蓋然性が認められることをいう。判例の趨勢は、やや緩やかに解されているといわれている。このことは、法令適用の誤りにおいて、処断刑の範囲に差を来す限り常に判決に影響を及ぼすと解するのが従前の判例の主流であることからも窺われるが、検討の余地がなくはない。最近では、この例の合でも、現在の量刑の傾向を念頭に置き、差を来す内容及び実際の宣告刑等に基づき具体的な検討を行った上で判断している例も多くなってきている。
><<
石井一正「刑事控訴審の理論と実務」p168
(4) 法令適用の記載に関する不服
有罪判決においては,罪となるべき事実の摘示,証拠の襟日の挙示に次いで,通常「法令の適用」という項を設け.ここに罪となるべき事実に適則する刑罰法令.処断刑が導き出されるのに必要な法令,付随処分の根拠法令などが記載される(法335条l項)。この記載に不備ないし誤りがある場合.これに関する不服は.控訴理由としては,通常は,法令の適用の誤り(法380条)に当たる。法令の適用の誤りに:,あたるたるか否かについて判断を示した判例は村I:'足す数数にのぼる。 判決書における法令の適用の不備ないし誤りについては.控控訴理由として主張されていない場合でも控訴審が職権で調査・判断をする(法392条2項)ことが多いからである(352頁参照)。判例については.すでに詳細な紹介があるので比較的近年の判例をあげれば.①法改正を看過して改正前の法律を適用すべきことを明示しなかったもの(東京高判平元・5・10判例タイムズ703号286頁.大阪高判平19・2・14判例タイムズ1232号349頁)P446
「判決への影響」については,第4章において.事実誤認,訴訟手続の法令違反.法令適用の誤りに分けて.比較的最近の判例をあげながら説明したところである。判「決への影響」とは,その暇抗と判決との聞に抽象的な因果関係があるだけでは足りず,具体的な因果関係がなければならない.すなわち,その暇抗がなければ異なった判決がなされたであろう蓋然性がある場合をいうと解されていることは.そこでも述べたとおりである。しかしその蓋然性の有無の判断は.多くの場合困難である(とりわけ.訴訟手続の法令違反の場合)だけに.ややもするとこれが広がりかねないきらいがあるo そこで,今後は,この「判決への影響Jの解釈・運用を見直し実質的な考察の下に,破棄を必要とする場合と暇抗の指摘にとどめて原判決の破棄にまで至らない場合を区別し,後者を従前の判例よりも拡大することが考えられてしかるべきと思われる。とりわけ.有罪判決の判決書における法令適用の誤り(法施O条)については.その誤りがなければ処断刑の範開(上限)が異なってくる場合には直ちに「判決への影響」を肯定する一群の判例と宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり.しかも処断刑の下限に近接した領域で量定されているなどの事情を勘案してこれを否定する一群の判例が対立しているが(198頁参照).ここでも.「判決への影響」を実質的に考察して.後者の判例の見解を推し進めるのが今後必要である。