児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

特別企画[児童ポルノ禁止法を考える]法学セミナー2010年11月号(No.671)

 学者の見解が紹介されています。

p33 園田寿
他人から購入した場合はもちろんのこと、ネットで無料の児童ポルノ画像をダウンロードした場合なども禁止の対象となります。児童ポルノ根絶のためには、供給だけではなく、需要じたいを禁止する必要があるというのがその理由です。ただし、現行法では、特に3号ポルノに「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件が入っているために、禁止する対象があいまいになり、過度に広範な規制になるのではないかという点が問題になっています。

p37 安部哲夫
問題は、個人的所持の規制方法にある。刑罰を用いた規制でよいのかである。これには抵抗がある。他にのぞましい方法があるのであればこれに委ねるべきことは刑事法の鉄則である。薬物や銃器と同様には考えにくい。児童ポルノの所持は、たとえば売春防止法3条における「何人も、売春をし又は売春の相手方になってはならない」とする売買春の禁止規定のように、罰則のともなわない訓示規定とし、違法であることの宣言をすれば、十分な立法目的を果たしうるものと考える(日弁連の意見書も同趣旨)。

p42 後藤弘子
児童ポルノを子どもの性的搾取・虐待ととらえた場合、単純所持を処罰しないことは、論理的矛盾となる。性的搾取・虐待という犯罪の証拠が存在しているにもかかわらず、それに何も対処しないことは、国家が性的搾取・虐待に加担していることにほかならない。
単純所持が不処罰の理由として、現行の児童ポルノ禁止法の規定では、自分の子どもの時の裸の写真や水着の写真の所持が、処罰の対象となることの懸念があげられることが多い。
しかし、子どもの裸をとること自体、本当に問題がないことなのだろうか。子どもの承諾がなく、または、たとえ承諾があっても、親という権力を利用して、子どもの裸を写真という形で記録することがどこまで正当化できるのかについても、検討する必要がある。

p45 島岡まな
規制目的が実在の児童の生命・身体・(性的)自由の保護にではなく、②児童の健全な成長発達権や精神的打撃を受けない権利の保護にある場面では、漫画・アニメのように実在する児童が登場しないポルノであっても未成年者からは遠ざけるべきであるが、逆に成人であれば、そのような作品を作成または所持し、あるいはインターネットにアクセスする行為は、児童への被害が未だ間接的である限りにおいて許されるという結論をとることも可能であるかもしれない(9)
9) もちろん、日本国内の現状だけを考えたものであり、国際的な批判に耐え得るかは別問題である。また、実在する児童を利用したポルノは、児童保護の観点から所持自体も禁止されるべきということになろう。