撮影後複製した場合には、撮影行為と複製行為ともに製造罪を更正して、犯意継続の場合は包括一罪になるというのが、判例ですよね。形式的には数個の製造行為があるという意味だと思います。
じゃあ、そのうちの撮影行為だけを取り出せば、性犯罪・福祉犯と全くダブるから、そこで観念的競合になると主張するんですが、そしたら、そこでは撮影行為〜最終複製行為までが一個の行為になります。3項製造罪の実行行為はのびーるの現象。都合が悪くなると行為がのびーる現象
?福岡高裁H21.9.16*1
3 原判示第1と第2の罪数についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第3)について
弁護人は,原判示第1の本件条例違反と原判示第2の3項製造罪とは観念的競合(刑法54条1項前段)の関係に立つから,これを併合罪として処断した1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
(2)たしかに,被告人が被害児童の本件各姿態をデジタルカメラで撮影する行為は,3項製造罪における児童ポルノを製造するのに必要な行為に当たるとともに,本件条例違反のわいせつな行為にも当たるといえるが,本件条例違反のわいせつな行為の主要部分は,被告人が,被害児童の乳房をもんだり,同女に被告人の陰茎をロ淫させるという性的な接触行為であること,他方,原判示第2の3項製造罪においては,デジタルカメラの記録媒体に記録してあった本件画像をパーソナルコンピューターのハードディスクに記録する行為が主要部分に当たると解されることからすれば,原判示第1の罪と第2の罪における被告人の行為が,自然的観察の下で,社会的見解上1個のものと評価することはできない。したがって,原判示第1の本件条例違反の罪と原判示第2の3項製造罪とは併合罪の関係に立つと解されるから,1審判決の判断に法令適用の誤りがあるとは認められない。
?大阪高裁H21.5.19*1
第3控訴趣意中,法4条違反の罪と3項製造罪の罪数に関する法令適用の誤りの主張について
論旨は,要するに,原判示第1の1,第2の1及び第3の1の各法4条違反の罪(以下「児童買春罪」という。)と,同第1の2,第2の2及び第3の2の各3項製造罪の罪数関係について,?3項製造罪の実行行為である「姿態をとらせて」という行為は児童買春罪を構成するものでもあり,?仮にそうでなくても,性交等をしつつその状況を撮影する行為は,いわゆる「ハメ撮り」行為という1個の社会的事象といえるから,それぞれ観念的競合の関係にあると解すべきであるのに,これを併合罪としている原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,刑法54条1項前段にいう「一個の行為」とは,法的評価を離れ自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価を受けるかどうかにより決せられるべきものであるところ(最高裁判所昭和49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁),本件における3項製造罪の実行行為はデジタルカメラで撮影した映像をハードディスクに記録する行為と解され,この行為と児童買春罪の実行行為である児童買春行為との聞には重なり合いが見られず,時期,態様を全く異にしているのであるから,自然的観察の下で,社会的見角卒上一個の行為とみることは到底できない。また,上記?に関し付言すると,性交等をする行為と撮影行為とは,それぞれ性質を異にする2個の行為がたまたま重なっているにすぎず,行為者の動態が社会的見解上1個のものであるなどとみる余地はないというべきである。したがって,原判示第1の1,第2の1,第3の1の各児童買春罪と,同第1の2,第2の2,第3の2の各3項製造罪とをそれぞれ併合罪とした原判決に法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。
?東京高裁H20.9.19*1
2 原判示第1の児童買春罪との罪数関係について
弁護人は,同一児童に対する,児童買春罪の実行行為と3項製造罪の実行行為とは,刑法54条1項前段の「1個の行為」と評価すべきであるとし,その根拠として,構成要件的重なり合いがなくても1個の社会的事象であれば,観念的競合となり得るところ,?性行為を含む性犯罪や福祉犯罪とその際になされる3項製造罪は,社会的見解上1個の行為である,?3項製造罪は,法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせて撮影等するものであり,性交・性交類似行為・性器接触行為がなければならないから,性交・性交類似行為と撮影行為は構成要件的に重なり合う関係にある,と主張する。 刑法54条1項前段にいう「1個の行為」とは,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価を受ける場合をいうものであるところ, 児童買春行為は,児童に対し性交等(性交,性交類似行為,性器接触行為)をすることを本態とするのに対して,3項製造罪に係る児童ポルノ製造行為は,児童にとらせた姿態を描写して児童ポルノを製造することを本態とするものであり,また,上記性交等に至らない「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を描写した場合をも処罰範囲に含んでおり,さらには,上記性交等に係る姿態に関しても,前記(弁護人の主張に対する判断)1で見たとおり,そのような姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為も,3項製造罪に当たると解する以上,上記性交等のなされた時間場所とは異なる時間場所においてなされる,別の記録媒体に記憶させる場合も処罰範囲に含まれることになるから,上記の自然的観察のもとにおいては,児童買春行為と3項製造罪に係る児童ポルノ製造行為とは,社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個の行為とみることはできない。したがって,児童買春罪と3項製造罪とは,刑法54条1項前段の観念的競合の関係ではなく,併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。
弁護人の上記主張は採用できない。
途中の複製行為が外国で行われても、1年以上にわたる一個の行為だから国外犯ではないとしたのもあります。
東京高裁H21.12.9
2 児童ポルノ製造罪に関する控訴趣意について
(1)児童ポルノ法10条の摘示に関する主張について(控訴理由第2)
論旨は,要するに,原判決は,「罪となるべき事実」の第2において,被告人が,当時のB県内の自宅において,被害児童に全裸の姿態をとらせて携帯電話機付属のカメラで撮影し,その画像(以下「本件ポルノ画像」という。)を自己のパソコンに保存した後,外国内において,同画像を同パソコンから外付けハードディスク(以下「本件ハードディスク」という。)に記録して保存したとの事実を認定しているが,このうち外国内における製造行為について国外犯処罰規定である児童ポルノ法10条の摘示を欠いているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反ないしは法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,上記認定事実によると,犯罪を構成すべき行為の一部が日本国内で行われていることが明らかであり,本件について有罪判決をするに当たって児童ポルノ法10条を適用する必要があるものとは解されないから,論旨は理由がない。
(2)本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録,保存した行為は児童ポルノ製造罪に該当しないとの主張について(控訴理由第3)
論旨は,要するに,原判示第2の事実のうち,平成21年1月7日に外国内で被告人が本件ポルノ画像を本件ハードディスクに記録して保存した行為は,平成20年1月13日にB県内で被害児童を撮影した行為とは犯意が同一ではなく,包括一罪の関係に立たない不可罰的事後行為と評価すべきであるのに,これを含め,被告人の行為全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を更に別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為についても,児童ポルノ製造罪に当たると解すべきであり,撮影後,手違いでデータが消去されることを恐れた被告人が記録,保存行為を反復した挙げ句,最終的に記録,保存したのが所論のいう平成21年1月7日の行為であるなどの関係証拠から窺われる経緯に照らすと,被害児童を撮影してから本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録,保存するまでに約1年が経過していて,それらの行為が行われた場所も全く異なることなど,所論が指摘する事情を考慮しても,本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録して保存した点も含めて,全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決に誤りがあるとはいえない。
論旨は理由がない。