時々判決でも見かけるようになりましたが、罪数処理は決まっていません。
併合罪に向かっているように思えます。
札幌高裁H19.3.8
第1管轄違い及び法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第4)
論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪と本件児童淫行罪とは併合罪であって,本件児童ポルノ製造罪の管轄は地方裁判所であるのに,これを観念的競合であるとして本件児童ポルノ製造罪について家庭裁判所に管轄を認めた原判決には不法に管轄を認めた違法があり,また,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,検討するに,原判決別紙一覧表番号8ないし20の各行為、は,児童に淫行させながら,その児童の姿態を撮影したというものであり,児童淫行罪であるとともに児童ポルノ製造罪に該当する。これらの児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会見解上一個のものと評価されるものであるから,一個の行為で二個の罪名に触れる場合に当たり,観念的競合の関係にあると解される。原判決は,これと同旨の判断に基づき,児童淫行罪を専属管轄とする家庭裁判所として本件を処理したものであって,不法に管轄を認めた違法ないし法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。
東京高裁H17.12.26
所論は、本件児童ポルノ製造の際の淫行行為をいわばかすがいとして、本件児童ポルノ製造罪と別件淫行罪とが一罪になると主張しているものと解される。ところで、本件児童ポルノ製造罪の一部については、それが児童淫行罪に該当しないと思われるものも含まれるから(別紙一覧表番号一及び四の各一部、同番号五及び六)、それについては、別件淫行罪とのかすがい現象は生じ得ない。他方、本件児童ポルノ製造罪のなかには、それ自体児童淫行罪に該当すると思われるものがある。例えば、性交自体を撮影している場合である(別紙一覧表番号一の一部、同番号二及び三)。同罪と当該児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり、また、その児童淫行罪と別件淫行罪とは包括的一罪となると解されるから(同一児童に対する複数回の淫行行為は、併合罪ではなく、包括的一罪と解するのが、判例実務の一般である。)、かすがいの現象を認めるのであれば、全体として一罪となり、当該児童ポルノ製造罪については、別件淫行罪と併せて、家庭裁判所に起訴すべきことになる。
東京高裁H21.10.15
「ハメ撮り」と呼ばれている「性交を行いながら撮影機材を持って写真あるいは動画を撮る行為」については,一見すると,上半身で撮影する行為と下半身で、淫行する行為が同一人物によるものであることから1個の行為のように見えるが,社会的評価においては,淫行行為と製造行為という別個の行為であるから,観念的競合になるとはいえないのである。
札幌高裁H19.9.4
罪数処理に関する主張について
そして、③については、原判決も、各買春行とこれに関連してなされた児童ポルノ製造罪とを観念的競合として処理している。上記判断と同様の罪数処理をした原判決に誤りはなく、法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。
大阪高裁H21.5.19
論旨は,要するに,原判示第1の1,第2の1及び第3の1の各法4条違反の罪(以下「児童買春罪」という。)と,同第1の2,第2の2及び第3の2の各3項製造罪の罪数関係について,①3項製造罪の実行行為である「姿態をとらせて」という行為は児童買春罪を構成するものでもあり,②仮にそうでなくても,性交等をしつつその状況を撮影する行為は,いわゆる「ハメ撮り」行為という1個の社会的事象といえるから,それぞれ観念的競合の関係にあると解すべきであるのに,これを併合罪としている原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,刑法54条1項前段にいう「一個の行為」とは,法的評価を離れ自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価を受けるかどうかにより決せられるべきものであるところ(最高裁判所昭和49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁),本件における3項製造罪の実行行為はデジタルカメラで撮影した映像をハードディスクに記録する行為と解され,この行為と児童買春罪の実行行為である児童買春行為との聞には重なり合いが見られず,時期,態様を全く異にしているのであるから,自然的観察の下で,社会的見解上一個の行為とみることは到底できない。また,上記②に関し付言すると,性交等をする行為と撮影行為とは,それぞれ性質を異にする2個の行為がたまたま重なっているにすぎず,行為者の動態が社会的見解上1個のものであるなどとみる余地はないというべきである。したがって,原判示第1の1,第2の1,第3の1の各児童買春罪と,同第1の2,第2の2,第3の2の各3項製造罪とをそれぞれ併合罪とした原判決に法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。