児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性犯罪の再犯防止はどこまで可能か

 プログラムの期間は「刑期」という形で裁判所が決めていているのですが、裁判段階には、再犯危険についての証拠が乏しいのが問題ですね。
 病院にたとえると、精密検査する前に入院期間がガチガチに決められていて、入院してから精密検査受けて、治ってなくても当初の期限で退院させるようなものです。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100207/crm1002071803011-n1.htm
 仮釈放で出所後は保護観察所が引き継ぎ、「コア・プログラム」を3カ月実施する。認知のゆがみをさらに探り、自己管理と対人関係スキル、被害者への共感などを学ぶ。同時に保護司らによる指導強化、家族向けのプログラムも行う。
 東京保護観察所では、男女の保護観察官がペアとなって3〜5人のグループを担当。「どうしても女性に目が向いてしまう、などの悩みを漏らす人も多い。そういう思いをコントロールするために日常生活、人間関係で対処できることを見つけます。受講者のモチベーションは予想以上に高い」と林寛之主任保護観察官
20年度の法務省の資料によると、刑務所でプログラムを受講して出所した393人のうち、性犯罪で再犯した者は8人、保護観察所の受講者1180人中、その後、性犯罪で起訴されたのは16人だった。ただ、保護観察所では、あくまで仮釈放と保護観察付き執行猶予者だけが対象で、仮釈放制度にも問題は残る。
 慶応大法学部の太田達也教授(刑事政策)はその問題点について、「仮釈放では、残った刑期を保護観察により社会の中で執行するが、刑期の長い人や更生の難しい人ほど仮釈放が遅くなり、社会の中で監督や指導を受ける期間が短くなる。ましてや問題性が高いため仮釈放がなく、満期まで刑務所にいる人は出所後、保護観察や指導も受けない」と指摘する。
 犯罪白書(18年版)の調査によると、性犯罪者が出所後6年間に再犯し、刑務所に入る割合は満期釈放で63・3%、仮釈放で30・8%(性犯罪の再犯はそれぞれ19・1%、8・3%)。太田教授は満期釈放者の再犯率の高さに加え、「再犯のおそれがない」と仮釈放された人の3割が再犯という状況を憂慮する。

 さらに、仮釈放者は翌年から、満期釈放者はその年から、いずれも5年目までの再犯リスクが高いことにも注目。仮釈放、満期釈放を問わず、社会のなかで指導監督を受け、自立・自律する保護観察に相応の期間と内容が必要と指摘する。そのためにも、裁判所の判決に「懲役8年+保護観察3年」といったメニューを加えることを提言する。

海外では処遇プログラムのほか、犯罪者情報の一般公開制度、GPS(衛星利用測位システム)装着、薬物療法による化学的去勢など性犯罪者対策が多い。

 性暴力やDVの相談、防止教育を行っている辻雄作さんは「(出所後、再犯の芽となる)小さいことも見逃さず、警察、裁判所も含めたチェック、相談態勢を整えながら、被害者側の安全という点からGPSの導入も考えられる」とした上で、「被害者らが安心して暮らせるため、民間、公的機関も含めてコミュニティーが性犯罪にどう取り組むかが大切」と話す。

 また、「性犯罪、特に社会への危険性が高い暴力的な性犯罪と子供に対するものが問題で、その矯正は難しい」と強調するのは、常磐大の諸澤英道理事長(犯罪学、被害者学)だ。それほど複雑・特別な事情を抱えているからで、処遇プログラムにも「認知行動療法には限界があり、改善更生が不可能な暴力的性犯罪者がいるので、情報公開は不可欠です」と見る。