児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<沖縄県警>時効成立の男性逮捕

 訴訟法は手続が始まった時の法律を適用すれば最も混乱が少なくなるのでしょうが、時効の規定を行為時基準で適用するのでこうなります。
 それなら、少年法37条の廃止についても、行為時法を適用すべきだと言ってみますか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090318-00000124-mai-soci
沖縄県警は18日、公訴時効が成立していた40代の男性を宜野湾署が強制わいせつ容疑で誤って逮捕した、と発表した。送検先の那覇地検沖縄支部は誤りに気づかず逮捕から3日後の今月11日に拘置請求し、沖縄簡易裁判所も拘置を認めたが、直後に地検支部が誤りに気づき、男性は同日中に釈放された。容疑者の身柄拘置にかかわる警察、検察、裁判所の3者ともに誤る異例の事態となった。

http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031801001043.html
県警によると、この男性については2003年8月3日未明に同県北中城村の路上に止めたタクシー内で女子高生に抱きついたなどとして、同月中に強制わいせつ容疑で逮捕状を取り、全国に指名手配。今月8日に東京都内で警視庁捜査員が逮捕した。

 強制わいせつ罪は当時、法定の最高刑が懲役7年で公訴時効は5年後の昨年8月だったが、05年施行の刑法改正で最高刑は懲役10年となり、時効も7年に延びた。担当の検察官が11日、延長された時効を誤って適用していることに気付き、即日釈放した。

 事件を捜査した宜野湾署は十数回にわたって逮捕状を更新し、本来の公訴時効が成立した後の今年1月にも再度取得。その際に捜査員らは時効を確認したが、改正法が適用されると勘違いしていたという。逮捕後の拘置請求手続きでも、時効成立は見逃されていた。

平成16年法律第156号 刑法等の一部を改正する法律
 (刑法の一部改正)
第一条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
  第三条第五号及び第三条の二第一号中「準強姦」の下に「、集団強姦等」を加える。
  第十二条第一項及び第十三条第一項中「十五年」を「二十年」に改める。
  第十四条中「二十年」を「三十年」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
   死刑又は無期の懲役若しくは禁錮減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
  第百七十六条中「七年」を「十年」に改める。
  第百七十七条中「二年」を「三年」に改める。
  第百七十八条中「わいせつな行為をし、又は姦淫した者は、前二条」を「わいせつな行為をした者は、第百七十六条」に改め、同条に次の一項を加える。
 2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
  第百七十八条の次に次の一条を加える。
 (集団強姦等)
 第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
  第百七十九条中「前三条」を「第百七十六条から前条まで」に改める。
  第百八十条第一項中「前条までの罪」を「第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪」に改め、同条第二項中「から前条までの罪」を「若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪」に改める。
  第百八十一条中「から第百七十九条までの罪」を「若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪」に改め、同条に次の二項を加える。
 2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
 3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
  第百九十九条中「三年」を「五年」に改める。

第二条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
  第百五十七条の四第一項第一号中「第百七十八条」を「第百七十八条の二」に改める。
  第二百五十条中「左の」を「次に掲げる」に改め、同条第一号中「あたる」を「当たる」に、「十五年」を「二十五年」に改め、同条第二号中「あたる」を「当たる」に、「十年」を「十五年」に改め、同条第六号中「あたる」を「当たる」に改め、同号を同条第七号とし、同条第五号中「あたる」を「当たる」に改め、同号を同条第六号とし、同条第四号中「あたる」を「当たる」に改め、同号を同条第五号とし、同条第三号中「十年以上」を「十五年未満」に、「あたる」を「当たる」に改め、同号を同条第四号とし、同条第二号の次に次の一号を加える。

  三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年

附 則
第三条 
2 この法律の施行前に犯した罪の公訴時効の期間については、第二条の規定による改正後の刑事訴訟法第二百五十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第四条 併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがある場合において、これらの罪について刑法第四十七条の規定により併合罪として有期の懲役又は禁錮の加重をするときは、旧法第十四条の規定を適用する。ただし、これらの罪のうちこの法律の施行後に犯したもののみについて第一条の規定による改正後の刑法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑が、これらの罪のすべてについて旧法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑より重い刑となるときは、その重い刑をもって処断する。

 強制わいせつ罪の控訴審判決で一審の法令適用が訂正されることがよくあります。手元にもこういう判決があります。

一審判決
(法令の適用)
 被告人の判示第1及び第2の各所為中強制わいせつの点は,いずれも行為時においては平成16年法律第156条による改正前の刑法176条後段に,裁判時においてはその改正後の刑法176条後段に該当するが,これらは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとし,判示第3及び第4の各所為中強制わいせつの点はいずれも同法同条後段に,判示第2ないし第4の各所為中児童ポルノを製造した点はいずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,2条3項3号にそれぞれ該当するが,判示第2ないし第4の各所為について,これらはいずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として重い強制わいせつ罪について定めた懲役刑でそれぞれ処断することとし,・・・以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした(ただし,平成16年法律第156号付則4条ただし書による。)・・・・

控訴審判決
4なお,原判決の法令の適用の項中,「被告人の判示第1及び第2の各所為中強制わいせつの点は,いずれも行為時においては平成16年法律第156条による改正前の刑法176条後段に」とあるのは,「被告人の判示第1及び第2の各所為中強制わいせつの点は,いずれも行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法176条後段に」の誤記と,「判示第3及び第4の各所為中強制わいせつの点はいずれも同法同条後段に」とあるのは,「判示第3及び第4の各所為中強制わいせつの点はいずれも同法176条後段に」の誤記と,「刑法54条1項前段,10条により1罪として重い強制わいせつ罪について定めた懲役刑で」とあるのは,「刑法54条1項前段,10条により1罪として重い強制わいせつ罪の刑で」の誤記と,「同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした(ただし,平成16年法律第156号付則4条ただし書による。)」とあるのは,「同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした(ただし,平成16年法律第156号附則4条ただし書による。)」の誤記と,それぞれ認める。