児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童の水着を脱がせて撮影する行為を強制わいせつ罪とした事例(東京高裁S29.5.27)

 昔から強制わいせつ罪なんです。
 3項児童ポルノ製造罪(最高3年)を作った人は、撮影行為がわいせつ行為となることを知らなかったに違いない。

東京高裁S29.5.27東京高等裁判所刑事時報5巻5号P201
証拠によれば、本件各被害者は、いづれも未婚のうら若い女性(Aが満11〜12年であったほか、他はすべて満15年=18年) であって、学校の卒業記念にするなどの理由で、写真撮影業を営む被告人の許に写真の撮影に赴むいた際、他人の交通しない撮影室で、依頼写真撮影を終った後、被告人の無償で海水着姿の写真を撮ってやるとの甘言に気を許し、軽卒にも好奇心から海水着叉は海浜着とパンツだけの姿となって.写真を撮った虚に乗じ、被告人は、若い女性が、このような場合、その特有の慎ましさから、成年の男子の前で裸体になりかけた姿を世間の人に知られることを恐れ恥ぢらい、敢て騒ぎ立てようとしない傾向にあるのも奇貨として、性欲の刺激興奮のため、いきなり海水着やパンツに子をかけて引き外しにかかり被害者が、嫌がって抵抗するのを無理に剥ぎ取って、原判示の如く、或いは裸体にしてその写真を撮り、或いは裸体にされて更に世間に対する差恥と被告人に対する恐怖の度加えて殆んど無抵抗となった被害者の陰部を自らの手指で左右に開き又は強いて開かしめた上その写真を撮影し、或いは、その自由を奪って被害者の陰部を手指でもてあそんだことが明らかであっ、冒頭説示するところに照らし、いづれも、被害者の意思に反し、暴行をもってす猥褻の行為を為したものと言わざるを得ない


追記
 平成の判例です。
 2項製造罪・5項製造罪の実行行為は撮影のみなんですが、東京高裁H19.11.6「児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に,強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為の一部とはいえない」と判示していて、撮影行為とわいせつ行為とが重ならないとしています。
 仙台高裁H21.3.3が最新の判断を示す予定です。

東京高裁H19.11.6
 そこで検討すると,①,②及び④の各児童買春罪に該当する行為は,児童に対し対償を供与し,あるいは,その約束をして,児童と性交するなどしたものであり,③及び⑤の各児童ポルノ製造罪(本法7条2項所定の罪。以下,これを同条3項所定の児童ポルノ製造罪と区別して,「2項製造罪」という。)に該当する行為は,提供の目的で,その性交等をしている児童の姿態等を撮影し,DVD−RW1枚あるいはネガフィルム1個の児童ポルノを製造したものであって,これらの行為は,各性交等の時点では同時的に併存してはいても,自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価される場合には当たらないと解するのが相当である。
 その理由につき若干補足して説明する。まず,児童買春行為それ自体(児童との性交ないし性交類似行為)は,2項製造罪の実行行為の一部であるとは解されず,児童買春罪と2項製造罪は,その実行行為が部分的にも重なり合う関係にはないのである(このことは,児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に,強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為の一部とはいえないのと同様である。)。
 次に,両罪に該当する行為は,本件においてはほぼ同時的に併存し,密接に関連しているので,自然的観察の下で社会的見解上1個の行為と評価するのが相当か否かが問題となる。判例上,外国から航空機等により覚せい剤を持ち込み,これを携帯して通関線を突破しようとした場合の覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪が観念的競合の関係にあるとされており,両罪は実行行為の重なり合いはないが,このような行為は社会的見解上1個の行為であるとされている(最高裁昭和58年9月29日第一小法廷判決・刑集37巻7号1、110頁)ので,これと本件の場合を比較検討してみると,外国から覚せい剤を携行して通関線を突破して本邦内に輸入しようとする者は,必然的に両罪を犯すことになり,いずれか一方の罪のみを犯すということは考えられない(関税法違反罪の実行の着手前に発覚した場合を除く。)が,本件の場合は,児童買春罪のみを犯し,2項製造罪には及ばないことも,逆に,2項製造罪のみを犯し,児童買春罪には及ばないことも共に十分に可能なのである。覚せい剤輸入の場合は両罪に該当する行為はいずれも「輸入」として同質的なものといえるが,「買春」と「製造」はむしろ異質な行為であって,行為者の動態としての1個性は認めがたいというべきであろう。
さらに,本件の2項製造罪においては,児童の姿態等の撮影とこれに伴う第1次媒体への記録により第1次媒体(児童ポルノ)を製造したものとされているにとどまるが,2項製造罪においては,第1次媒体の製造に引き続き,電磁的記録の編集・複写,ネガフィルムの現像・焼き付け等の工程を経て,第2次媒体や第3次媒体の児童ポルノを製造する行為も実行行為に包含されるのであり,事案によっては,相当広範囲にわたる行為に(包括)一罪性を認めざるを得ないであろうが,児童買春罪との観念的競合関係を肯定するとすれば,いわゆるかすがい作用により,科刑上一罪とされる範囲が不当に広がる恐れも否定できないように思われる(強姦罪等との観念的競合を肯定するとすれば,その不都合はより大きいものとなろう。)。
なお,本件と同様に撮影を伴う児童買春の事案において,児童買春罪と3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例は少なくないようであり,3項製造罪に.ついては,「児童に……姿態をとらせ(る)、」行為もその実行行為に含まれるのか否かという問題が存するのであるが,両罪を併合罪関係にあると解する余地もあるように思われる。
また,撮影者が淫行の相手方と,なる児童淫行罪(児童福祉法60条1項,34条1項6号)の事案についても,児童淫行罪と2項製造罪や3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例も少なくないようであるが,これらについてもなお検討が必要のように思われる。少なくとも,これらの裁判例の結論を動かし難いものとして,本件の児童買春罪と2項製造罪の罪数関係を論ずべきではないであろう。
次に,③と⑤の各児童ポルノ製造罪についてみると,確かに,被告人は,いずれも雑誌社に投稿して収入を得ようする目的や各犯行に及んだものではあるが,、③と⑤の各犯行は9か月余りも離れた時点で行われたものであり,犯行場所,被害児童及び媒体のいずれも異にしていることなどからみて,これを包括一罪と解することはできない。
 以上によれば,①ないし⑥の各罪を併合罪として処理した原判決に法令適用の誤りは認められない。論旨は理由がない。