児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童ポルノのうち、虐待画像の実に二割は三歳以下の幼児なのであります。」参議院決算委員会H20.12.15

児童ポルノのうち、虐待画像の実に二割は三歳以下の幼児なのであります。」というお話ですが、数えたこともないので実際そうかもしれないのですが、日本の警察によると
H17の統計では児童ポルノ被害児童のうち未就学は2% 最大は高校生の48.4%
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen29/siryou2.pdf
H19の統計では児童ポルノ被害児童のうち未就学は2.2% 最大は高校生の44.4%
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen39/syonen19.pdf
となっていて、それほど未就学の割合は高くないですね。
 未就学への強制わいせつ罪に伴う撮影行為は、強制わいせつ罪一本で処理されている率が高いので(それで適切な量刑も確保できるので)、児童ポルノ罪の被害者にはカウントされていないのだと思います。3項製造罪って強制わいせつ罪に比べると法定刑が格段に軽いので、強制わいせつ罪が立つ場合には立件する必要がないのです。
 未就学に対する撮影型の強制わいせつ罪の件数というのは、だれも数えてないですよね。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0115/170/17012150015004c.html
第170回国会 決算委員会 第4号
平成二十年十二月十五日(月曜日)
       法務大臣官房長  稲田 伸夫君
       法務省刑事局長  大野恒太郎君
   〔資料配付〕
松あきら君 実は、私は二枚の資料を今日は用意したんですが、一枚だけになりました。なぜならば、もう一枚は過激過ぎるので配付ができないということであります。もちろん、普通でありますと、資料を配付しますと、こういうパネルなどを出しましてテレビで皆様にお見せするんですけれど、それも残念ながらできません。
 私は、我が国における児童ポルノという用語について、相当程度、私は思い違いやあるいは誤解があると考えております。
 総理、児童ポルノという用語から連想される思いあるいは定義、どのようにお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。簡単にで結構でございます。
内閣総理大臣麻生太郎君) 何となく、いたいけな子供を大人がだます、何となく、後に子供の心のトラウマやら考えるとかなりふざけた話かなという、怒りを覚えるというのかな、そういった感じじゃないでしょうか。
松あきら君 先ほどお昼のニュースで、児童ポルノ処罰法違反で現行犯七人が逮捕されたわけであります。これが流れておりました。一年間で三十万枚販売して一億一千万円を売り上げた、そのほかDVD五万四千枚を押収したということでありますが、私は、児童ポルノというのはまさに児童虐待であり、児童レイプであると考えております。しかし、児童ポルノというその用語からは、例えば援助交際であるとか、何となくそういうイメージで、思い違いをなさっている、誤解をなさっている人が少なくないんです。
 しかし、実態は、オンラインに流布している推計百万件以上の児童ポルノのうち、虐待画像の実に二割は三歳以下の幼児なのであります。児童ポルノは子供の性的搾取そのものであり、極めてその悪質な犯罪行為が、児童ポルノという用語によって違法性が中和されることで我が国における問題の理解を妨げて対応が遅れた原因となっているとすれば、誠に誠に遺憾であると思っております。
 特に、常日ごろから弱者の権利保護に熱心である有識者からは、児童ポルノの規制によって表現の自由が侵害されるといった発言が声高になされるのは非常に残念でなりません。児童ポルノの実態は児童虐待であり、性的搾取の犠牲になった子供の人権や尊厳を傷つける、これは既に国際社会の共通認識であります。中にはPTSDや自殺に追い込まれる、こういう被害者もたくさんおります。そして、その傷は一生心に残るんです。児童ポルノ表現の自由などが認められる芸術性の範疇にあるとは決して認められない、認めてはならない、れっきとした犯罪行為なのであります。まずは児童ポルノについて早急に規制した上で、表現の自由への侵害や権力濫用等の問題については別途対策を講ずるべきであると思います。
 森法務大臣、簡単でございますから、我が国のちょっと対応状況、短くお願いいたします。
国務大臣森英介君) 今委員からお尋ねのあった点でございますけれども、児童ポルノ事犯の検察庁における受理件数は、平成十二年には百八十八人でございました。それが平成十九年には六百三十七人となっておりまして、事案が増大していることにかんがみましても、我が国における児童ポルノの問題はいよいよ重大になってきているという認識を持っております。
 また、映画やなんかと違いまして、いったんインターネットに載ってしまいますと、これもう半永久的にその画像が残ります。したがいまして、その被写体となった大変幼い子供たちというのは一生その傷を負っていくわけでございますので、やっぱりこれは、先ほど総理からも答弁ありましたように、ほっておけない問題であるというふうに思っております。
 児童ポルノの問題は国際的にも重大な関心事でありまして、この問題についてはしっかりと対応すべきであるというふうに考えております。
松あきら君 法務大臣、ありがとうございます。しっかりと御認識をいただいているのだと思います。
 去る十一月二十八日、世界百二十五か国が参加してブラジルで開催されました第三回の児童の性的搾取に反対する世界会議、この児童ポルノ等の製造や提供、所持だけなく、入手や閲覧も犯罪と位置付けて、過激な漫画やアニメ等の仮想の性的表現も規制対象とするリオ協定が採択されたんです。百二十五か国がこれを採択したんです。私は、日本ではまだまだそこまで行かない。現在、児童ポルノの単純所持を規制していない主要国は、皆様御存じのように、日本とロシアだけなんです。
 私は、漫画やアニメというのは大事な日本の文化であり、コンテンツ産業、大事な分野だと思っています。でも、これと児童ポルノは一緒にして決してほしくないと思っております。
 単純所持の処罰化に足踏みをする中で、リオ協定は閲覧や単純所持も犯罪にすべきと踏み込んでおりまして、我が国は更に後れを取ることとなりました。先ほど法務大臣がおっしゃったように、インターネットには国境がないんです。各国が協調して規制を実施しなければ、児童ポルノ画像の流布を防げずに規制の実効性が確保されません。子供たちが人身売買で売られたり、あるいはいろんなことで被害に遭って、もうこういう虐待を受けて、それがまさに自分が大人になってもインターネット上で流し続けられるとしたら、もう本当に生きていけないという悲痛な私はその被害者からのお訴えも聞かせていただいたことがあります。まずは、単純所持について法的規制の早急な導入が求められます。そうでなければ、国際的な信頼を確保できないと私は考えている次第でございます。
 私は、この児童ポルノ、もうずっと十年来かかわっておりまして、もう何とか子供たちを守りたい、その思いで、今現在、与党PTでもこれを作らせていただきまして、先般出させていただいたところでございます。どうか総理、その法案成立に向けて政府にも全面的な協力をお願いしたい。御決意をお伺いしたいと思います。
内閣総理大臣麻生太郎君) これは既に自民党公明党とでたしか法案を提出をして、今衆議院で継続審議中になっていると思いますが、いずれにいたしましてもこれは重要な課題でありまして、政府としても、これは積極的な取締りなど必要な措置というのは速やかに行っていかねばならぬ対象の問題だと考えております。児童ポルノ禁止法改正案の審議にも積極的に協力をいたしてまいりたいと考えております。
松あきら君 今、これは与党として提出をしておりまして、野党の皆様にも是非御協力いただいて、与野党を超えてこの法案を成立させなければいけないと思っている次第でございます。
 本年の六月にG8の司法・内務相会合で、当時の鳩山法務大臣は、児童ポルノ禁止法改正案成立に向けて積極的に取り組むという御発言もなさいました。私は、多分いろんな思い、法務大臣としておありと、前法務大臣として、今はもちろん総務大臣でインターネット等のブロッキング等の問題もございますけれど、是非、私は鳩山大臣に御発言いただきたいと思います。
国務大臣鳩山邦夫君) 先生御指摘のとおりで、今年六月だったでしょうか、G8の内務大臣・司法大臣会議、これは日本が主催をいたしましたから、東京で行って、私と泉国家公安委員長とで議長を務めたわけですが、そのときの重要課題の一つとして、重要問題の一つとしてこの児童ポルノがあったわけです。
 先生御指摘のように、単純所持を罰することをしていないのは日本とロシアだけだと、これはアメリカの大使からそれまで何度も言われておった。そういう意味で、この問題に私も、思い入れというのは妙な言い方かもしれませんが、何とかしたいという気持ちがありまして、先ほど森法務大臣がおっしゃったように、一回インターネットに載ったらもう世界中回っちゃってどこかには保存されちゃうわけですから、こんな恐ろしいことは認めるわけにいかないと。
 こういうことで、インターネット関連の業者とか会社とは非常に通信ということで付き合いの深い総務省として全力を挙げていきたいと、こう思っておりますし、前法務大臣として申し上げれば、こういう単純所持を禁止するような法改正はもう重罰化、重罰化、厳罰化でいったらいいと思いますよ。
松あきら君 ありがとうございます。本当に力強いお言葉をいただいたと思います。
 今、ブロッキングのお話もちょっと出ました、インターネットの。これ、諸外国では非常に進んでおりまして、スウェーデンではシルビア王妃がもうずっとこの子供のポルノの撲滅のために、禁止のためにずっと動いていらっしゃいます。そして何度も、このリオの会議にも出席されたそうでございますけれども、例えばスウェーデンなどはソフトウエアが開発されておりまして、例えばこのソフトを入れると子供のポルノの画像をダウンロードすれば警察に即通報されるんですね。こういうソフトまであるんです。
 ですから、私は、もちろん日本はそこまでいきませんけれども、この即警察に通報ではないまでも、特にヨーロッパなどではこれが、ブロッキングというのが非常に進んでおります。是非、私は、何度も申し上げておりますように、これは与党、野党、関係ないんです。本当に子供たちのために、もう私はこれ話すと涙が出てきそうになります。あのアメリカのシェーファー大使にも言われました。この画像をずっと見続けている捜査官がPTSDになると、捜査官がですよ。それぐらいひどい状況である。この実態を是非お分かりいただいて、この児童ポルノ禁止法、法案成立、一日も早くさせていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。


 なお、現行法は児童ポルノ性的虐待だからというだけで取り締まるのではなく、社会的風潮も考慮して、性的虐待に至らないものまで取り締まることも合理的だとされています。

名古屋高等裁判所金沢支部H14.3.28
第3 控訴趣意中,法令の適用の誤り等の論旨(控訴理由第1ないし第18及び第22)について
1 児童買春処罰法が憲法,条約上の規定に違反する旨の各所論(控訴理由第7ないし第15,第17及び第22)について
(1)所論は,児童ポルノ憲法21条の表現の自由の範疇にあるとし,児童買春処罰法が処罰対象とする児童の年齢を一律18歳末満としている点は,刑法上の性的同意年齢が13歳とされ,民法上の婚姻年齢も女子は16歳とされていること,高年齢の児童の場合は自己決定能力を備えているから,必ずしも児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為がすべて児童に対する性的搾取,性的虐待であるとは限らないことからすると,必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であって,児童ポルノ製造罪の規定は憲法21条1項に違反し(控訴理由第7及び第10),また憲法13条の児童ポルノに出演する児童の自己決定権を侵害するもので(控訴理由第13),無効であるという。
 しかしながら,性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写するなどした児童ポルノを製造,頒布等する行為は,第1で述べた児童買春同様,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象ととらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり,そのためかかる行為が規制されたものであるところ,このような規制の趣旨目的に照らせば,対象となる児童の年齢を一律18歳末満とすることは,身体的及び精神的に未熟である児童の自己決定権を制約する部分があるとしても,合理的な理由があるというべきであり,また表現の自由などとの関係においても必要以上の,あるいは立法目的に照らし合理的関連性を欠く過度に広範な規制であるとはいえないから,所論指摘の憲法の各条項に違反するものということはできない。