児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪の「姿態とらせ」は実行行為ではなく実行行為のいわば「付帯状況」(最高裁h18.2.20)

 顕名で書かれた。なんだか奥村あての手紙みたいです。
 今頃言わないで判決に書いてくださいよ。最高裁の理由不備。
 じゃあ、包括一罪説は間違いで、製造行為一個説が正解なのね。
 前提性犯罪とは併合罪ですね。
 実行行為説の東京高裁h17.12.26、札幌高裁h19.9.4などは変更されるべきですね。

 「消極説」とは森山、野田、島戸の立法者の説明。非常識だと言われています。

山口裕之「最高裁刑事破棄判決等の実情(上)−平成18年度−」判例時報 第1980号
ハードディスクの作成については、自宅で、既にメモリースティックに記憶されている画像データを、パーソナルコンピュータのハードディスクにコピ-した(記憶させた)ものであるから、ハードディスクの作成時には、児童に姿態をとらせていないので、こちらについては、法七条三項の罪が成立しないのではないかとの疑問が生じる余地なしとしない。
この点について、前掲森山ほかは、(筆名注。法七条)「第三項では、『児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ'これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより』との手段の限定がありますので、複製は除外されます。」(前掲森川ほかP100.参照。なお同書一九八頁には、(筆者注。法七条)「第二項、第五項にいうF製造もには複製行為も含まれますが、他人に提供する目的や公然と陳列する目的を伴わない場合は第二項、第五項の罪は成立しませんから、このような目的がない個人的な複製行為については、第七条で処罰の対象とされる行為には該当しないと考えています。」とある)といい、また、島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集五七を八号九八頁は、法七条二項について「既に存在する児童ポルノを複製する行為それ自体は、必ずしも直ちに児童の心身に有害な影響を与えるものではないし、いわゆる単純所持と同様、児童ポルノの流通の危険を増大させるものでもないから、禄製を含めすべから-製造について犯罪化の必要があるとまでは思われない。(改行)そこで、複製を除き、児童に所定の姿態をとらせ、これを写真等に描写し、よって児童ポルノを製造する行為については処罰する規定を新設したものである。」と説明している。
しかし、本決定は、「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ、これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が、当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は'法七条三項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示して'前記のような消極説を採らないことを明らかにした。
本決定は、右のとおりの判断に至った理由を特に判示していないが、次のような考え方によったものと思われる。すなわち、「児童ポルノの製造」は、法七条三項のみならず、同条二項にも、同条五項にも規定されているところ、これらの条項では正に実行行為とされているもので、同条三項でも同様に考えるのが合理的である。つまり、法七条三項にあっても、実行行為と観念すべきは、あくまで「児童ポルノの製造」であって(「児童に姿態をとらせ、これを描写することにより」といった要件を含めて実行行為を観念すると、当初の作成行為;例えば、前記の例でいえば、未現像フィルムの作成、メモリースティックの作成》のみが製造に当たるということになろう。)、「児童に姿態をとらせ、これを描写することにより」といった要件は、犯罪に該当するについて必要とされる実行行為のいわば付帯状況といったものと観念すべきものと思われる。そうすると、前記のハードディスクの作成についてみると、被告人について、ハードディスクの作成時には、「児童に姿態をとらせ、これを描写することにより」といった状況はないけれども、何もこの付帯状況は実行行為時に存しなければならないものとは考えられず、被告人がこのようにハードディスクを作成できたのも、正にに自ら「児童に姿態をとらせ、これを描写することによ」ったからというべきであって、右付帯状況を満たしているということができるわけである(したがって'被告人以外の者がこのメモリースティックの画像データをハードディスクにコピ−したり記憶させた場合、同人については「児童に姿態をとらせ、これを描写することにより」といった状況は観念できないから、法七条三項の罪は成立しないということになろう。その意味で、同罪は身分犯的な様相を呈するということになろう。)。?消極説によれば、法七条三項の罪に該当するのは、当初の作成行為だけということになろうが、未現像フィルムの作成やメモリースティックの作成は、それのみが企図されるということは考えにくく、通常、焼き付けられた写真やパーソナルコンピュータのハードディスクの作成、更にはフロッピーディスクやコンパクトディスクの作成までが企図されるのであり、にもかかわらず、当初の作成行為より後の作成行為は一切同罪の問題でないとするのは、非常識との感が強い。?それに、当初の作成行為に係る児童ポルノは、早晩消える運命にあり(いつまでも未現像フィルムのままで置かれることは考えにくく、また、メモリースティックも、容量が限られていることなどから、通常ほどなくしてその画像データをパーソナルコンピュータのハードディスクにコビーし「記憶させ」、'メモリースティックは上書きなりして使い回すものと思われる。)、通常押収されるのは後の作成行為に係る複写物と思われ、それは拡散の危険性のあるものであるのに、消極説によれば、犯罪行為によって生じた物とはいえないから、刑法一九条による没収もできないこととなり(法には特別の没収規定はない。)、問題がある.当初の作成行為については公訴を維持するだけの証拠が収集できないといった事態も考えられる。本決定は、法七条三項の児童ポルノ製造罪をめぐる解釈上の問題について、最高裁として明確な判断を示したもので、その意義には大きいものがあるものと思われる。