児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

カメラ→中間媒体→HDDという製造行為は単純一罪か包括一罪か?

 大阪高裁は、複製の時の「姿態とらせて」の問題を避けようと、包括一罪ではなく単純一罪にしてしまう動きですが、それは昔、奥村が主張して、大阪高裁で「独自の見解」と切り捨てられた屁理屈の一つです。
 控訴審判決が分かれているので、評価対象である「罪となるべき事実」を見ておきましょう。

3項製造罪の単純一罪とされた事例(大阪高裁H19.12.4)
平成年月日午後時分ころ,○市において,A16歳が18歳に満たない児童であることを知りながら,被告人所有に係る携帯電話機内蔵のカメラを使用して上記児童の2条3項3号所定の場面を撮影記録し,同撮影に係る画像を,被告人が使用するY社のメールアドレス宛に電子メールで送信し,上記画像データを被告人が登録したIDとパスワードにより独占的に使用することのできるいわゆるメ−ルボックスと呼ばれる東京都に設置されたY株式会社管理に係るメールサーバーコンピュータの記憶装置であるハードディスク内の被告人に割り当てられた領域に記憶,蔵置させ,もって,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ,これを視覚により認識することができる電磁的記録媒体に描写することにより,同児童に係る児童ポルノを製造した


これは最初の携帯電話が児童ポルノであることは間違いありませんよね。それはわざと看過する。

包括一罪と評価された事例(札幌高裁H19.9.4)
児童をして,同児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る姿態及び衣服の全部又は一部を着けない姿態であって性欲を興奮させ又は刺激する姿態をとらせ,これをそれぞれ携帯電話内蔵カメラで撮影した上,これらを電磁的記録に係るSDカードに描写してもって同児童らに係る児童ポルノをそれぞれ製造した。


この最初の携帯電話が児童ポルノであることは間違いありませんよね。これは看過しない。

包括一罪と評価された事例(名古屋高裁金沢支部H17.6.9)
児童との性交の場面をデジタルビデオカメラで撮影するとともにデジタルカメラで撮影することにより,児童を相手方とすろ性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるミニディスク及びメモリースティックを製造し,さらに,同日,前記被告人方において,上記メモリースティックに記憶させた画像データをパーソナルコンピューターのハードディスクに記憶させることにより,上記同様の児童ポルノであるハードディスクを製造したものである。

なお、名古屋高裁金沢支部H17.6.9の上告審も包括一罪説であって単純一罪説ではない。

最高裁H18.2.20
法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たると解すべきであるから,これと同旨の原判断は正当として是認できる。