高裁で判決書をもらって、移動中に検討しています。
被害児童
↓ 第一次製造
携帯電話本体
↓ 第二次製造(この段階では姿態をとらせていない)
SDカード
という、公訴事実。
札幌高裁は、姿態をとらせてを実行行為としながら、第二次製造を3項製造罪(姿態とらせて製造)としました。
コピーするときには、被写体は居ませんよね。「姿態とらせて」なんてありえない。
理由は、「包括一罪だから」っていうんです。
携帯電話を見なかったことにして、単純に、SDカードの製造罪ということにすれば、単純一罪でもいいんじゃないかと思うんですが、中間媒体の携帯電話も児童ポルノであるといってしまうと、そこで、第一次製造の3項製造罪(姿態とらせて製造)が既遂になるので、以後の行為は、不可罰的事後行為にせざるを得ないですよ。
この点、大阪高裁は、「姿態とらせて」は実行行為じゃないといいそうな雰囲気なんです。身分犯構成。
できたそばから3項製造罪(姿態とらせて製造)の実行行為はなにかで高裁が分かれるって、どうなってるんでしょうか?
例によって「弁護人独自の見解」と切り捨てられていますが、この点を理由らしきものを付けて判断したのは札幌高裁が初めてなので、どっちが独自の見解なのかわかりません。
札幌高裁h19.9.4
2製造罪の成立及び没収に関する主張について
論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造行為には,「携帯電話による撮影行為」と「携帯電話内蔵メモリからSDカードの複製」という2段階の製造行為があり,この携帯電話の内蔵メモリからSDカードの複製行為には,実行行為である姿態をとらせる行為が存在しないから,児童ポルノ法7条3項の構成要件を満たさないのに,原判決が電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)の児童ポルノ製造罪を認め,このSDカードを没収した原判決には,法令適用の誤りがある(控訴理由第3),というのである。
しかしながら,上記のとおり,本件のように,複数の製造行為が連なっていて,同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行った場合には,包括一罪となるのであって,「児童に姿態をとらせ,これを携帯電話内蔵カメラで撮影した上,電磁的記録に係る記録媒体1枚(SDカード)に描写し」たことが一体として児童ポルノ製造罪の実行行為となる。
したがって,「姿態をとらせ」る行為も存在し,児童ポルノ法7条3項の構成要件を満たすことは明らかであり,その姿態を描写したSDカードが児童ポルノであって犯罪組成物件となることも明らかである。
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所論は,・・・③本件の児童ポルノ製造罪と児童買春罪は観念的競合である,という。
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そして,③については,原判決も,各買春行為とこれに関連してなされた児童ポルノ製造罪とを観念的競合として処理している。
上記判断と同様の罪数処理をした原判決に誤りはなく,法令適用の誤りはない。
金沢支部はこう言ってたんじゃないですか?第二次製造の理由付けが違います。
罪数処理も違うし。
h17併合罪→h19観念的競合で、いつのまにか奥村説になってまんがな。
名古屋高裁金沢支部h17.6.9
5ハードディスクの製造は児童ポルノ製造罪に該当しないとの所論について(控訴理由第14)
所論は,被告人は,メモリースティックからハードディスクへ画像データをダビングしたものであるところ,ダビングの際には,「姿態をとらせ」の要件がないから,児童ポルノ製造罪には該当しないとする。しかし,そのように解した場合,カメラ等を使用して撮影した場合には,その画像が最初に保存される媒体(ネガ,メモリースティック等)のみが製造となり,そこから他に流通の危険性が高いと認められる媒体(写真,MO,CD−R,DVD−R等)やそれらを作成するため画像を長期間保存できる媒体(ハードディスク等)に画像をダビングする行為は製造罪には当たらないことになるが,それでは,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,流通の危険性を創出する点で非難に値するとして処罰規定を新設した法の趣旨が没却されるというべきである。したがって,被告人において,児童に「姿態をとらせ」て撮影したものを元にして,被告人自身が他の媒体へダビング等する行為は,法7条3項の製造に該当すると解すべきである。6罪数関係の誤りの所論について(控訴理由第8)
所論は,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるか,社会的に見て一個の行為であるから,牽連犯あるいは観念的競合となり一罪であるのに,原判決は,これを併合罪としてしており,罪数判断を誤っている,というのである。
しかし,児童買春の際に児童ポルノが製造されるのが通常であるとはいえないから,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるとも社会的に見て一個の行為であるともいえない。
名古屋高等裁判所金沢支部h14.3.28
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない