児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ:米が日本に罰則強化要求 「単純所持も犯罪」

 購入行為を野放しにするのはおかしな話で、奥村は、購入者共犯説を唱えたことがありますが、「買うのはたいした違法性がない」という判例が、福岡高裁那覇支部と大阪高裁にありますから、日本人の意識なんでしょうね。
 サイバー犯罪条約への対応としても単純所持罪は留保可能なので留保したところです。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070610k0000m010119000c.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070610-00000016-mai-pol
関係者によると、米政府高官が4月から5月にかけて、外務省幹部ら政府関係者や自民党の有力議員に面会した。この中で、米捜査当局がこれまでに摘発した児童ポルノ事件で、画像購入記録に数百人の日本人が含まれていることに言及。日本の現行法で単純所持を禁止していないことが、米国での児童ポルノ画像の生産にもつながっている事情を説明した。

 そのうえで、参院選後にも予定される同法の見直し論議で、米国同様に単純所持の禁止を実現するよう働きかけたという。米政府高官はさらに政府・与党に対し、プロバイダー(ネット接続業者)などがネット上の児童ポルノ画像を見つけた場合には、米国のように関係機関への通報を義務付けることも促した。

 米国内では、児童ポルノの被害者が3歳以下の幼児にまで及ぶなど問題が深刻化。米議会でも「児童ポルノは深刻な児童虐待」として対策強化を図る動きが出ている。

 米政府高官は毎日新聞の取材に「児童ポルノを売るのを違法としながら、買うのは合法とする日本の法律は大きな矛盾を抱えている。日本の法の抜け穴が児童ポルノの市場を温存させている」と述べた。

 米国政府高官にはこういう判決を知って欲しいものです。
↓↓

福岡高等裁判所那覇支部刑事部H17.3.1
所論は要するに,児童ポルノ販売罪は,買主との必要的共犯・対向犯であって,買主の買い受け行為の法益侵害,違法性は可罰的,当罰的であるにもかかわらず,売主のみを処罰するのは,法の下の平等憲法14条)に違反するから,児童買春法の児童ポルノ販売罪の規定は違憲,無効であり,同規定を適用して被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというにある。
しかし,買主の買い受け行為にも法益侵害,違法性があるとはいえるが,売主の販売行為の違法性,法益侵害性が強度の可罰性,当罰性を有するのと比較して,前者の法益侵害,違法性の可罰性,当罰性は微弱であるから,販売行為のみを処罰の対象とし,買い受け行為を処罰の対象としないことが憲法14条に定める法の下の平等に反しないことは明らかである。論旨は理由がない。

阪高裁H18.9.21
第4控訴趣意中,児童ポルノ提供罪に関する法令の解釈適用の誤りの主張について(控訴理由第4)
論旨は,児童ポルノ提供罪は買い主との必要的共犯又は対向犯であって,買い主の買受行為にも法益侵害があるにもかかわらず,提供者のみを処罰するのは法の下の平等憲法14条)に反するものであり,同罪にかかる規定は無効である,したがって,同規定を本件に適用した原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の解釈適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,児童ポルノを提供してこれを積極的に拡散した者と,これを購入したにすぎない者との間では,児童の権利の擁護という立法趣旨から見て,その当罰性に差があることは当然であり,児童ポルノの提供者のみを処罰する同罪の規定は合理的なものといえるから,これが法の下の平等憲法14条)に反するとは解されない。
この論旨も理由がない。