児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

少年法37条の削除について/植村立郎 判例タイムズ1197

植村立郎「司法改革期における少年法に関する若干の考察ー少年法37条の削除についてー」判例タイムズ1197
目次
第1 はじめに
1 今回の考察の概要
第2 少年法37条の削除について
1 本条の趣旨と設けられた経緯
2 本条に関する基本的な考察
3 本条の問題点と本条を廃止した場合のメリット
4 地方裁判所の変化
5 まとめ

第1 はじめに
1 今回の考察の概要
今回の考察の結論をまず述べると,刑事裁判官として日頃考え,感じていたところを踏まえると,司法の改革期である現在,少年法におけるかねてからの懸案事項の一つである少年法37条を廃止して少年法から削除するという方策を思い切って採用してはどうかということである。そして,その結論に関連する事柄を併せて検討するものである。筆者の限られた経験や個人的な問題意識に基づくささやかな考察に過ぎないが,今回の発表を通して,更に検討を深める契機が得られることを願っている。

5 まとめ
今回の検討の結論は,既に述べてきたとおりである。
本条を廃止して少年法から削除する場合には,少年法1条を始めとして裁判所法も含めた関連する条項の改廃も必要となろう。一つだけ付言すると,少年法38条は,本条に関連して,刑事訴訟法239条2項が定める公務員の一般的な告発義務の特別として設けられているものと解されている46)。
しかし,家庭裁判所調査官は,本条1項所定の罪に関する事件も含めて,前記刑事訴訟法に基づく告発義務を負っているから,本条を廃止する際に少年法38条を同時に廃止しても,実質的な支障は生じないと考えている。

 植村さんは東京高裁の裁判長。
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_hotei.nsf/CoverView/HP_K_Tokyo?OpenDocument&Start=1&Count=1000&ExpandView
掲示板設置行為を公然陳列罪の正犯行為にしてくれました。

 このところ悪質な児童ポルノ・児童買春やら児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)やらで、控訴する被告人が多くなっています。
 地裁でも家裁でも実刑になるくらい悪い奴なんですが、少年法37条があるせいで高裁は原判決を破棄して減刑しているという状況なんです。

 地裁事件と家裁事件が科刑上一罪である場合、看過もなにも、地裁からは(地裁事件の国選弁護人も)家裁事件が見えないし、家裁からは(家裁事件の国選弁護人も)地裁事件が見えないし、被告人は法律知らないし、というので、めったに発覚しません。
 控訴・上告しても、国選だと事件単位で選任されるので、気づきません。
 私選弁護人は気づきます。同じ調書を地裁事件と家裁事件で重ねて読まされるし、弁護人立証も二回やらされるから。「何かおかしい」って。

追記
 奥村弁護士が担当した大阪高裁H15.9.18も引用されています。

H15. 9.18 大阪高裁 平成15(う)1 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
(1) 不法に管轄を認めた違法の主張(控訴理由第20)について
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,「児童買春児童ポルノ禁止法)」という。)は,児童福祉法の特別法であり,児童買春児童ポルノ禁止法の罪は児童の福祉を害する行為であるから,少年法37条1項の適用を受け,家庭裁判所の専属管轄とされる事件であるのに,地方裁判所に起訴された本件各罪についてこれを看過してなされた原判決には不法に管轄を認めた違法がある,というものである。
しかしながら,少年法37条1項は限定列挙であり,また,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪を家庭裁判所の権限に属させるとする法律の規定も存しないから,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪についての第一審の管轄裁判所は地方裁判所又は簡易裁判所であることは明らかである(裁判所法31条の3第1項3号,2項,24条2号,33条1項2号)。
論旨は理由がない。

追記
 弁護士業界では、児童虐待に詳しい弁護士や子どもの権利委員会とかは大反対だと思います。
 刑事法制や刑事弁護は「併合の利益」を重視して賛成に回るでしょう。
 奥村弁護士としては、折衷案として、事物管轄としてはどっちでもいいことにして、移送制度を作って、併合可能な場合は併合できるようにして、運用として、家庭内の虐待を家裁で審理できるようにできないかと思います。
 大勢としては全部地裁に行ってしまうと予想しています。いまでも虐待死は傷害致死で地裁で審理してますから。何をいまさら。