児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13歳未満ポルノの所持禁止 奈良、初の県条例を検討

 譲受の禁止の方が先決であり、問題点が少ない。
 所持は譲渡・譲受・製造の証拠であるから、それらの行為を処罰することによって、製造から譲渡・譲受を封じれば、所持も事実上禁止と同等の効果を得ることができる。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005042800053&genre=C4&area=N10
一般人の所持禁止を規定する条例は全国初。表現の自由や個人のプライバシーとかかわる可能性もあり、議論を呼びそうだ。

 なお、福岡高裁那覇支部は、譲受の違法性は薄いと判示しています。所持の違法性はさらに薄いことになる。

福岡高等裁判所那覇支部刑事部
平成17年3月1日宣告
所論は要するに,児童ポルノ販売罪は,買主との必要的共犯・対向犯であって,買主の買い受け行為の法益侵害,違法性は可罰的,当罰的であるにもかかわらず,売主のみを処罰するのは,法の下の平等憲法14条)に違反するから,児童買春法の児童ポルノ販売罪の規定は違憲,無効であり,同規定を適用して被告人を有罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというにある。
しかし,買主の買い受け行為にも法益侵害,違法性があるとはいえるが,売主の販売行為の違法性,法益侵害性が強度の可罰性,当罰性を有するのと比較して,前者の法益侵害,違法性の可罰性,当罰性は微弱であるから,販売行為のみを処罰の対象とし,買い受け行為を処罰の対象としないことが憲法14条に定める法の下の平等に反しないことは明らかである。論旨は理由がない。

子どもポルノ」を「13才未満」で切るところは、いい線だと思います。承諾能力がない年齢だし、実務上、児童ポルノは6歳以上13〜14歳未満がほとんどですから。被害者の年齢層としては変わらない。

http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/050428.htm
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/kodomohigaiboushi.htm
子どもに対する犯罪を助長する行為の禁止等について 何人も、公共の場所又は施設において、保護者等が身近にいない子どもに対して、惑わし、言い掛かりをつける等の行為を行ってはならないこととします。
何人も、正当な理由なく子どもを使用したポルノ(以下「子どもポルノ」という。)を所持し、又は保管してはならないこととします。
1又は2に違反したと認められる者を発見した者は、警察官等へ通報するよう努めなければならないこととします。

罰則について 禁止行為を行った違反者に対しては、罰金等に処すこととします。
子どもポルノを所持又は保管している者が自首した場合には、刑を減免することとします。

児童ポルノについて自首による必要的減軽免除は奥村説なんですが、奈良県には賛同者がいるようです。なんで法律にしないのかと思います。


 しかし、児童ポルノを法禁物にしてしまうと、没収しないとね。犯人に還付しるのは間抜けですから。
 奈良にサーバーがあるプロバイダーとその善良なる利用者は不意な没収に要注意。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050427/1114570028



条例の場所的適用範囲の面からは、
児童ポルノデータについては実効性は薄いのではないか。
所持・保管という実行行為の一部が奈良県で行われれば条例が適用されるから
裏返せば何者かが他県から他県のサーバーにUPした児童ポルノ画像を
奈良県にいる者が、見たいときに閲覧し、見終わったら一時ファイルも削除するという形態で容易に潜脱出来る。
奈良にあるサーバーよりも他県にあるサーバーの方が圧倒的に多い。

憲法論では、
サイバー犯罪条約の単純所持禁止条項について日本は留保して批准する方針を明らかにしている。現時点では表現の自由やプライバシー侵害の見地から、単純所持は禁止しないというのが国レベルの姿勢。これは改正児童ポルノ法でも明らかにされている。
この点について奈良県条例で規制を上乗せできるのか、条例が法律に抵触しないのかも問題である。

奈良県内で問題意識がなければ、条例は可決される可能性が高い。