共犯の処罰根拠から考察されています。
立法者意思も考察されていますが、この法律の立法者はそこまで考えていません。
(2) 流通起点行為(供給側の行為)の処罰
そこで,試みに,児童ポルノの受領行為と同じく罰則が置かれていない,児童ポルノの単純所持に着目してみよう。現行法は,同じ所持であっても,提供目的の所持は可罰的(法7粂2項),単純所持は不可罰としている。両者の違いは,児童ポルノ流通の起点となる行為か否かにある。つまり,法は,所持について,流通の起点となる所持のみを,(広義の)刑法上許されない法益侵害(可罰的違法,不法)と評価していると解することができる。
このような視点から他の行為類型をみてみると,法が処罰の対象としている行為は,すべて流通の起点となる側の行為(供給側の行為。以下,「流通起点行為」という)であることがわかる29)。
これに対し,児童ポルノの単純所持や,同じく罰則が置かれていない児童ポルノ受領行為は,流通起点行為とはいえない行為である(提供目的受領行為については,流通起点行為に含まれると解することも不可能ではなかろうが,それは所持の前段階であり,それ自体を流通起点行為とみるには早すぎるように思われる)。以上のことからすると,法は,児童ポルノの規制にあたり,流通起点行為(供給側の行為)であるか否かに着目して,刑法上許されない法益侵害(可罰的違法,不法)の範囲lを画定したものと解することができるであろう。
(3) 流通起点行為か否かで区別した実質的理由(立法理由)
では,なぜ現行法は,処罰の対象を流通起点行為に限定したのであろうか。
そこには,多種多様の政策的判断(捜査の濫用・プライバシ一侵害の危険に対する考慮,捜査・訴追機関の過重負担の問題の考慮など)があると思われるが,
理論的に重要な根拠としては,以下の2つを挙げることができる。