児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ネット掲示板による名誉毀損罪の公訴時効の起算点(大阪高裁H16.4.22被告人上告)高等裁判所判例集57-2

 高裁の図書館で立ち読みしてきました。
 名誉毀損罪についても継続犯。
 着手時期については、東京高裁児童ポルノ掲示板事件と違うように読める。

そこで検討するのに,名誉毀損罪は抽象的危険犯であるところ,関係証拠によると,原判示のとおり,被告人は,平成13年7月5日,C及びBの名誉を毀損する記事(以下,「本件記事」という。)をサーバーコンピュータに記憶蔵置させ不特定のインターネット利用者らに閲覧可能な状態を設定したものであり,これによって,両名の名誉に対する侵害の抽象的危険が発生し、本件名誉穀損罪は既遂に達したというべきであるが、その後,本件記事は,少なくとも平成15年6月末ころまで,サーバーコンピュータから削除されることなく,利用者の閲覧可能な状態に置かれたままであったもので,被害発生の抽象的危険が維持されていたといえるから,このような類型の名誉毀損罪においては,既遂に達した後も,未だ犯罪は終了せず,継続していると解される。

追記
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/0/0B53DD3EFC1F011D49256F4A0017A318/?OpenDocument
に出ていました。
 なんだ、あの事件ですね。

交通事故遺族をインターネットの掲示板で中傷 被告に懲役1年4月−−大阪地裁判決 - 毎日新聞 2003年11月5日(水)
ネット中傷:交通事故で高校生死なせた被告、実刑確定 最高裁が上告棄却 - 毎日新聞 2004年8月11日(水)

一審判決が届きました。

大阪地裁H15.11.4
(罪となるべき事実)
被告人は(動機)(被害者BC),Kの開設に係るインターネット利用者向けのホームページ「」の掲示板を利用して上記BCの名誉を毀損しようと企て,平成13年7月5日午前零時10分ころ、××の自宅において,インターネットを利用して,東京都品川区所在のS社内に設置されたサーバーコンピュータに,「」,「」との記事を記憶・蔵置させ,同日ころから平成15年5.月15日ころまでの間,不特定多数のインターネット利用者らが上記サーバーコンピュータに記憶・蔵置された上記記事を受信してこれを開発することが可能な状態を設定し,よって.上記ホームページにアクセスしてきたTら不特定多数の者に対してこれを閲覧させ,もって,公然と事実を摘示し、上記BCの名誉を毀損したものである。
(法令の適用)
罰 粂  刑法230条1項(各被害者毎)
科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(犯情の重いBに対する名誉毀損罪の刑で処断)
刑種の選択 懲役刑
訴訟費用の負担

(弁護人の主張に対する判断)
(3)インターネットのホームページ上に一定の記載をしサーバーコンピュータに記憶・蔵置させると、その内容は、記憶・蔵置した時点においてのみ.他者に閲覧可能となるものではなく,その後も,不特定のインターネット利用者がそのホームページにアクセスするたびに,サーバーコンピュータに記憶・蔵置された情報がその利用者によって新たに認識されるという特徴を有するのであり,本件のようにインターネットを利用した事犯の場合,サーバーコンピュータに情報を記憶・蔵置させた時点において,その犯罪が終了したものということはできず,上記のような被告人の行動も考慮すると、被告人はサーバーコンピュータに上記記事を記憶・蔵置させた後も、新たな侵害行為が起こる状態を継続させていたものと言うべきであり・上取記事は少なくとも平成15年6月15日ころまでは記憶・蔵置されていたのであるから、同日まで犯罪は継続していたものということができる。したがって、告訴期間の起算点は,早くとも同日であるから,Cの告訴が法定期間経過後になされたものとは言えない。