児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

買春周旋児童福祉法淫行罪山形家裁H16.7.30

 同一日時で、同一児童を複数遊客に周旋した場合・同一児童を複数遊客と淫行させた場合は包括一罪なんですねえ。
 奥村弁護士の見解としては、加害者1名につき1罪にして、あとは罪数処理(観念的競合・併合罪)としときます。「包括」という評価に抵抗がある。

被告人を懲役1年6か月に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理        由
【犯罪事実】
第1 被告人は,A子 が満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成15年1月12日,新潟市所在「HOTEL」501号室において甲らに対し,同児童を児童買春の相手方として紹介し,そのころ,同所において,上記甲らからその対償としてそれぞれ現金1万円の供与を受け,同日,同所において,同児童をして上記甲らと性交させ,もって児童買春の周旋をするとともに満18歳に満たない児童に淫行をさせた。
第2 被告人は,B子が満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成15年7月19日,新潟県所在「ホテル」501号室において,乙らに対し,同児童を児童買春の相手方として紹介し,そのころ,同所において,上記乙らからその対償としてそれぞれ現金1万2000円の供与を受け,同日から翌20日までの間,同所において,同児童をして上記乙らと性交等をさせ,もって児童買春の周旋をするとともに満18歳に満たない児童に淫行をさせた。

罰 条(判示第1,第2の各所為について)
児童買春周旋の点(それぞれ包括一罪)
平成16年法律第106号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律5条1項(行為時)
同改正後の同法律5条1項(裁判時)
刑法6条,10条(刑の変更の場合にあたり,軽い行為時法による。)

児童に淫行させる行為の点(それぞれ包括一罪)
児童福祉法60条1項,34条1項6号
科刑上一罪(観念的競合)(判示第1,第2の各罪について)
刑法54条1項前段,10条(重い児童福祉法違反の刑による。)
刑種の選択(判示第1,第2の各罪について)
憩役刑
併合罪加重
刑法45条前段,47条本文,10条
(犯情の重い判示第2の罪の刑に法定加重)
刑の執行猶予
刑法25条1項
訴訟費用(不負担)
刑事訴訟法181条1項ただし書

【量刑の理由】
本件は,いずれも被告人が当時17歳の女子児童らについて,児童買春の周旋をし,児童に淫行をさせた事案である。
被告人は,いわゆるソフトSMに強い興味と関心を持ち,自ら「新潟妄想現実会」なるものを主宰して,インターネット上に同会のホームページを設置した上,現実にSM行為等の相手方になる女性をメールで勧誘し,ホームページで顧客の男性を募集し,男性からは会費・参加費を徴収し,女性には交通費等を支給するなどして,数回にわたり,ホテルの個室で「イベント」と称する催しを行い,参加者に性交等を含むSM行為をさせ,また,自らもこれを行っていたものであるが,本件においては,いずれも,相手方になる女性が18歳に満たない児童であることを十分認識しながら,かかるイベントにしつこく誘って参加させ,同時に複数の男性と性交等をさせるなどし,判示各犯行に及んだものである。
このように,被告人は,自らの趣味・噂好による快楽を満たすべく,いかがわしい催しを企画して,積極的かつ計画的に児童買春の周旋をし,児童に連行をさせたものであり,社会において児童の保護,健全育成に与すべき大人として.の自覚に欠けるばかりでなく,児童に対する性的搾取ないし淫行が児童の健全育成を阻害し,児童の権利を著しく侵害するという重大性を一顧だにしなかったものであって,本件各犯行は悪質であり,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。