原判決がH14.6.20、控訴申立はおそらくH14.7.4ころ。原判決が破棄されると、控訴申立後の未決勾留日数は全部法定通算されるから(刑訴法495条2項二)、主文の110日に加えて、さらに約4ヶ月の未決勾留日数が算入される(合計約230日)。従って、2年(730日)-230日=約500日が彼の実際の懲役刑期である。
ちなみに求刑は懲役4年(1460日)であったから、刑期は1/3と化している。
原審弁護人が驚くほど、これほど軽い刑になったのは、被害者の供述等、外国官憲が作成した書類が証拠として使えなかったから、被害感情が裁判官に触れなかったからであると推測する。
さらに、わずか30万円の寄附の上積み等で、230日も軽くなったのは、高裁が児童買春罪の虐待性について認識不足だったからだと思う。
警察・検察も学習したから、次からは、こうはうまく行かないだろう。
なお、警察公論2002.12 P53 島戸検事には原判決の解説が掲載され「今日まで身柄の拘束を受け,反省の機会を得ていること,本件被害児童らの所在がわからないため法律扶助協会に30万円の購罪寄付をしたこと,本件によ>り勤務先を解雇されるなど一定の制裁を受けていること,被告人には前科はないこと、被告人の母親が今後の監督を誓っていることなど被告人のため有利に斟酌すべき事情を考慮しても,被告人を執行猶予に付することは相当ではな」いとして,被告人Y を懲役2年6月という実刑に処したものである。本件の悪質性等にかんがみると実刑に処したことは正当というべきである。」と評されている。
刑事訴訟法第495条〔未決勾留日数の法定通算〕
①上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。