児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

中学3年の女子生徒をひもで縛って撮影したり、体をこすりつけたりという青少年条例違反の事例(愛知県警)

 「写真を撮り、体を触った」というのをわいせつな行為としてるんでしょうか。
 画像上、着衣の上からでも、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触っていれば2号ポルノの恐れもあります。

愛知県青少年保護育成条例の解説H21 
(いん行、わいせつ行為の禁止)
第14条
1 何人も、青少年に対して、いん行又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対して、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
追加〔昭和52年条例第8号〕
解説
1 本条は、青少年に対していん行又はわいせつ行為をし、又はそれらの行為を故意に教えたり、見せたりするなど直接的に青少年の福祉を阻害する背徳行為を禁止し、青少年の健全育成を図ろうとするものである。
3 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
具体的には
  陰部に対する弄、押し当て
  乳房に対する弄
  接吻
  裸にして写真を撮る
等、その部位態様はかなり狭く解する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130516-00000072-jij-soci
 県警によると、容疑者は昨年8月、名古屋市のホテルで、水着になった当時中学3年の女子生徒をひもで縛って撮影したり、体をこすりつけたりした疑いが持たれている。逮捕は14日。
 容疑者は現金を支払っていた。女子生徒はインターネット上で、同市の男(33)=児童福祉法違反罪などで起訴=から「制服や水着を着てモデルになってほしい」と勧誘され、山田容疑者を含む複数の男を紹介されたという。

http://www.sanspo.com/geino/news/20130516/tro13051611430001-n1.html
逮捕容疑は昨年夏、名古屋市のホテルで、当時15歳の女子中学生に現金を渡し、水着を着せてひもで縛った上、写真を撮り、体を触った疑い。
 県警によると、撮影したことは認めているが、意図的に触ったことは否認しているという。
 児童福祉法違反と児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で今月2日に起訴されたマッサージ店経営の男(33)=名古屋市=が、インターネットのサイトに「モデル募集」と書き込み、女子中学生を勧誘。「水着で撮影会ができる」とうたっており、容疑者が応募してきたという。
 県警は、男がこのサイトを使って複数の客を集め、女性を紹介していたとみて調べている。(共同)

http://news24.jp/nnn/news86213594.html
容疑者は去年8月ごろ、名古屋市に住む当時15歳の中学3年の女子生徒をホテルに連れ込み、水着に着替えさせた上、ひもで縛るなどして写真を撮った疑いがもたれている。愛知県警は14日に逮捕していて、調べに対し、容疑者は写真を撮ったことは認めているが、「わいせつな行為はしていない」という趣旨の供述をしているという。愛知県警は事件の経緯を慎重に調べている。
[ 5/16 12:29 中京テレビ]

追記6/4
 起訴猶予になりました。
 強制わいせつ罪の「わいせつ=いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為」を流用してしまうと、水着の青少年を縛って撮影するというのでは、普通人には性的羞恥心から外れるので、「わいせつ」言えなくなってしまいます。
 青少年の健全保護という趣旨からすれば、一般人基準で判断されるのはおかしな話で、もっと広げるという立法もありうるところですが、判例上は、強制わいせつ罪のわいせつよりも狭く解されています。

阪高裁平成23年6月28日
 しかし,わいせつな行為を処罰の対象とする本条例が憲法31条に違反しないものであることは,昭和60年最高裁判決の趣旨に徴して明らかである。すなわち,もともと,わいせつ行為とは,いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいうものであり,その内容が不明確であるとはいえない。また,本条例にいう「わいせつな行為」についても,あらゆる性的行為がこれに含まれるものと解すべきではない。本条例は,何人も,青少年に対し,みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない(本条例21条1項)と定めているが,ここにいう「わいせつな行為」についても,本条例が青少年の健全な育成を図り,これを阻害するおそれのある行為から青少年を保護することを目的とする(本条例1条)ことからみて,性的な行為のすべてを禁止する趣旨とは考えられない。この点は,昭和60年最高裁判決がいわゆる淫行条例(福岡県青少年保護育成条例)に定める淫行について加えたのと同様の限定を付して解釈されるべきである。そうすると,弁護人がいうような結婚を前提とする真摯な合意に基づくものであるような場合までこれに当たるとはいえない。以上のとおり,上記条項が犯罪構成要件として不明確であるとはいえず,憲法31条に違反するものでないことが明らかである。
・・・
阪高裁平成23年12月21日
(1)各事実に共通の主張論旨は,
(ア)本条例21条1項の「何人も,青少年に対し,みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」との規定は,13歳以上,特に婚姻適齢以上の青少年との間で,同人の自由意思に基づいて行うわいせつ行為について,婚姻を前提とした真摯な合意に基づく場合も含めて一律に規制するものであって,処罰の範囲が広範にすぎるし,「わいせつな行為」の範囲は不明確で,広く青少年に対するわいせつ行為一般を検挙,処罰するに至らせる危険を有するから,憲法31条に反している,(イ)最高裁判所昭和60年10月23日判決が,本条例21条1項と同様の処罰規定を設けていた条例の「みだらな性行為」との文言について,限定解釈を加えた上で適法と判断していることに照らすと,同条1項の「わいせつな行為」についても同様に限定解釈する必要があるのは明らかであるのに,原判決はこのような限定解釈をせずに漫然と同条1項を適用しており,違法である,として,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,(ア)の点については,最高裁昭和60年10月23日大法廷判決(刑集39巻6号13頁)は,福岡県青少年保護育成条例10条1項の規定にいう「淫行」とは,青少年を誘惑し,威迫し,欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当であり,同規定は憲法31条に違反しないと判示しているところ,その趣旨に照らすと,本条例21条1項にいう「みだらな性行為」はもちろん「わいせつな行為」についても,合理的な限定解釈をすることにより明確性が確保されるというべきであるから,本条例の同規定は憲法31条に違反しない。
イ)の点については,上記各事実の被害児童は,いずれも男児であり,当該各行為に至る経緯,行為態様等にも照らすと,被告人は,被害児童を単に自己の歪んだ性的欲望の対象として扱っているとしか認められない事案であり,原判決が上記各事実について「自己の性欲を満たすため」とそれぞれ摘示するのも,そのような趣旨に基づいたものと解されるから,原判決は,本条例21条1項の「みだらな性行為又はわいせつな行為」について,上記判例の趣旨等に鑑み,青少年の健全な育成の観点から問題性の認められないわいせつ行為を除外する限定解釈をしてその適用を行ったものと解されるのであって,本条項の適用が違憲,違法であるとはいえない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130604-00000070-jij-soci
仙台の教諭、起訴猶予=青少年保護条例違反事件―名古屋地検
時事通信 6月4日(火)11時52分配信
 水着姿の女子中学生を縛って撮影したなどとして、愛知県青少年保護育成条例違反(わいせつ行為)の疑いで逮捕された仙台市立小学校の男性教諭(48)について、名古屋地検が起訴猶予処分としたことが4日、分かった。処分は5月24日付。仙台市教委が明らかにした。
 市教委が教諭に事情を聞いたところ、「撮影はしたが体には触れていない」などと釈明したという。市教委教職員課は「基準に従って今後処分を検討する」としている。
 教諭は昨年8月に名古屋市のホテルで、水着になった当時中学3年の女子生徒をひもで縛って撮影するなどした疑いで、愛知県警に今年5月逮捕された。